事業承継時には経営全般を引き継ぐため、顧客や関係者、財務戦略などを先にして、従業員の就業規則などは後回しになりがちです。会社の成長に貢献している従業員たちの働き方を表す就業規則については意識する必要があります。今回は事業承継において就業規則の見直しを後回しにしないことの重要性について一緒に考えてみましょう。

会社経営と就業規則

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(写真=PIXTA)

就業規則は従業員が企業で働くうえで守るべきルールです。それと同時に、会社が掲げる理念や目標のために、一丸となって取り組む一つの指標と見ることもできます。就業規則を見て従業員のことを大切にしていると分かるものであれば、従業員のモチベーションが保たれ、エンゲージメントが高まります。

一方で、従業員を単なる労働力だと考える就業規則の場合は、従業員から見れば良い就業規則とは言い難いのが実情です。そのため、会社に対するモチベーションが上がらず、経営者の交代をきっかけに離職する可能性もゼロではありません。

なぜ事業承継時に就業規則の見直しをすることが大切なのか

事業承継時に早めに就業規則を見直すほうがよい理由について考えてみます。会社経営を始めて、定期的に就業規則の見直しをしていたとしても、いつの間にか現在の時流に合わなくなる可能性があります。

また、働き方改革やワーク・ライフ・バランスが提唱されていますし、女性の管理職への登用が進み、子どもの育児や介護などは家族みんなで協力することが求められています。時短勤務に加えて勤務のフレックス制やリモートワークを認める会社もあります。時代にあわせた就業規則を作成し、従業員が働きやすい環境を作る必要があるのです。

しかし、後継者が会社を継いでからすぐに就業規則の見直しに着手すれば従業員組合からも否認されるおそれもあります。また、向こう見ずで会社の実情に即していない就業規則の変更は後継者にとっても従業員にとってもWin-Winなものではありません。

そのため、就業規則は事業承継中に後継者と一緒に確認し、見直しが必要かどうかを予め検討しておくのがよいでしょう。規則の成り立ちを後継者にも説明し、社会の流れと会社の実情を見比べながら見直す必要があるかどうかを確認し、経営者交代をする前に就業規則の見直しに着手するのが適当です。

誰に就業規則の見直しを相談すべきか?

実際に就業規則の見直しが必要になる場合、社内で策定するのでも構いませんが、第三者の意見を聞くほうがよいでしょう。例えば、社会保険労務士は会社の社会保険の加入手続き、労働保険料や給与計算、社内の賃金台帳作成などを行うのが仕事です。提携先の場合は、実情に合わせたものを作成してくれるはずです。ただし、自社独自の就業規則を作成する場合には、チェックしてもらえない場合もあるので注意が必要です。

また、労働問題に強い弁護士に相談するのも心強いです。会社と労働者の間にトラブルが生じた際、会社の代理人として法廷に立つことができます。労働問題の経験が豊富な弁護士は労使トラブルに発展しやすいケースやトラブルの解決法を熟知しています。そのため、トラブルを回避する目的でも就業規則を意識しておくことは大切です。

さらには、金融機関に相談することも一手です。金融機関は財務や事業計画で相談をする人が多く、就業規則についても相談しやすいです。金融機関は独自の提携先やネットワークを活用して、相談できる体制が整っています。現在と今後目指したい就業規則をもとにフォローしてくれる社会保険労務士を紹介してもらう、もしくは就業規則の分析をしてもらうことから始めるなど、相談してみるのがよいでしょう。

後継者と一緒に事業承継と合わせて就業規則をチェック

このように、事業承継時には早めに後継者と一緒に就業規則をみるようにしましょう。時代に沿った就業規則であれば、従業員が安心して働けますし、彼らの最大限の力を発揮できるはずです。困った場合には金融機関を始めとする専門家に相談すれば、よりよいアドバイスを貰えるはずです。事業承継時には就業規則の確認も忘れないようにすることが肝要だといえます。(提供:企業オーナーonline


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