本日早朝に公表された米財務省の半期為替報告書では、中国に対して直近の人民元安を受けて相場動向を注視すると通告し、中国人民銀行による直接的な介入は限定的だが、中国が為替介入を開示しないことは「極めて遺憾」だと批判しました。ただ、中国の為替操作国認定は見送られたことでリスクオンの動きになっています。日本に対しても大幅な対日貿易赤字が続いていることを引き続き懸念していると指摘し、監視対象国指定は維持されたものの、「物品貿易協定(TAG)」交渉が来年の1月から開始という事前報道もあり、特段材料視はされませんでした。

ユーロについては、イタリア政府高官が「2019年予算が欧州委員会に拒否され、格付け会社が格下げする可能性がある」と述べたことでイタリアの格下げ懸念が意識され、ユーロドルが1.15ドルを下抜ける動きとなりました。実際に、欧州委員会が22日までに公表する予定のイタリアの2019年予算案に対する審査結果まではマーケットの懸念が払拭されることはないと考えられるため、ユーロの上値は引き続き重くなると考えられます。

前日の動きで印象的だったのが、トルコリラです。ポンペオ米国務長官が「対トルコ制裁の一部はトルコが前週に釈放した米国人牧師のアンドリュー・ブランソン氏に直接関連するものだった」と指摘し、「現在は歩を先に進める論拠がある。まだ最終的に決定はされていないが、近く何らかの決定がある」との見解を示しました。この発言を受けて制裁の一部が解除されるとの期待をマーケットが持ち、トルコリラ円は20円の大台を上抜け、20.20円台まで上値を拡大しました。トルコリラについては、目先の不安材料が一つ一つ解消されており、じりじりと反発する動きとなりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日の注目材料としては、やはりEU首脳会談の内容次第となりそうです。NY時間には記者会見も予定されていることから、ポンドの値動きはヘッドラインで一喜一憂する展開になるのではないでしょうか。EU当局者によると、英国を除く27か国の首脳は17日に開いたメイ首相抜きでの夕食会で、交渉に「十分な進展がない」と結論づけたと報道されています。メイ英首相は、ブレグジット交渉の行き詰まりを打開するため、離脱後の移行期間の延長を受け入れる用意があると説明したものの、11月の臨時首脳会議に関しても見送りの方向性が強まっていると報道されています。本日の記者会見にて、来年3月の「合意なき離脱」がより現実味を帯びてくるようであれば、否が応でもポンド売りのマーケットになるのではないでしょうか。焦点としては、メイ英首相がトゥスクEU大統領からブレグジットを進展させるための独自の「具体案」を求められて際に明確な回答を持ち合わせていなかったことが主要因としてあるため、この点をクリアできるかどうかがポイントになりそうです。

ドルについては、FOMC議事要旨にて「数人のメンバーが長期的な水準を上回るまで利上げが必要と判断」「経済活動の拡大が続けば追加利上げが適切になると予想」「漸進的な姿勢は速過ぎまたは遅過ぎるリスクを均衡させる」との見解が示されました。内容を素直に受け取るとまだまだ利上げが継続するものと読み取れるため、マーケットもドル買いを強めドル円では112円付近から112.70円付近まで上値を拡大しています。トランプ大統領がFRBの利上げ方針についてネガティブな発言を繰り返しているため、若干マーケットが嫌気していた部分もありましたが、多くのFRBメンバーが一段の利上げに賛同していたことが判明したこともあり、継続的に強いドルに再び回帰する可能性が高そうです。

本日のEU首脳会談前にはポジションスクエアにしておきたい

前日の動きとしてはリスクオンの動きではなくドル高の動きが主導したため、USD/CADの動きに引っ張られカナダドルについてはそれほど続伸しませんでした。半期為替報告書が公表され、いよいよEU首脳会談にスポットライトが当たってきます。内容次第で上下どちらに動いてもおかしくないイベントなので、一旦ポジションはスクエア、持ち値付近から20銭程度の利食い幅しかありませんが、86.50円で手仕舞です。本日については、テクニカルやレベル感は一旦忘れて、ポンドの動く方向に付いていくというシンプルなトレードが功を奏しそうです。

海外時間からの流れ

欧州時間からNY時間にかけて、「英政府はブレグジット移行期間の延長を要求していない」とBBCが報じるとブレグジット交渉が難航するとの懸念からポンドドルが下落し、1.3170ドルを下抜ける動きとなりました。また、17時30分に発表された英国の経済指標が軒並み悪化したこともさらなるポンド売りに繋がりました。その後もブレグジット問題に進展が見られないことから、ポンドドルはじりじりと上値を切り下げ、1.31ドルを下抜ける動きになっています。ユーロドルについては、ポンドに連れ安となるなか、予算案拒否と格下げの可能性が言及され、イタリア国債が売られると共にユーロドルも下落し、1.15ドルを下抜ける動きになっています。

今日の予定

本日は、英・9月小売売上高指数、米・10月フィラデルフィア連銀景況指数、米・新規失業保険申請件数(前週分)などの経済指標が予定されています。また、本日のEU首脳会談の記者会見は非常に注目度の高いイベントになっています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。