要旨
●災害対策を中心とした2018 年度の補正予算が閣議決定された。追加歳出額は9,356 億円と熊本地震時の7,780 億円を上回る程度で、複数の災害対策が計上されている割にやや小さめの印象。財源は建設国債が中心だ。前年度純剰余金の消化は一部に留まり、国債費の減額分などは利用されなかったため、年末にかけて編成される第二次補正予算は追加国債発行なしで2兆円超程度の規模での編成が可能と見込まれる。実際の規模もこの程度に着地すると予想する。
災害対策が中心の補正予算に
15 日、2018 年度の補正予算が閣議決定された。今月下旬から開始される臨時国会に提出される。補正予算の追加歳出額は9,356 億円である。事前の筆者予想(Economic Trends「18 年度補正&19 年度当初予算はどうなるか~100 兆円を超えたとしても、新規発行国債は減額へ~(2018 年10 月4 日)http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2018/hoshi181004.pdf )では複数の災害対策が計上されることから、1.5 兆円程度の追加歳出を想定していたため、やや小さめの印象。2016 年度の熊本地震対応【7,780 億円】をやや上回る規模にとどまっている。
内容は、事前の想定通り今年相次いだ災害からの復旧・復興だ。額は7,275 億円が計上されている。最も大きい額が計上されているのは7月の西日本豪雨への対応【5,034 億円】だ。中小企業の金融面での支援や公共土木施設の災害復旧、学校施設等の災害復旧などが計上されている。加えて、9月の北海道胆振東部地震対応【1,188 億円】、台風21 号や大阪北部地震対応【1,053 億円】が計上されている。また、今年の酷暑を受けた学校のエアコン設置費用や大阪北部地震での事故を受けてのブロック塀対応が1,081 億円計上された。また、一連の災害対策で18 年度当初予算の予備費の消化が進んだことを受けて、今後の災害に備える形で予備費が1,000 億円追加計上されている。一連の災害復興関連の歳出は、18 年度後半のGDP・公的固定資本形成を押し上げることとなろう。
財源の中心は、事前想定通り建設国債【6,950 億円】が中心だ。その他、前年度剰余金が2,364 億円、税外収入が42 億円充当されている。
第二次補正は追加国債なしで2兆円強程度可能か
次の焦点は年末にかけて閣議決定の見込まれる第二次補正予算だ。国土強靭化を目指すための防災・減災対策が中心となると報じられている。10月4日に公表した筆者の事前予想では、2兆円前後の追加歳出を想定していたが、今回第一次補正予算が思いの外大きくならず、純剰余金の消化は一部、国債費の下振れ分なども充当されなかったため、第二次補正の財源には若干余裕が出来る形になる。2兆円を上回る規模での編成も追加国債なしで十分可能だろう(国債費の下振れが1兆円程度、税収の上振れが1兆円程度見込まれることに加え、補正に転用できる前年度純剰余金が0.2兆円程度残っている。詳細は先の注1のEconomic Trends参照)。実際の補正予算もこの範囲内で編成されると予想する。「追加国債発行は災害対策(一次補正)に限定する」という形で財政規律へ一定の配慮を示すだろう。
安倍首相は消費税率10%引き上げと、その対策として高額耐久消費財の購入支援策や中小小売事業者でのキャッシュレス決済に対するポイント還元、柔軟な価格転嫁を促すための「消費税還元セールの解禁(前回消費増税時(2014年4月)には、円滑な一斉転嫁を促すために還元セールは禁止されていた)」などが示された。2019年度の当初予算編成のカギはこれらの対策規模がどうなるかであるが、仮に規模が膨らんだとしても景気回復に伴う税収の好調や消費税率引き上げによる増収もあって、当初予算ベースでの新規国債発行額は18年度予算から減額される公算が大きい。この点は、先の筆者予想(脚注1のEconomic Trends)で指摘した通りである。(提供:第一生命経済研究所)
第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 副主任エコノミスト 星野 卓也