普通の人では得られない様々な人生経験を積んできた富裕層。あるいは多くの特別な経験をしてきた結果、富裕層になった人もいるでしょう。富裕層とは、どんな考えを持った人なのでしょうか。「富裕層の名言」から富裕層のアイデアの源泉を探っていきます。

利己的ではなく利他的に、ビル・ゲイツ氏の教訓

power
(写真=docstockmedia/Shutterstock.com)

「自分一人で何かを成し遂げたことはない。テストを除いては。でも、それを除いて、私はいつも誰かを探し出すだろう」(I’ve never done anything solo. Except take tests. But with the exception of that, I would always seek someone out.)

1955年にアメリカのシアトルで生まれたビル・ゲイツ氏。若くしてコンピューターに夢中になり、アメリカ有数の大学であるハーバードを中退してマイクロソフトを立ち上げました。この若者がつくった会社は世界企業へと成長し、ゲイツは巨額の富を得るとともに、世界にその名を知らしめました。

ビル・ゲイツ氏は、現在はビジネスの一線から身を引いて「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」を設立し、社会貢献活動を行っています。

そんな才気にあふれたゲイツ氏ですが、事業の成功は自分一人だけで成し得ることができるものではないと考えていることをよく表しているのがこの言葉。常に誰かと共に事業に取り組んできたことを自覚し、一人では物事は達成し得ないことを心得ています。才能のある人は時に傲慢になりがちですが、ゲイツ氏は何事を行うにも誰かとの協力が欠かせないことを知っているのです。

独りよがりにならず、他人との連携を大事にするゲイツ氏だからこそ、ビジネスから退いた後には社会問題に目を向け、利己的ではなく利他的であるべきだということを自ら実践してみせています。

挑戦を続ける孫正義氏の決意

次の紹介するのは、ソフトバンクグループの創業者、孫正義氏の言葉です。

「一度しかないこの人生で自分の夢を追いかけないでいつ追いかけるのだろう。」
(孫正義氏のツイッターより)

孫正義氏は1957年、佐賀県の在日コリアンの家庭に生まれました。差別を経験する中、学業に打ち込み、優秀な成績を収めます。さらに持ち前の向上心から高校時代に渡米し、アメリカの大学を卒業しました。その後若くして福岡県で起業し、後にソフトバンクを立ち上げます。

日本社会における民族的なマイノリティーであり、差別を受けた経験もありながら、学業に励み、海外留学に挑戦し、言葉や文化の違う環境の中で努力を重ねました。日本でビジネスを始めた後も次々と新しい事業に打って出て、大きな成功を収めています。さらに社会への意識が高く、社会貢献的な事業も進めてきました。

そんな孫氏の言葉からは、何があったとしても決して諦めずに前進を続ける強い意志を感じることができます。

「ハングリーであれ。愚か者であれ」と語りかけるジョブズ氏

最後に紹介するのはアップル創業者・ジョブズ氏の名言です。

「ハングリーであれ。愚か者であれ」(Stay hungry. Stay foolish.)

これは米アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏の言葉です。1955年生まれのジョブズ氏は、若くしてホームコンピューターを開発し、後にビジネスの世界で大成功します。ジョブズ氏は若い頃音楽や禅に夢中になり、ヒッピー・カルチャーに傾倒した時期もあるなど、独特の哲学を持ち、事業でもその思想が生かされてきました。

「ハングリーであれ。愚か者であれ」と言い切るジョブズ氏は、その言葉通り、「儲け主義」とは一線を画す独創的な製品づくりや事業を展開してきました。アップルは、単なるモノだけではなく、アイデアや思考、さらには「アップルという世界」さえも創り出してきたと言えるでしょう。

アップル製品の利用者の中には、ジョブズ氏の言葉にあるような独自の哲学から生み出されたオリジナル製品をこよなく愛する人が少なくありません。

さらに、ジョブズ氏は以下のような言葉も残しています。

「残りの人生も砂糖水を売ることに費やしたい? あるいは、世界を変える機会が欲しい?」(Do you want to spend the rest of your life selling sugared water, or do you want a chance to change the world?)

「イノベーティブなつながりを構築するのであれば、みんなと同じような経験をしているようではいけない」(If you’re gonna make connections which are innovative… you have to not have the same bag of experiences as everyone else does.)

「あなたの顧客はより幸せで、より良い人生をつかむことを夢見ている。製品を顧客に売ろうとするな。顧客の人生を豊かにすることを目指そう」(Your customers dream of a happier and better life. Don’t move products. Enrich lives.)

従来型の製品を売ろうとするのではなく、顧客の幸せを実現するための「ソリューション」を創造しようというジョブズ氏の言葉に、感動を覚える人も多いでしょう。

新しい価値観や思想を生み出す

ビジネスという世界で活躍し、富裕層となったこの3人は、事業を通じて新しい価値観や思想を生み出してきたイノベーターです。そしていずれも既存の枠組みや価値観から脱却し、独創的な世界を自ら作り出すために積極的に動くことの必要性を説いています。多くの人の心を打ち続ける名言として、今後も語り継がれていくでしょう。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト / d.folio