「サザエさん通り」で考える
かつて通った郷里福岡市の高校の隣に「サザエさん通り」という通りがある。昔は「学館通り」と呼んでいたと記憶しているのだが、平成24 年にこの名がついた。「サザエさん通り」といえば以前筆者が住んでいた世田谷区桜新町だけだとばかり思っていたので、帰省した際に発見して驚いた。「サザエさん」原作者の長谷川町子さんは幼少時と戦中・戦後を福岡で過ごした。昭和21 年当時、今の福岡市早良区に住んでいた長谷川さんは、この道を通って自宅から程近い埋立て前の百道海岸をよく散歩し、そこでサザエ、カツオ、ワカメといった登場人物をみんな“海のもの”にしようと着想したという。
1946 年(昭和21 年)に福岡の地方紙の夕刊4コマ漫画として登場した「サザエさん」は大阪万博の前年である1969 年(昭和44 年)にはテレビアニメデビューする。日曜日夕方定番のあの番組である。このときの年齢設定が波平54 歳、フネ52 歳、サザエ24 歳、カツオ11 歳、ワカメ9歳、タラちゃん3歳。この頃の平均寿命は男性69 歳で女性が74 歳であり、世の中は55 歳定年制だった。何故一家をこんな年齢設定にしたのかは不思議だが、とにかく波平は翌大阪万博の年に定年。この時カツオ12 歳でワカメ10 歳である。この頃は年金支給開始年齢が50 代後半だったと言ってもこの家族構成では楽隠居という訳には行かなかっただろう。53 歳のフネも内職しただろうし、サザエも専業主婦という訳にもいかなくなったかもしれない。あるいは家制度の名残のあった時代のこと、一家の家計がマスオの肩にずっしりとのしかかったかもしれない。
時は過ぎ2018 年の今、アニメの世界のキャラクターの年齢は変わらないが、生身の人間ならば現在カツオは60 歳。特別支給の厚生年金は63 歳から開始なので、少なくともそこまでは定年延長または再雇用で働き、ワカメも58 歳。勤めていれば特別支給厚生年金受給開始年齢の62 歳までは現役でバリバリ働くだろう。タラちゃんは51 歳。もしタラちゃんが晩婚で40 歳(このとき西暦2007 年)以降に子供が生まれていたとすると、波平おじいちゃんと同じように60 歳の時にも子供はまだ学生だ。公的年金は完全に65 歳からしか受け取れないので、まだまだ働くだろうが、同じ仕事で働くかキャリアアップして新たな仕事を開始するかを考える年齢になっている。(現在51 歳男性の平均余命は約32 年<H28 簡易生命表>)
ロンドン・ビジネススクール教授リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットの書いた「LIFE SHIFT 100 年時代の人生戦略」という本が話題だ。この本によると、2007 年に日本で生まれた子供の半数は戦争や天変地異のない限り107 歳より長く生きる(?)という。今から90 年後は100 歳が珍しくも何ともない世の中がやって来る。健康寿命も延び、AIでは出来ない仕事を中心に100 歳でもバリバリ働いている人が沢山いて世の中の景色は今とはガラっと違っているかも知れない。(人手不足で定年制も無くなっているかも知れない。)90 年後とは随分先の話のようにも思えるが、今年91 歳になる母は、90 年前なんてついこの間の事のようだと言う。タラちゃんの子供はどういう人生を歩むのか。これからは環境の変化を捉えつつ、生涯現役を前提として自分の価値観にあったライフデザインを描いていくことが益々重要になってくる。(提供:第一生命経済研究所)
(セミナー推進室 白水 朝日)
ライフデザインプログラム「洋洋人生のススメ」
1991 年スタートから、生活設計ノウハウと最新の研究調査結果を生かした信頼のセミナータイム・マネー・ヘルスデザインをもとに、企業ニーズも取り入れた充実のカリキュラム
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