前日の海外時間では、エルドアン・トルコ大統領のカショギ氏に関する演説への警戒感が高まり、トルコリラだけでなくマーケット全体がリスク回避の動きへ傾きました。ただ、演説内容としてはエルドアン大統領はカショギ事件を計画的犯罪としながらも、サルマン国王を直接批判することなく、事件関与が取り沙汰されているムハンマド皇太子に言及しなかったことで演説前の過度な警戒感は一旦落ち着き、徐々に買い戻しの動きとなりました。演説前にはトルコリラ円は19.80円付近での推移でしたが、19.00円付近まで下落し、その後は19.50円付近まで買い戻されています。ただ、「民族主義者行動党(MHP)がエルドアン政権との連立を解消する可能性」と一部報道されており、こちらについては引き続き注視する必要がありそうです。

イタリア財政問題に揺れるユーロについては、市場コンセンサス通りではありますが、欧州委員会はイタリアの2019年度予算案を差し戻し3週間以内に再提出するように求めました。ドンブロウスキス欧州副委員長は「伊予算案についての説明は納得できるものではない」「伊政府は規律違反ということを自覚している」と発言しており、両者の溝はなかなか埋まりそうもありません。ただ、既にこの展開は織り込み済みだったこともあり、ユーロドルは1.1450ドル付近まで一時下落するも、その後は1.1490ドル台まで買い戻されています。25日に欧州中央銀行(ECB)定例理事会を控えていることもあり、ポジション調整の動きが活発化したことも一因として考えられそうです。

ドル円については、引き続きNYダウの動きに左右される方向感のない動きとなりました。NYダウが一時540ドル超下落し、ナイト・セッションの日経平均先物が290円下げたことが嫌気され、ドル円は一時112円を下抜け111.958円を示現しました。ただ、その後は急速にNYダウの買い戻しが入り、ドル円は112.50円付近まで値を戻しています。クドロー米国家経済会議(NEC)委員長が「米中首脳はG20首脳会議の場で会談する予定」と発言していることもあり、ドル円については引き続き方向感なく株式市場に連れる展開になりそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

カショギ事件にてサウジアラビアがクローズアップされてきましたが、今後は違った視点でサウジアラビアへの注目度が高まりそうです。焦点となるのが原油、それも増産姿勢に対するサウジアラビアの動きです。ファリハ・サウジアラビアエネルギー相は原油増産に前向きな姿勢を表明していますが、12月にも産油国間で協調増産の延長合意を目指すと発言しました。世界最大の産油国の積極的な供給姿勢に原油相場は売りが先行し、原油価格は一時65.80ドル割れまで下落幅を拡大しており、今後も原油価格が下がるようであれば、豪ドルを筆頭とした資源国通貨の上値が重くなる展開が想定されます。

本日は、加中銀(BOC)の政策金利発表が予定されています。市場コンセンサスは25bpの利上げとなっており、ほぼほぼ織り込まれていると考えられます。先週発表されたカナダの消費者物価指数は市場予想に対して悪化したものの、依然としてコアCPIはターゲットの2%に近い水準を維持しており、今回の利上げ決定に影響を与えることはないと考えています。焦点としては、今後の経済見通しを上方修正するかどうか、そして声明にて今後の利上げの可能性が示唆されれば「噂で買って事実で売られる」という材料出尽くしによるカナダドル売りにはならないと考えています。

ブレグジット関連の報道については、欧州連合(EU)が英国に対して関税同盟の譲歩案を提案との報道、英首相報道官による「北アイルランドは英本土と同じ関税条約を結ぶ」との発言により、一旦はメイ英首相の不信任投票に対する懸念が和らぎつつあります。ただ、抜本的に物事が解決したわけではないため、引き続き戻りがあったところではポンド売り優勢の動きになりそうです。

イタリアの予算案が解決するまでは、ユーロは戻り売りが機能しそうだ

なかなか戻り待ちに戻りなしの動きになってはいますが、引き続きユーロの上値は依然として重いと考えているため、ユーロ円の戻り売り戦略を継続します。前々日NY時間で上値の重かった129.50円付近まで引き付けての戻り売り戦略とし、損切りは129.80円、利食いは128.20円を想定します。

海外時間からの流れ

ユーロとポンドについては、ポジティブ/ネガティブ材料が錯綜していますが、基本にあるのはネガティブな材料がベースになっていると考えられます。ただ、ドルについては、ボスティック米アトランタ連銀総裁、カプラン米ダラス連銀総裁はともに「中立水準まであと2-3回は利上げが必要」と述べ、継続的な緩やかな利上げを支持しています。ドル円についても、112円割れは一時的なものであったことから、上値の重さは確認できるものの、下値も底堅いと考えることができそうです。

今日の予定

本日は、独・10月製造業PMI/サービス業PMI、加中銀(BOC)政策金利、米・ベージュブックが予定されています。要人発言としては、ボスティック・アトランタ連銀総裁、メスター・クリーブランド連銀総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。