これからの消費スタイル・家族のかたち・働き方・心身の健康・人生設計を考える
「ライフデザイン白書2018」を出版
第一生命ホールディングス株式会社(社長 稲垣 精二)のシンクタンク、株式会社 第一生命経済研究所(社長 丸野 孝一) では、このほど「ライフデザイン白書2018」の新刊となる「『人生100年時代 』のライフデザイン-団塊ジュニア世代から読み解く日本の未来-ライフデザン白書2018」を執筆しました。本書の概要をご紹介いたします。
当研究所ホームペジにも本リリースを掲載しています。 URL http://group.dai-ichi-life.co.jp/cgi-bin/dlri/ldi/total.cgi?key1=n_year
目次
・本書について ・「ライフデザン白書2018」調査について Ⅰ章 団塊ジュニア世代からみる消費 執筆者:宮木由貴子 Ⅱ章 団塊ジュニア世代からみる家族 執筆者:的場 康子 Ⅲ章 団塊ジュニア世代からみる就労 執筆者:的場 康子 Ⅳ章 団塊ジュニア世代からみる健康 執筆者:水野 映子 Ⅴ章 団塊ジュニア世代からる人生設計 執筆者:北村安樹子 ・「人生 100 年時代」のライフデザンに 向けて ・データ 集
本書について
団塊ジュニア世代は、団塊世代に次ぐ人口規模の世代であり、常に同年代との競争にさらされながら、モノを持つことを豊かさとする時代からバブル崩壊後の長い不況下を過ごしてきました。就職する頃にバブル崩壊を体験したこともあり、「何かと損をすることが多い(多かった)」との意識が強いのが特徴です(図表1)。
現在、40 代前半期にある団塊ジュニア世代は、「人生100 年時代」ともいわれる社会に向け、「残り半分以上」の人生をどう生きるか、生きられるのかという課題に直面しています。今日の団塊ジュニア世代は、結婚しない人生や子どものいない人生を歩む人が増えた一方で、晩婚・晩産化の影響で子育てに追われる人も少なくありません。
年功序列や終身雇用、定年制が緩やかに過去のものとなる中で、これから老後を考える団塊ジュニア世代はどのような働き方を望んでいるのでしょうか。また、親世代ともいえる団塊世代の介護問題も始まりつつあり、さらには自らの心身に不調を来たしやすい年齢にもさしかかっています。そのような時期にある団塊ジュニア世代は、親の介護や自身の健康に関してどのような状況にあり、どのような意識を持っているのでしょうか。
「人生100 年」のほぼ真ん中に位置する、人口規模の大きい団塊ジュニア世代は、その上下の世代両方の特徴を合わせ持ち、価値観や行動の大きく異なる上下世代についてある程度のリアリティをもって理解できる、いわば両者をつなぐ世代であるといえます。そこで本書では、団塊ジュニア世代の意識と行動に着目することにより、「人生100 年時代」のライフデザインのヒントを得ようと試みました。
団塊ジュニア世代にはいくつかの定義がありますが、本書では1971 年~1974 年の第2次ベビーブーム期に生まれた世代を「団塊ジュニア世代」とし、他の世代については図表2のとおり区分しました。なお、一般的に「ゆとり世代」は「ミレニアル世代」「さとり世代」などともいわれ、名称は明確に定まっていませんが、本書においてはわかりやすさを考慮した上で、便宜上「ゆとり世代」として定義しています。
「ライフデザイン白書2018」調査について
第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部は、その前身であるライフデザイン研究所の時代から、生活に関連した調査研究を行い、各種レポートや書籍、講演などを通じて情報発信・提言を行ってきました。その一環として、生活者の意識や行動の現状と変化をとらえるため、人々の生活実態と意識を一部時系列で把握できるよう独自に設計した大規模な生活定点調査を1995 年、97 年、99 年、2001 年、03年、05 年、10 年、15 年、17 年と計9回実施してきました。その結果は、書籍『ライフデザイン白書』として毎回発行しています。
今回の第9回調査の概要、回答者の主な属性は以下のとおりです。
Ⅰ章 団塊ジュニア世代からみる消費
執筆者:宮木由貴子
同世代が多く、何かにつけて激しい競争を経験し、「損した世代」との自意識も高い団塊ジュニア世代。この世代は、団塊世代を親に持ち、社会人になるかならないかというときにバブル景気がはじけ、多くのライフイベントを経験する20 代・30 代は長い不況下にありました。
そんな中で団塊ジュニア世代は、「ケチ」を「エコ」に、「買えない」を「買わない」に、「勝ち」を「価値」に転換しながら、時代を切り開いてきた世代といってよいでしょう。
Ⅰ章 目次
1 「持つこと=豊かさ」の価値観否定のフロンティア 1-1 「持たないこと」を志向する団塊ジュニア世代 1-2 捨てることへの低い抵抗感 1-3 「シェア」という手に入れ方 1-4 中古品購入は「ケチ」ではなく「エコ」?
