こんにちは。

相続税専門の税理士法人トゥモローズです。

前回の相続税の税務調査の基本 これだけは最低限知っておきたいの記事に引き続き、相続税の税務調査の解説です。

相続税の税務調査は、通常1日~2日で実施されます。今までの経験上、遺産が3億円以下の案件の場合には1日で実地調査が終わることがほとんどです。逆に数十億、数百億円規模になると実地調査だけで1週間近く、その後の事後調査、税理士と税務職員とのやり取りなど決着まで1年近くかかる案件もあります。

今回は、1日で実地調査が終わるような一般的な案件について1日の流れを臨場感たっぷりに解説していきます。

1. 税理士との事前打ち合わせ

税務署の調査官が来る前に税理士と相続人で事前に最終打ち合わせをします。実地調査は原則として10時から始まるため、税理士が1時間から30分くらい前に到着して事前にどのような心構えで調査に臨むのかをレクチャーします。もちろん、論点が多岐にわたるような案件については、調査当日ではなく前日以前に数時間の打ち合わせや想定問答を実施することも多々あります。

調査当日の事前打ち合わせでは、税理士が調査の一連の流れを説明し、調査官が確認するような資料や場所を事前に税理士が確認します。

例えば、通帳、銀行印、保険証券などが保管されていた金庫やタンスの引出の中身や書画骨董が保管してある納戸などです。

私が調査立ち会いするときは、調査官に余計なものを見させないためにも通帳、定期預金証書、印鑑、保険証券など、調査で提示を求められる可能性がある資料については、事前に保管場所から実地調査する部屋に持ってきてもらいます。やましいことは何もなくても調査官に調査に関係のないものまで見せる必要はないですからね。

2. 調査官到着から昼休憩まで

調査官は、いつも2名でやってきます。1人が相続人とメインで話す役割を担い、もう1人はメモを取ったり、コピーを撮ったりします。(昔は大きなコピー機をわざわざ運んで調査に望んでいましたが、最近はコピーの替わりにデジタルカメラで写真を撮る調査官がほとんどです。)

ちなみに、実地調査の場所はどこだと思いますか?

原則は、被相続人の自宅です。調査官は被相続人が亡くなる前に住んでいた自宅で調査をしたがります。もちろん、既に自宅を売却してしまっている場合等には相続人の自宅や担当税理士の事務所で調査が行われることもあります。

さて、調査官がやってきた後の流れですが、まずは10分くらいかけて雑談をします。この雑談が絵に描いたような雑談で、なんの内容もないです。天気の話だったり、行きがけに起きたことの話だったり、地元の市区町村の話だったり、調査の本題とは全く関係のない話から入ります。これにも一応意図があるようで、相続税の税務調査という人生に1度あるかないかのイベントで緊張している相続人の緊張をほぐすために雑談を最初に入れているようです。ただ、この雑談がうまい担当官ならその効果はありますが、あまり雑談が得意でない調査官も多いのが実情です。あまり得意でない人の雑談は、逆に相続人を緊張させているんじゃないかと思うこともあります。

雑談の後は、相続人に対するヒアリングです。

被相続人の生い立ち、職歴、交友関係、趣味、どのように財産を蓄積したか、
相続人の経歴、職業、現在の収入の状況、相続人名義の財産の内容などなど 質問事項は多岐にわたります。 このヒアリング事項の詳細については、相続税の税務調査 どんなことが聞かれるのか?その質問の意図を徹底解説!を参照してください。

午前中は、このヒアリングで終わります。

なお、調査官のお昼を用意する必要はありません。
仮に、お昼を用意していたとしても調査官は必ず断って外でお昼を取りに行きます。

税理士にはお昼を用意しても大丈夫です。もちろん用意しなくても税理士の午後のパフォーマンスは変わらないので安心してください。

3. お昼休み中

調査官がお昼に行っている間に、相続人と税理士で反省会と午後に向けての作戦会議をします。
「これはこのように応えるべきでした。午後は気をつけましょう。」とか
「午前にこれを聞かれたので、午後はこの資料を確認すると思うので整理しておきましょう。」とか
色々話して、午後に備えます。

