モスコビシ欧州委員が「イタリア来年度予算を巡る対立を緩和したい」との見解を示したことにより、ユーロの買い戻しが一時強まる場面もありましたが、前日に関してはイタリア政府が欧州委員会に対してEU財政規律に反する2019年予算案を修正しない考えを示したことにより、一時的に買い戻されたユーロの材料を即座に破棄する展開となりました。今後数年間は財政赤字を拡大させない方針を表明したものの、イタリア政府の方針に懐疑的な見方が優勢となっており、一時130円台を回復していたユーロ円についても129.20円台に下落しています。

ポンドについては、メイ英首相が議会で「EU離脱交渉は95%決着。合意は間近」と発言するも、北アイルランド巡るEU案を改めて拒否するなどポンドについても、ポンドの買い戻しの材料となったメイ英首相の「アイルランド国境問題で主要な要求の1つを取り下げる用意」との報道を打ち消す内容となったことから、ユーロ同様にポンドについても反落しています。

本日については、日経平均株が軟調に推移し400円超安になっていることから、ドル円を中心としたクロス円の上値も重くなっています。前日の上海株急騰の追い風が、欧米市場へあまり好影響を与えなかったことが要因として考えられます。ドル円に関しては、上値こそ重いものの下値の底堅さも確認できることから、堅調な推移が予想されますが、113円台を前に足踏みしていることを考えると、113円台を明確に上抜けるまでは戻り売り中心のマーケットになる可能性が高そうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

イタリア政府は欧州委員会に対してEU財政規律に反する2019年予算案を修正しない考えを示したものの、トリア財務相はEU当局者らとの建設的な協議を望むと述べており、どちらの意見に傾くかでユーロの動きが大きく変わりそうですが、イタリア政府が欧州委員会へ提出する書簡により財政赤字比率2.4%を堅持することが確認されたこともあり、抜本的な解決案はほぼ出てこないと考えられるため、ユーロの上値は抑えられそうです。今後の予定としては、欧州委員会は29日までにイタリアへの予算案修正を求めるか否かを決定し、修正を求められた場合イタリアは3週間以内の対応を迫られるということになります。

米中貿易戦争については、まだまだ序章の段階でありここから悪化する可能性は十分残されています。イタリアの財政規律問題は当然ながら、英国のブレグジット関連の問題については、アイルランド問題で事実上の行き詰まりになっています。ここからは、メイ英首相が窮地に追い込まれるのシナリオが考えられるため、ユーロ同様にポンドについても当面上値の重さは変わらないのではないでしょうか。

中東ではサウジアラビアが著名記者殺害疑惑でトルコから追い詰められており、地政学的リスク主導でのリスクオフのマーケットが織り込まれてくれば、マーケットはもう一段リスクオフになる可能性がありそうです。

一時的な反発はあったものの、引き続き欧州通貨の戻りは一時的

欧州通貨の戻りは一時的なものだと考えていましたが、ユーロ円で130円を一時示現するなどスパイク的な動きもあり、129.70円で129.20円のショートは損切りです。ただ、ユーロの上値は依然として重いと考えているため、ユーロ円の戻り売り戦略を再考します。前日NY時間で上値の重かった129.50円付近まで引き付けての戻り売り戦略とし、損切りは129.80円、利食いは128.30円を想定します。

海外時間からの流れ

ユーロ、ポンドの反発が一日にして反落する動きとなりました。上述した以外の材料としては、クルツ・オーストリア首相が「欧州委員会は、イタリアの2019年予算案が修正されない場合は拒否すべき」と発言しユーロの下落を後押ししました。また、ポンドについてはメイ政権に閣外協力している北アイルランド民主統一党(DUP)が英保守党ユーロ懐疑派による修正案を支持すると報じられており、一日でユーロ、ポンドの反発材料が否決されたかたちとなりました。

今日の予定

本日は、主要な経済指標としては米・ベージュブックが予定されています。要人発言としては、ホールデン・MPC委員、カーニー・英中銀総裁、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、カプラン・ダラス連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。