2 バブル世代までの価値観につきつけた“NO” 2-1 節約を楽しめる団塊ジュニア世代 2-2 自分の世界・個性は重視せず体面重視 2-3 「買えない」のではなく「買わない」
3 「当たり前消費」につきつけた“WHY?” 3-1 持ち家取得は人生の目標とせず 3-2 ローンやクレジット利用に抵抗感
4 団塊ジュニア世代の動向からみえる今後の消費 4-1 新旧の価値観を併せ持つ団塊ジュニア世代 4-2 団塊ジュニア世代は消費スタイル転換のキー世代 4-3 「勝ち」から「価値」へ
Ⅰ章 主な図表
必要最小限のモノだけですっきりと暮らしている
昨今、片付けや捨て方への関心が高まり、「断捨離」や「ミニマリスト」など、モノに執着せず必要なものだけを所有する生活スタイルが注目されています。「必要最小限のものですっきりと暮らしている」とする人についてみると、年代が高くなるにつれて多くなる傾向がありました。年を重ねるにしたがって身辺のモノが整理されていく様子がうかがえる中、男女ともに団塊ジュニア世代でその上下世代より多いことがわかりました。
節約やムダを省く行動を楽しむことができる
団塊ジュニア世代はその上下世代に比べて、「節約やムダを省く行動を楽しむことができる」とする割合が高くなっています。この傾向は、全体的に男性より女性で強く、女性では年代が上がるにつれて割合が高くなる傾向にあるものの、女性のバブル世代で谷を形成しているのが特徴です。一方で、男性では若い世代と団塊世代で割合が高く、やはりバブル世代で低い傾向があります。バブル世代は節約やムダを省く行動を楽しめない人が相対的に多いようです。
Ⅱ章 団塊ジュニア世代からみる家族
執筆者:的場康子
団塊ジュニア世代は、同世代の人口が多いことから、常に厳しい受験競争を経験してきました。こうした経験や意識は、彼らの子育てにどのような影響を及ぼしているのでしょうか。「人生100年時代」に向け、このまま学歴社会が続くのでしょうか。団塊ジュニア世代の動向が、ひとつの鍵を握ると思われます。
Ⅱ章 目次
1 変わるパートナーシップ -対等な夫婦関係へ 1-1 未婚か晩産か 1-2 家計も家事も支え合う夫婦 1-3 両立支援策をけん引した世代
2 厳しい受験戦争の果てに 2-1 学歴社会を支えた世代 2-2 子どもの進路に迷い、親に精神的援助を求める世代
3 団塊ジュニア世代の動向からみえる今後の家族 3-1 「卒婚」に向けての準備 3-2 脱学歴社会に向け、子どもの進路を考える
Ⅱ章 主な図表
自分は学業面において厳しい競争を体験してきた
「自分は学業面において厳しい競争を体験してきた」と思っている人の割合は、団塊ジュニア世代では35.9%であり、その親の世代である団塊世代(45.0%)に次いで高いです。次に回答割合が高い世代は、団塊ジュニア世代の子どもも含まれている広義ゆとり世代です。親世代から子世代へ、厳しい競争体験が引き継がれているのではないでしょうか。
子どもの進路について、自分または配偶者の親(子どもにとっての祖父母)に相談することがある
