●民間企業の2018 年冬のボーナス支給額を前年比+4.2%と予想する。夏(前年比+4.7%)に続いて高い伸びになるだろう。ただし、毎月勤労統計では、サンプルの入れ替えやサンプルを加重平均する際のウエイト更新の影響に伴って2018 年1 月以降に断層が生じており、実態よりも伸び率が大幅に上振れていることに注意が必要である。実態としては、18 年夏が前年比+2.1%程度だったとみられ、冬については+1.9%になると予測している。

●11 月7 日に公表された夏のボーナス(毎月勤労統計)は前年比+4.7%と、見かけ上は非常に高い伸びになった。だがこれは、前述の要因で実態対比上振れており、額面通り受け取ることはできない。厚生労働省は、18 年1 月以降の賃金変化率を見る場合には、前年から継続して調査の対象となっている「共通事業所」ベースの数字(参考値として公表されている)を重視すべきとしているのだが、今回のボーナス調査では共通事業所の値は公表されておらず、実勢の把握が困難なものとなっている。そこで次善の策として、共通事業所ベースの特別給与の伸びを確認すると、6月が前年比+2.3%、7月が+1.9%となっている。特別給与とボーナスは一致するわけではないが、基本的には近い動きをすると考えて良く、実態としての夏のボーナスは前年比+2%強だったと推測される。公表値である前年比+4.7%と比べるとかなり伸びは抑制されるが、+2%強という数字はボーナスとしては強い数字である。ボーナスに関する各種調査でも夏季賞与は好調との結果のものが多く、夏のボーナスは高い伸びだったとの評価で良いだろう。

●ボーナスの交渉は、春闘時にその年の年間賞与を決定する夏冬型、秋にその年の冬と翌年の夏の賞与を決定する冬夏型、賞与の度に交渉を行う毎期型などがあるが、夏冬型を採用する企業が最も多い。そして夏冬型においては、前年の企業業績が交渉のベースとなる。18 年の春闘では、好調だった17 年度の企業業績を反映して、ボーナスについても大幅な増額で妥結する企業が多かった。夏のボーナス増に続き、冬についてもこの交渉結果が反映される形で増加が予想される。なお、毎期型の企業、あるいは組合が存在しない企業においては、より直近の収益状況・業況がボーナスに反映されやすい。非常に好調だった17 年度と比較すれば、18 年度上期の企業収益の伸びは鈍化しているため、夏冬型以外の企業では夏に比べて冬のボーナスは鈍化するものと思われる。こうした企業の影響を受ける分、夏対比では伸びの鈍化が見込まれるが、全体としてみれば冬についてもボーナスは高い伸びになることが予想される。

● 7-9月期の個人消費は、台風、地震といった自然災害が相次ぎ、外出機会が抑制されたことが下押し要因になったことに加え、野菜価格やエネルギー価格の上昇も痛手となり、低調な推移となった。10-12 月期については、こうした下押しからの反動に加え、冬のボーナス増も後押しとなることから、個人消費は再び増加に転じると予想される。(提供:第一生命経済研究所

第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部
主席エコノミスト 新家 義貴