老後の住居を持ち家にするか賃貸にするかは、どの世代の人にとっても大きな関心事の一つです。特に、30代後半から40代の働く女性にとっては、結婚せず一人で暮らしていくと決める人も多く、この年代なら住宅ローンを借りても返済可能なので、今後の住居をどうするか悩む人も多いのではないでしょうか。今回は特に、老後に賃貸を選択した場合のメリットとデメリットを紹介します。
賃貸派のメリットは柔軟に住まいを選べる選択肢の広さ
持ち家に比べ、資金面での将来の安心感という点では劣る賃貸ですが、住まいを固定せずいつでも引越しができるということは、老後の住まいを自由に選ぶことができるというメリットがあります。例えば、収入に変化があった場合、その額に応じて最適な家賃、間取りの部屋に住むことができます。
また、転職などを考える場合、持ち家であれば自ずと新しい職場の範囲が決まってしまいますが、賃貸であれば、例えば都会に行ってみたり、逆に田舎を選んでみたりと、視野を広く持つことができます。持ち家であれば必要な固定資産税や都市計画税を払わなくてもよいことや、住まいのメンテナンスを自分でしなくてもよいことなども、賃貸派のメリットと言えるでしょう。
老後の賃貸、デメリットは借りにくさとずっと続く家賃の支払い
高齢になると貸してくれるオーナーが見つからない
一方、高齢になると、一般的に家を貸してくれるオーナーが見つからないと言われるのがデメリットの一つです。これは、特に年金収入だけで生活するようになると、収入が少なく、子どものいない単身者であれば、連帯保証人が見つからないというケースもあるからです。
現在の年金生活者の多くは持ち家で暮らしている
また、賃貸であればずっと家賃を払い続けなければならないので、老後の資金計画はより慎重に準備しておく方がいいでしょう。
2017年に総務省が実施した「家計調査」によると、65歳以上の単身者の1ヵ月の支出は14万6,594円ですが、そのうち住居費はわずか1万4,256円となっています。賃貸で住むとなるとこの金額で借りられる物件はほとんどないと言えるので、現在の年金生活者の多くは、持ち家で生活していることが分かります。
賃貸の場合、家賃がかかる分、1ヵ月の支出は上記の額より最低でも3〜4万円増えるでしょうし、将来の年金受給金額は少なくなると考えられるので、老後の資金は働けるうちからしっかりと準備しておく必要があります。
高齢者専用賃貸住宅も選択肢の1つ
自治体や都市再生機構などが提供するシルバーハウジング
一生賃貸で暮らす場合、高齢になった時に高齢者専用の賃貸住宅に引っ越すことも考えてみる価値はあります。高齢者専用の賃貸としては、まず自治体や都市再生機構、または住宅供給公社が提供している「シルバーハウジング」があります。
入居するのに年齢や年収、または身体状態などの制限はありますが、住居は高齢者向けにバリアフリー化されていますし、生活援助員(ライフサポートアドバイザー)に日常生活のことに関して相談することもできます。また、年収に応じて家賃の減免制度があるので、収入が低い人でも入居できるのが大きな特徴です。
民間企業が運営するサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
もう一つ、民間企業が運営する「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)も最近増えてきています。こちらもバリアフリー化されているのはもちろん、ケアの専門家による安否確認や生活相談を受けることができます。
いずれも高齢者に配慮した構造になっているのはもちろんですが、特に単身者にとっては、相談員が常駐していることで、孤独死や孤立を避けられるのは、持ち家や他の賃貸物件にはないメリットです。
一生賃貸派は今後の住宅情報をチェックしておこう
おひとりさまが賃貸で一生を過ごすメリットは、将来の選択肢を広く取ることができることですが、収入や連帯保証人などの問題で、そもそも住宅を借りることができないというデメリットもあります。
ただし、日本はご存じの通り、超高齢社会を迎え、高齢者の住宅問題は今後ますます議論されるでしょう。高齢者専用賃貸住宅をはじめ、将来さらに選択肢が増えることも考えられるので、一生賃貸で暮らしたいという人はしっかり新しい情報にアンテナをはっておきましょう。
文・松岡紀史(ライツワードFP事務所代表・ファイナンシャルプランナー)/fuelle
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