「子どもの進路について、自分または配偶者の親(子どもにとっての祖父母)に相談することがある」人は、団塊ジュニア世代は28.5%であり他の世代に比べて最も多いです。特に団塊ジュニア世代の女性の回答割合が35.1%と高いです。団塊ジュニア世代の多くが中学生以下の子どもがおり、受験などの進路について悩んでいる人も多いようです。こうした中、女性にとっては特に、子どもの進路について相談する相手として、自分や配偶者の親が身近な存在であるようです。
Ⅲ章 団塊ジュニア世代からみる就労
執筆者:的場康子
団塊ジュニア世代は、1990 年代初頭にバブル経済が崩壊し、日本経済が長期的な不況に陥った当時、就職氷河期を経験した世代です。こうした社会状況に直面したからこそ、従来の雇用システムである年功序列や終身雇用、定年制などに頼らず、自分自身のセーフティネットを構築し、自分なりの働き方を開拓しながら、多様な働き方を促進させると考えられます。
Ⅲ章 目次
1 厳しい就労競争の果てに -働き方の多様化を促進させた世代 1-1 親世代のようには働きたくない? 1-2 多様な働き方を志向する世代
2 65歳を過ぎても働きたい 2-1 定年をどこで迎えるか 2-2 高齢期も収入を伴う仕事を 2-3 生活費を稼ぎ家計を維持
3 団塊ジュニア世代の動向からみえる今後の働き方 3-1 働き方のデザインを自分で構築する世代 3-2 生涯現役社会に向けての準備を
Ⅲ章 主な図表
自分は就労面において厳しい競争を体験してきた
「自分は就労面において厳しい競争を体験してきた」の回答割合は、団塊ジュニア世代の男性は38.7%であり団塊世代(41.4%)に次いで高く、女性は35.3%であり他の世代に比べ最も高いです。団塊ジュニア世代は男女共に親世代と同じく厳しい競争体験をしたと感じています。特に女性も多くが大学を卒業して働くようになりましたが、バブル崩壊による不況の厳しさを実感したのは女性の方が多いようです。
現在の勤務先で定年まで働こうと思っているか
「現在の勤務先で定年まで働こうと思っているか」をたずねたところ、団塊ジュニア世代の男性は49.2%、女性は27.2%が「定年まで勤務するつもりで、実際にできると思う」と回答しています。その割合は、男女共に年代が若くなるにつれて低くなっています。団塊ジュニア世代から下の世代の多くは、自らの職業生活をどのようにデザインするか、模索しながら働き続けなければならないことを認識しているようです。
Ⅳ章 団塊ジュニア世代からみる健康
執筆者:水野映子
長い人生を生き抜く上で、今まで以上に重要になるのが「健康」です。また、団塊ジュニア世代の親世代にあたる団塊世代に介護が本格的に必要になる「団塊介護時代」も目前に迫っています。
そうした中、団塊ジュニア世代をはじめとする人々は自身の健康や家族の介護に関してどのような意識を持ち、どのように行動しているのでしょうか。それを知ることは「人生100 年時代」を読み解く上でのヒントとなるでしょう。
Ⅳ章 目次
1 健康に対する意識と行動 1-1 体の健康が気になる団塊ジュニア世代 1-2 健康づくりのための行動は伴わず 1-3 妻は夫の健康を気遣わなくなる?
