独身女性は老後に賃貸物件を借りにくくなるという噂を聞いたことがありますか。賃貸物件の契約時は、連帯保証人が必要になるケースが大半ですが、親や近親者がいない独身高齢者の場合、連帯保証人として頼れる人はほぼおらず、契約が結びづらくなります。
また、単身女性ゆえに、借りにくくなることも事実です。なぜ、独身女性は老後に借りにくくなるのか、今からできる対策について、詳しくご説明します。
賃貸契約の保証人は大家さんの安心のため
一般的にマンションを借りる際、連帯保証人をつけるように不動産会社から言われます。なぜ保証人(以下、連帯保証人の意味で使います)が必要なのでしょうか。
それは、大家さんができるだけリスクを避けたいからです。
保証人がいれば家賃滞納リスクが避けられる
空き部屋を作りたくない一方で、もし借主が家賃を滞納すれば、収入が入らない上に、家賃の請求や解約手続きなどで、トラブルが発生するかもしれません。その際に保証人がいれば、家賃の督促などがスムーズにいきます。大家さんにとっては安心して貸すことができるのです。
大家さんは高齢者の孤独死リスクも避けたい
また、単身高齢者の場合、孤独死のリスクもあります。
65歳以上の一人暮らしの高齢者数は、年々増加しています。内閣府の統計によると、1980年(昭和55年)に男性が約19万人、女性が約69万人だったのに対し、2015年(平成27年)には、男性が約192万人、女性が約400万人となっています。
昨今では、一人暮らしの高齢者が亡くなり、数ヵ月後に発見されることも珍しくありません。そうなれば、部屋のリフォーム工事を行い、次の借主に貸すことになります。
この工事代金は、亡くなった借主の相続人などへ請求することになりますが、借主に相続人がいない場合には、家主が負担することになるのです。
老後の賃貸難民を避けるために今からできる対策
仕事をリタイアした単身女性が、保証人なしに賃貸住宅を借りることは、至難の業です。しかし、今からできる対策が3つあります。
定年5年前までの終の住処の賃貸契約
まず1つは、定年退職後も長く住める賃貸住宅に早めに契約しなおすことです。
現在賃貸住宅に住んでいても、マンションの老朽化で建て替えが行われ、立ち退きを迫られることがあるかもしれません。そうなると、新たな賃貸マンションを探すことになります。しかし、その時期に既に仕事をリタイアしていれば、保証人が見つからないことが考えられます。
現役で働いている間に、築年数が浅いマンションに移り住めば、その不安が軽減されます。契約の時期としては、定年を5年以上残したタイミングが良いでしょう。
ローンが組めるうちに中古住宅を購入
2つ目は、ローンが組めるうちに、中古住宅を購入することです。購入後すぐに引っ越しても構いませんが、定年まで人に貸すという方法もあります。そうすることで、住宅ローンの返済にかかる負担を軽くすることができます。
ただし、自分の住宅を期限付きで貸すわけですから、契約書を作っておかないと、引き渡しの際にトラブルになる可能性があります。たとえ、知人や友人に貸すことになっても、きちんと契約書を交わしておくことが重要になってきます。行政書士などのプロに依頼すれば、トラブルを未然に防ぐことにもなります。
保証人制度をあらかじめ調べて万が一に備える
3つ目は対策というより、実際に自分が高齢者になって、新たに賃貸契約を結ばざるを得なくなった際に備える心構えです。
先程もご説明したように、保証人がいないと契約が結びづらいという現状がありますが、それでもいくつか方法があります。
まず一つは、賃貸保証会社を利用する方法です。賃貸保証会社とは、賃貸契約に必要な連帯保証人を委託できる会社のことです。保証契約の内容は、賃貸保証会社によって違います。例えば、2年契約であれば、家賃の1ヵ月分が手数料であったり、毎月家賃の数%が手数料であったりします。
保証人がいない単身高齢者にとっては、ありがたい制度です。もちろん、賃貸保証会社を利用できるか否かの審査はあります。
また、家賃の支払いをクレジットカードで行うことで、保証人が不要になるシステムもあります。これは、クレジット会社が大家さんに、滞納した際の家賃保証をするものです。この場合、家賃以外に手数料を支払う必要はありませんが、カード会員に適当か否かの審査があります。
このように、保証人を立てることなく、新たに賃貸契約を結ぶ方法もあります。今からでも、自分にはどの方法が可能なのか、検討してみることをおすすめします。
明日は我が身かも? 対処策は覚えておいて
「私は今の賃貸マンションに住み続けるから関係ない」そう考える人がいるかもしれません。しかし、状況が変わって新たに賃貸マンションを借りざるを得ない事態がないとも限りません。そう考えると、賃貸契約を結び、連帯保証人を求められる事態が、いつ自分に起こるかわからないのです。
文・井上通夫(行政書士・行政書士井上法務事務所代表)/ fuelle
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