加齢によって避けて通れないのが視力の低下です。老眼がはじまると遠近両用メガネを使う方が増えますが、遠い場所や近い場所を見るときで角度を変えるなどのわずらわしさがあります。最近になって、テクノロジーによってスムーズに遠近の切り替えができる「タッチフォーカス」というメガネが登場し注目を集めています。今回は、先進メガネの実力を見てみましょう。

遠近を瞬間的に切り替えられるメガネ「タッチフォーカス」

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(写真=PIXTA)

2018年10月、スマート社会をテーマにしたイベント「CEATEC JAPAN2018(シーテックジャパン2018)」が幕張メッセで開催されました。そこで、流通関係者やメディアから注目されたアイテムのひとつが、三井化学の開発した「タッチフォーカス」です。25万円と、メガネとしてはかなりの高価格商品ですが、今までにない画期的な機能を備えています。

その機能を一言で表現すれば、「遠近を瞬間的に切り替えられるメガネ」となります。見た目は一般的なデザインメガネですが、レンズに特殊な技術が採用されているのです。普通のメガネはフレームにレンズがはめられています。ここまでは「タッチフォーカス」も同じです。しかし、スイッチをONにすると、レンズ中央部に電子液晶レンズが現れ、近い距離の視界にピントが合います。

使用するシーンのイメージとしては、ゴルフプレー中にスコアを確認したいときはONにし、プレーに戻るときはOFFにすれば、ストレスのないゴルフを楽しめます。

メガネの細いフレームに電子回路を組み込めたヒミツ

スイッチのON・OFFがスムーズにできるのも特徴で、フレームにタッチセンサーが搭載されており、センサーがある紋章部分に約1秒触れると内蔵された電子回路が起動します。電子回路を動かしているのは、右フレーム先端の着脱可能な小型軽量バッテリーです。このバッテリーのおかげで、普通のメガネと変わらないデザインに電子回路を組み込むことができました。バッテリーはUSB充電方式のため、どこでも簡単に充電できます。

フル充電で約10時間連続使用でき、1日1時間のON状態で1週間程度持つという性能です。さらに、「タッチフォーカス」はデザイン性にも優れています。フレームは、シリコンバレーの有名なデザインコンサルティング会社であるIDEO社と協業。先述したようにON・OFFの切り替えや、バッテリー着脱の操作にもファッショナブルな様式美と機能性をとことん追求しているのが特徴です。デザインへの評価も当然高く、2018年度グッドデザイン賞を受賞しています。

タッチフォーカスを生み出した三井化学はどんな会社?

このような先進メガネを生み出した三井化学とはどのような企業でしょうか?三井化学は、三井鉱山の石炭化学事業に端を発する100年以上の歴史を持つ老舗化学メーカーです。1997年に三井石油化学工業と三井東圧化学が合併し現企業になりました。同社は多くの製品分野で高いシェアを誇っていますが、中でもメガネレンズ材料では世界1位、自動車材PPコンパウンドで世界2位とグローバルスタンダードになっている製品があるのは特筆できます。

メガネレンズでは豊富なノウハウを持つ三井化学も、これまでにないメガネづくりということで、「タッチフォーカス」製品化までには試行錯誤したようです。たとえば、電子液晶レンズの出現によって「視界が急に変わると使用者が酔いや不快を感じてしまう」という問題。このような先進メガネならではのハードルをひとつひとつクリアすることで製品化が実現しました。

「高齢化×テクノロジー」はこれからの時代のキーワード

「タッチフォーカス」は、本稿執筆中の2018年11月現在、まだ一部のメガネ専門店でしか販売されていません。さらに、普及が進めば高単価だけに業績の向上に貢献する期待があり、今後の投資先としても有望と考えることもできます。これから先、日本に続いて世界の主要国が高齢化を迎えようとしています。

このようなシニア世代向けの商品はグローバルに波及し、企業の成長エンジンになる可能性もあるでしょう。「高齢化×テクノロジー」はこれからの時代をひもとくキーワードのひとつになりそうです。(提供:Wealth Lounge


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