前週末に関しては、これまでの懸念材料であったユーロ、ポンドのヘッドラインが意識され、買い戻し中心のマーケットになりました。まずユーロですが、ユーロドルが1.14ドル半ばで推移するなか、モスコビシ欧州委員が「イタリア来年度予算を巡る対立を緩和したい」との見解を示すと一時4年8カ月ぶりの水準まで上昇していたイタリアの長期金利が急速に低下し、ユーロの買い戻しが強まりました。また、一部報道では「イタリア政府は2019年の財政赤字目標をGDP比2.4%から2.1%に変更することを検討している」とのヘッドラインが流れたことも、ユーロの買い戻しをサポートしたものと考えらえられます。既にマーケットが織り込んでいた可能性はありますが、米格付け会社ムーディーズがイタリアの格付けを「Baa2」から「Baa3」に引き下げましたが、マーケットのへの影響は限定的となりました。
ポンドについては、EU首脳会談を経て「合意なき離脱」が現実味を帯びてきており、上値の重さが意識されていましたが、ここにきて「メイ英首相は最大の懸案となっているアイルランド国境問題で主要な要求の1つを取り下げる用意がある」と報道されています。アイルランド国境問題に前進があれば、EU各国が再びブレグジットについては議論するテーブルに戻る可能性もあることから、全般ポンド買いが強まりました。ただ、今回の提案についてはEU側からは歓迎されますが、英国内、特に政権内からは反対意見が出ることが想定されており、明確なポンドの買い戻し材料には程遠いですが、ポンド売り一辺倒の動きからは脱する可能性が高そうです。
今後の見通し
ユーロについては、イタリアが格付け会社からジャンク(投資不適格)評価されるのではないかとの懸念がありましたが、最悪のシナリオはとりあえず回避したとの見方からユーロの買い戻しが一時的には強まるかもしれません。ただ、明確に問題が解決しているわけではないため、現状の睨み合いが続くようであれば、欧州委員会は正式なプロセスである過剰財政赤字手続き(EDP)に則って、イタリア政府と対峙していくことになります。明確な方向性が出てこない以上は、ユーロの戻り場面では売りが入りやすい状況になるため、基本的にはユーロは戻り売り戦略が機能しそうです。
ドルについては、NYダウが底堅い動きに回帰したため、再びドルのじり高相場になってきています。ただ、ムニューシン米財務長官がリヤドで開催される「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ」への不参加を表明したことで、サウジアラビアの反体制ジャーナリストが行方不明になった事件が米国とサウジアラビアの外交摩擦を長引かせるのではないかとの見方が強まっています。米国がサウジアラビア制裁の可能性を示唆する一方、サウジアラビアは原油供給を減少させる対抗策を示唆しており、最悪のシナリオとしては原油価格急騰を招き、米国だけでなく世界中のマーケットがリスクオフに傾く可能性があります。こちらもヘッドライン相場が中心となるため、マーケットの一喜一憂を見逃さないようにしたいところです。
ユーロ円129.70円のテクニカルポイントが今のところは機能している
ユーロ円のショート戦略は、本当にぎりぎりのところで損切りが回避されました。129.70円のラインは前回の高値付近ということもあり、テクニカル的には意識されている水準です。このラインを明確に上抜けると目先の相場転換となるため、このまま様子見とします。ポジションはユーロ円129.20円ショート、利食い目途は128.30円付近です。
海外時間からの流れ
前週末の海外時間では、上述したようにユーロとポンドの買い戻し主体のマーケットになりました。ただ、ドル円については前週末の高値112.65-70円付近のラインでは上値が重くなっており、このラインを上抜けるにはドルを押し上げる材料が必要になってきそうです。一部では、次回の米中首脳会談は11月29日のG20サミットで行うことに合意したと報じられており、目新しいニュースに乏しいこともドル円のマーケットを膠着させている要因だと考えられます。
今日の予定
本日は、主要な経済指標が予定されていません。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。