前日に関しては、注目されていたEU首脳会談の記者会見にて懸案のアイルランド国境を巡る溝が埋まらず、離脱条件などの合意に至らなかったことに加え、最後の砦になると考えられていた11月の臨時首脳会議の開催も白紙となり、「合意なき離脱」の可能性が高まりポンドは売られました。また、英産業界は懸念や失望を表明し、英産業連盟(CBI)は「英企業の忍耐は限界に近づいている」との声明を出したことにより、ポンドの先行き不透明感はさらに高まったと考えられます。

ユーロについては、欧州委員会はイタリアに対して書簡で「イタリア予算案の逸脱は前例にない」との見解を示しました。イタリアの2019年予算案が欧州連合(EU)の財政規律に深刻に違反していると警告したことで、欧州委員会が22日までに公表する予定のイタリアの2019年予算案が拒絶され、イタリア国債が格下げされる可能性が高まっていることもユーロの上値が抑えられれる要因になっています。

上記とは別に、ムニューシン米財務長官がリヤドで開催される「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ」への不参加を表明したことで、ムハンマド・サウジアラビア皇太子との関係を含め、地政学的リスクが高まったことが意識されています。この報道を受けNYダウは470ドル超下落しました。ポンド、ユーロの問題に加え、ここに地政学的リスクが高まったことで目先はリスク回避の動きが主導する展開になりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

バルニエ・EU首席交渉官は、ブレグジットの交渉最終合意期限は12月とEU加盟各国に通達しており、12月13-14日のEU首脳会合で最終合意に到達しなければ「合意なき離脱」の可能性が著しく高まることになります。その場合は、2019年3月29日を最後に英国がEUから去ることになります。メイ英首相が来月のEU臨時首脳会談に含みを持たせていた反面、EU各国は合意が確信できるほど交渉が進展している場合に限って開催されると条件を付けていましたが、この条件を満たすことは結局できませんでした。

アイルランド国境問題については、1年半進展がないことから、ここからブレグジット問題が大きく前進することは考えづらく、ポンドについてはヘッドライン次第では反発する場面もありそうですが、最終的にはポンド売りに傾く地合いになるのではないでしょうか。2019年3月29日の離脱期限自体を延長することは可能性としては考えられますが、EU28ヶ国全員の賛成が必要となるため、現実的ではありません。やはり、ポンドについては「合意なき離脱」をゴールとした迷路に迷い込んだ可能性が高そうです。

クロス円の戻り売りにも妙味あり、特にユーロ円が面白そうだ

ファンダメンタル中心に、前日はリスク回避の円買いの動きが強まりましたが、前日から本日にかけて特段株価下落を招いた材料が好転したものはなく、売られすぎの影響で反発はしているものの、戻りがある場面では絶好の戻り売りポイントとして考えられそうです。その中で最も焦点が当てられそうなのはユーロ、ポンドについては先行きは不透明感だらけですが、一旦悪材料を出したこともあり、目先最も不安視されているのがイタリアの予算問題のあるユーロです。129.20円を下抜けて下落基調が強まったこともあり、129.70円上抜けを撤退目途に、129.20円付近での戻り売り戦略。利食いについては、前日の安値の128.30円付近を視野に入れたいと思います。

海外時間からの流れ

米・10月フィラデルフィア連銀景況指数が市場予想20.0に対して22.2、米・新規失業保険申請件数(前週分)が市場予想21.2万件に対して21.0万件と総じて堅調な数字を弾き出したものの、モスコビシ欧州委員がイタリアのトリア財務相に手渡した書簡で、「EUルールから著しく逸脱した予算案についての説明を月曜日までに回答するよう求めた」と報じられると、ユーロ主導でリスク回避の動きが強まりました。EU首脳会議においては、ブレグジット交渉に進展が見られず11月の臨時首脳会議も開催中止になったことで、「合意なき離脱」が現実味を帯びてきており、株価の下落によりリスク回避の円買いが強まる動きとなりました。本日は日経平均株価が安値圏から反発していることもあり、東京時間ではリスク回避の巻き戻しの動きとなっていますが、戻りがあったところではショートポジションが作られる展開になりそうです。

今日の予定

本日は、加・9月消費者物価指数、加・8月小売売上高、米・9月中古住宅販売件数などの経済指標が予定されています。また、要人発言としてはカプラン・ダラス連銀総裁、カーニー・英中銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。