相続人は、調査官という普段接点のない人に普段聞かれないようなことを聞かれて、午前中だけで大分疲労します。そのような相続人を調査に慣れている税理士が寄り添って少しでもその疲労の肩代わりをするのが税理士の重要な調査立ち会いにおけるミッションです。
正直、税務調査の現場で税理士が発言するケースはそんなに多くはありません。調査官は税理士にではなく相続人に対しての質問に徹します。相続人が応えに困ったときにだけ税理士が助け舟を出すようなイメージです。
なので、調査官がいないお昼休みなどに相続人の心のケアをすることが重要な仕事になるのです。

4. 午後の調査開始から終了

調査の再開はだいたい午後1時からとなります。
午後の中心は、午前中のヒアリングに基づいた根拠資料の確認です。

メインは通帳と印鑑の確認です。
通帳は被相続人の通帳だけでなく相続人の通帳も確認します。事前に取引明細を金融機関に職権で確認してから調査に臨む調査官もいますが、その場合でも現物の通帳は重要な根拠資料になるのです。

どういった理由かというと、通帳のメモが見たいからなのです。
通帳にメモをとっている人は以外に多くて、特にお金持ちの人は几帳面な人が多いので、結構な割合で細かくメモが残っています。
調査官はこのメモが大好物です。
例えば、メモに「○○(子の名前)に貸し付け」などと書いてあって、その資金移動について相続税申告書に加味されていなかったりした場合にはそれが更正する重要な証拠になるのです。

続いては、印鑑です。
印鑑は、必ず印影を取ります。
印影の取り方にも独自のルールがあって、まず、カラ印を押します。カラ印とは朱肉を付けずに押すことです。これで、最近使ったものかどうかを確認しているのです。その後朱肉を付けて3回ほど印をします。1回の朱肉でどのくらい薄れるかを確認しています。色々細かいルールが税務署内であるのです。

通帳と印鑑以外では、土地の権利証、保険証書、ゴルフ会員権、香典帳、電話帳などを確認します。

香典帳や電話帳は交友関係を確認するためです。
例えば、香典帳に●●銀行や△△証券の名前があったとします。それなのにその金融機関の口座が相続財産に無い場合には、その金融機関に問い合わせて財産の漏れがないか確認したりします。
それ以外だと調査中にトイレを借りたりして、トイレに飾ってあるカレンダーやタオルなども確認します。例えば◆◆生命のカレンダーであったら、この生命保険会社と取引があったのではないかと疑うのです。

また、貸し金庫がある場合には、相続人を引き連れてその銀行まで貸し金庫の中身を確認しに行くこともあります。

諸々資料の確認が終わったら、最後に必要な部分の写真を撮って資料の確認は終りとなります。

5. 調査終了

調査終了時に、調査官が今日のヒアリングに対する回答などをメモにまとめて、署名押印を求めてきます。こちらは任意なので署名押印しなくても良いのですが、内容を確認して問題なければ署名押印をしてしまったほうが今後の事後のやりとりが早く終る可能性が高くなります。

また、調査官によっては下記「相続財産以外の所有財産」という書類を渡して、
「これを記載して、後日提出してください」と言ってくる人もいます。

相続財産以外の所有財産
(画像=税理士法人トゥモローズ)

これも任意のため提出が強制されているわけではないですが、調査を早く終わらせるためにはすべてを正確に記載して提出したほうが無難でしょう。
なお、相続人の心理としては、自分の名義の財産が多いと余計な疑いをかけられるかもしれないから故意に財産を過少に記載したり、一定の財産を記載しなかったりするケースがたまにあります。
これをやってしまうと税務署の思う壺です。
すなわち、この資料に漏れてしまった財産は、その相続人が把握していなかった財産、すなわち被相続人の財産(俗に言う「名義財産」)と認定される格好の証拠になってしまうということです。
なので、この書類には相続人自身が知っている自分名義の財産はすべて漏れ無く記載するように心掛けましょう。

ここまでで、実地調査は終了です。
調査官は、早ければ15時くらい、遅くても17時には帰ります。

調査官が帰ったあとに、今後の流れを税理士と打ち合わせをして、実地調査の長い一日が終わるのです。(提供:税理士法人トゥモローズ)