2 メンタルヘルスの危機 2-1 家庭・職場での負担とゆとりのなさ 2-2 現実に追われ楽しみが少ない 2-3 体の健康ほど心の健康は気にせず
3 「団塊介護時代」を前に 3-1 迫り来る親の介護への不安 3-2 親を介護する先輩世代の背中を見ながら 3-3 介護の担い手は子ども以外を希望
4 団塊ジュニアから始まる健康観の転換 4-1 「人生100年時代」の健康づくり 4-2 「体」と「心」の健康関連市場の可能性 4-3 求められる発想の転換 -「健康至上主義」からの脱却
Ⅳ章 主な図表
自分の体の健康が気になること
「自分の体の健康が気になること」があると答えた割合は、男女とも団塊ジュニア世代が全世代の中で最も高くなっています。特に団塊ジュニア世代の女性では74.3%と、およそ4人に3人が気になることがあると答えています。自分の体の健康が気になっている団塊ジュニア世代は非常に多いといえます。
親の老後の介護問題に対する不安
「親の老後の介護問題」に不安を感じる人の割合は、団塊ジュニア世代の男性では79.9%、女性では87.9%にものぼり、全世代の中で最も高くなっています。団塊ジュニア世代は、自分の健康だけでなく親の健康に対しても、大きな不安を抱えていることがわかります。
Ⅴ章 団塊ジュニア世代からみる人生設計
執筆者:北村安樹子
1990 年代以降、若年期のライフコースと働き方は多様化し、若者の非婚・晩婚・晩産化が進んでいった――これが、団塊ジュニア世代が歩んできた道のりでした。そして、彼らを含む現役世代は、「現役」から「老後」への移行を人生設計においてどう位置づけるのかという難題に直面しています。「人生100 年時代」を前に、彼らは人生設計についてどう考え、未来に向けてどう動き出そうとしているのでしょうか。
Ⅴ章 目次
1 現役世代が直面する2つの環境変化 1-1 若年期のライフコースと働き方の多様化 1-2 「老後」への移行の揺らぎ -「人生100年時代」へ 1-3 団塊ジュニア世代の評価と未来
2 団塊ジュニア世代からみた社会の変化 2-1 幻想のワークライフバランス 2-2 会社・仕事を「頼りにできた時代」が終わる 2-3 働き続け、自分で備える「生涯現役社会」が来る
3 揺らぐ人生設計 3-1 学卒時の団塊ジュニア世代―バブル世代よりは将来を考えていた 3-2 現実との折り合い -「人生設計」の何を見直したのか 3-3 向き合っている現実 -何を見直そうとしているのか
4 動き出す団塊ジュニア世代 4-1 人生後半期に向き合う団塊ジュニア世代 4-2 「人生設計」に効果はあるか 4-3 動き出す団塊ジュニア世代―「守り」と「攻め」の未来戦略 4-4 団塊ジュニア世代から始まる「人生100年時代」の人生設計
Ⅴ章 主な図表
以前に比べて、老後の生活資金に関して、公的年金を前提とする人生設計を描けなくなった
「以前に比べて、老後の生活資金に関して、公的年金を前提とする人生設計を描けなくなった」と感じている人は、団塊ジュニア世代の女性で86.1%、男性で77.4%を占めます。団塊ジュニア世代も含めて、寿命の長い女性の方が、こうした環境の変化をよりシビアに捉えていると考えられます。
現在の人生設計の実施状況
人生設計の実施状況については、「現在考えているところである」と答えた人が最も多くなっています。一方で、団塊ジュニア世代の特徴は、男性で32.9%、女性で38.8%を占める「気にはしているが、あまり考えていない」と答えた人の多さです。この割合が上下世代を上回っています。
「人生100年時代」のライフデザインに向けて
団塊ジュニア世代が社会に出る前の時代には、既存のライフコースに従うことが、安心で安定した生活につながると考えられていました。しかし、社会の変化のスピードが極めて速くなり、「人生100 年時代」が到来するといわれるほど寿命も長くなった今、これまでの「前提」や「常識」、「当たり前」は揺らぎ、先行きは不透明となりました。その結果、個々人が主体的かつ能動的に人生設計を立てる必要性は、より高まっています。
ライフデザインとは、単に将来の不安を意識し、それを軽減するために考えるものではありません。また、かたくなにひとつの目標に向かって行動するためのものでもありません。重要なのは、これまでを振り返り、「自分がどう生きたいか」を模索し、これからの行動を決定するというプロセスです。すなわち、ライフデザインとは、世の中の変化に応じて柔軟に見直され、変化し続けるものなのです。
本書では団塊ジュニア世代を切り口に、消費・家族・就労・健康・人生設計について分析することで、これからのライフデザインのヒントを探っています。手にとっていただき、皆様のライフデザインに役立てば幸いです。
データ集
*データ集として、巻末には以下のデータを掲載しています
(提供:第一生命経済研究所) 株式会社 第一生命経済研究所
㈱第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部 研究開発室 広報担当(津田・関) TEL.03-5221-4772 FAX.03-3212-4470 【URL】http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi