テクノロジーを活用して不動産業界の効率化や業務の標準化などをめざす一般社団法人・不動産テック協会(The Real Estate Tech Association Japan)の設立イベントが11月28日、都内・大手町の朝日生命ビルで開かれた。協会役員・顧問らが講演したほか、最新版不動産テックカオスマップが発表された。(取材=丸山隆平、経済ジャーナリスト)

国交省審議官があいさつで期待感を表明

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(写真=不動産テック協会提供)

イベントの当日は同協会代表理事の赤木正幸リーマルエステート代表取締役社長が司会を務めた。約160席の会場は開場すぐに満席となり、関係者の協会にかける熱い想いが伝わってきたイベントとなった。

赤木氏とともに代表理事を務める武井浩三ダイヤモンドメディア代表取締役があいさつで、「設立準備を含めると1年以上調整を進めてきたが、ようやく設立にこぎつけた。不動産関連企業、テクノロジー企業、各省庁が手を取り合い協力しあって新しい活動を続けていきたい」などと述べた。

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あいさつした北村知久・建設流通政策審議官(写真=筆者)

来賓の北村知久国土交通省建設流通政策審議官は「不動産分野においてもテクノロジーの活用が進んでいる。売り手と買い手の情報の非対称性を解消し、買い手の方に安心して購入いただけるための様々な施策を進めている。このような時機を得て不動産テック協会が設立されたことは大変意義深いことで、不動産業の健全な発展の貢献されるよう期待している」などと述べた。

顧問の3氏が講演 長嶋氏「中古住宅のデータベースにインスペクション情報を」

続いて理事各氏、顧問の紹介と各氏があいさつ。顧問の3氏が講演を行った。長嶋修氏(日本インスペクターズ協会代表理事 不動産コンサルタント)は「テックと不動産市場の未来」と題し、ホームインスペクションについて講演した。

長嶋氏は「不動産業法が改定されインスペクションが義務化されたが、業界ではインスペクションを浸透させることより不動産のオーナーに痂疲保険を薦めたい思惑が先行している。米国、英国の例をみてもインスペクションによる売り主側からの情報提供でうまくいっているケースはほとんどない。国交省は中古住宅についてデータベースの整備を進めているが、インスペクション情報を加えることで中古住宅市場を活性化できる」と述べた。

本間英明氏(エスクロー・ エージェント・ジャパン信託代表取締役)は「米国の不動産テックの状況」について講演。全米リアルター協会(NAR)と相互協定を結んでいる日本不動産協力機構(JARECO)代表を務めている立場から、米国においてもアマチュア不動産エージェントの増加、ベンチャーなど他業界からの参入で不動産業界は危機にあると指摘。ビッグデータ、ブロックチェーンなど新技術の活用が期待されるが、データの標準化、ルールの順守、エージェントのITリテラシーの向上などで課題が残るなどと述べた。

尹煕元(シーエムディーラボ 代表取締役)は金融・ITの視点から「リーマンショックが日米の不動産とテックに与えた影響」として講演。2000年以降の日米の株価、住宅価格の変動はリーマンショックからの回復期ととらえることができるとし、AIなどテックが発展しているが、最後は人間がそれをどう使うかが重要で、これから不動産テックにかかわる人は「人の夢を担う覚悟」がなければ、テクノロジーに翻弄されると述べた。

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協会の役員ら(写真=筆者)

イベントでは講演の後、協会の概要、新不動産カオスマップの発表、協会に設置された4部会の説明が行われた。4部会はクローリングに関する状況調査とルール策定などに従事する「情報化・IoT部会」、クラウドファンディングの課題調査やデータベースフォーマットの検討とルール策定を担う「流通部会」、不動産テックサービスの状況調査やカオスマップの更新を受け持つ「業界マップ部会」、海外不動産テック団体との連携や情報収集を担当する「海外連携部会」だ。