前週末の欧州時間では、イタリアの予算案が混沌とするなか、欧州中央銀行(ECB)の利上げ開始時期が2019年の夏頃から先送りされるのではとの思惑が主導し、ユーロドルは一時1.1330ドル台まで下値を拡大しました。ただ、直近安値の1.1350ドル台を下抜けたことへの達成感、加えて週末要因も相俟ってその後は1.1400ドル付近まで買い戻されました。その後は、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がイタリアの格付けを据え置いたととの報道により、市場はポジティブサプライズと捉えNYクローズ間際に1.1420ドル台まで続伸するも、同国の格付け見通しが「安定的」から「ネガティブ」に引き下げられたこともあって、その後は1.1400ドル付近に回帰する慌ただしい動きとなりました。
ドル円については、NYダウが一時530ドル超下落、ナイト・セッションの日経平均先物も440円下落する動きとなり、一時111.30円台まで下落しました。しかし、その後はユーロ同様に週末要因もあり、112.00円付近まで買い戻されています。ドル円については、週末に雇用統計が控えていることもあり、基本的には今週は様子見姿勢が強まる地合いですが、ドル円の動きが完全に株価連動型になっており、NYダウ、日経平均株価などの想定外の下落(上昇)によって、動意付く可能性もあるため、この点には注意したいところです。
本日の日経平均株価は反発していますが、週末の報道で、トランプ米大統領が「日本が市場を開放しないなら日本の自動車に20%の関税をかける」との発言を行いました。週明け早朝のマーケットへの影響は限定的ではありましたが、トランプ大統領が上記発言をTwitterなどで深掘りするようなことになれば、日経平均株価が再度下落するリスクは十分考えられそうです。
今後の見通し
今週のイベントとしては、31日に予定されている日銀金融政策決定会合、11月1日に予定されているBOE政策金利、そして2日に予定されている米雇用統計が注目材料となります。来週にFOMCを控えているため、ブラックアウト期間に入るので、FED高官による発言はほぼありません。日銀政策決定会合については、今回は特段注視すべきトピックスもないため、無風通過になりそうです。ただ、今月16日の日経新聞では 「オペ微調整予想が債券市場で浮上している」 との内容が記載されていたため、実際に現段階では何のアクションもありませんが、一応この点には注視したいところです。
BOEについては、0.75%の据え置きがコンセンサスとなっており、ほぼこのコンセンサスから乖離することはなさそうです。ただ、前回も英国のEU離脱(ブレグジット)に関する懸念が強まっていると指摘したこともあり、今回も同様の懸念を示すようであればポンド売りに繋がる可能性がありそうです。「合意なき離脱」が現実味を帯びてきており、BOEの地方担当者からは、2019年3月のブレグジットを前に、企業が投資を控え、コスト管理を厳しくしているとの報告があげられています。この点をクローズアップされれば、再度ブレグジット問題が市場のテーブルの真ん中に据えられる可能性は考慮したおきたいところです。
上述したECBの利上げ先送り懸念の背景には、ドラギECB総裁が「将来直面する問題を見通すことはできないが、仮に発生した場合、中央銀行としての使命を達成すべく再び政策余地の調整を余儀なくされる恐れもある」と発言したことが影響しています。イタリアの予算案問題は当然として、ブレグジット関連の報道がポンドだけでなくユーロへの影響も大きくなってきていることで、ユーロについては想定外に上値が重くなる可能性があります。格付け会社フィッチは、英国のEU離脱が円滑に進むとは想定していないとした上で、「合意なき離脱」となれば格下げの可能性があるとの見解を示しました。イタリアの問題だけでなく、ユーロには英国のブレグジット問題もネガティブ要因として抱えているため、積極的に買い進める地合いではなさそうです。
ユーロ円ショート戦略は連続成功、引き続き戦略はユーロ円戻り売り
再度利食いが早すぎた感はありますが、ユーロ円128.20円ショートは127.10円での利食い手仕舞です。しつこいようですが、基本戦略は引き続きユーロ円の戻り売りです。128円台でのショートが理想的ではありますが、127.80円~128.00円付近で足踏みするようだと成行での戦略も視野に入れます。損切りは128.50円上抜け、利食いは126.70円付近を考えています。
海外時間からの流れ
米・第3四半期GDP(速報値)が市場予想3.3%に対して3.5%になったことで一時ドル買いが強まる場面が見られましたが、その後にNYダウが大きく下落したことでドル円は112.20円付近から111.40円付近まで下落しました。既に米国の強い経済指標は織り込まれている可能性があり、株価下落がドル円を中心としたクロス円の上値を重くしています。ただ、株価の反発は想定以上にリスクオンの動きを誘発することから、週末に予定されている雇用統計までは株式市場を睨みながらの動きになりそうです。
今日の予定
本日は、米・9月個人所得/個人支出、米・9月PCEコア・デフレータなどが予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。