病気になった人にとって、自分の職場が働きやすいと思わない人は6割強

 病気を抱え、治療を受けながら働く人々を支援する取り組みが進められつつある。例えば、2016年には厚生労働省から「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」が発行されたり、2017年3月に決定された「働き方改革実行計画」では「病気の治療と仕事の両立」が課題のひとつにあげられたりしている。そうした中、働く人々は、自身の職場の両立環境に対してどう評価しているのだろうか。

 当研究所が2017年1月に実施した「ライフデザイン白書」調査*1では、有職者に対して「病気になった人にとって、現在の自分の職場は働きやすい」と思うかどうかを尋ねた。その結果、働きやすいと思う(「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」)と答えた割合は、有職者全体では38.6%であり、そう思わない(「そう思わない」または「どちらかといえばそう思わない」)と答えた割合(61.4%)を大きく下回った(図表1)。つまり、働きやすいと思わない人のほうがかなり多い。

 これらの割合は、就労形態によって異なる。働きやすいと思うと答えた人の割合は、正社員では39.2%であるのに対し、非正社員では34.8%とより低い。正社員以上に非正社員が、病気になったときの働きにくさを感じているといえる。

病気と仕事の両立環境に対する意識
(画像=第一生命経済研究所)

病気になった場合の就業継続がより困難な非正社員

 では、実際に病気になった人は、仕事をする上でどのような壁にぶつかるのだろうか。この調査では、「がん(悪性新生物)」「脳卒中」「心疾患」などの病気になったことがある人(現在、治療・療養中の人も含む)に対し、それぞれの病気になったことによって仕事を続けることや新たな仕事に就くことに関してどのような問題が生じたか(または、現在生じているか)についても質問した。ここでは、がんになったことによる問題を取り上げる。

 最初にがんになった時、またはがんがわかった時(以下、「がんの発症時」)に働いていた人のうち、がんになったことによって生じた仕事上の問題が「特にない」と答えた人は49.0%であった(図表2)。つまり、何らかの問題があった人が約半数を占める。

 「特にない」以外で回答割合が最も高かったのは、「病気の治療・療養のための休みが取りにくかった(取りにくい)」(16.1%)である。次に、「病気になる前と同じ働き方ができなくなった(できなくなっている)」(14.7%)、「仕事を辞めざるを得なかった」(13.5%)があがっている。がんになることによって、以前と同じように働けなくなり、就業継続が難しくなる人が少なからずいることが示されている。

 がんの発症時に正社員だった人と非正社員だった人とを比べると、問題が「特にない」と答えた割合は、正社員では54.2%であるのに対し、非正社員では39.5%と大きな差がある。すなわち、何らかの問題を感じた人は非正社員のほうがかなり多い。

 正社員に比べて非正社員が問題としてあげた割合が特に高いのは、「仕事を辞めざるを得なかった」であり、両者で10ポイント以上の差がある。また、「仕事を辞めることを考えた(考えている)」「給料が減った」の割合も、非正社員のほうがそれぞれ5ポイント程度高い。がんになった際に、退職に追い込まれるかどうかは正社員と非正社員で大きく異なるといえる。

 冒頭で述べたように、病気を抱えて働く人々を支援する動きは広がりつつある。しかし、今回の調査結果でも示唆されているように、がんなどの患者が働く環境は必ずしも十分ではなく、就労形態による差もある。非正社員も含め、病気になった人にとって働き続けやすい職場環境の整備がより求められる。

【注釈】
*1  当研究所が全国の満18~69歳の男女17,462人に対して実施したインターネット調査。調査の方法や結果の詳細は、第一生命経済研究所(編)『「人生100年時代」のライフデザイン -団塊ジュニア世代から読み解く日本の未来 ライフデザイン白書2018』(2017年、東洋経済新報社)に記載。

病気と仕事の両立環境に対する意識
(画像=第一生命経済研究所)

上席主任研究員 水野 映子
(研究開発室 みずの えいこ)