相続代表者を決めるように言われているが、相続代表者にはどういった役割や責任があるのか、またどういったことやらなければいけないのかとお困りではないでしょうか。
相続代表者は、相続人を代表して役所や税務署、金融機関との連絡窓口を行うことが主な役割となっており、代表者に指定されたからといって責任が他の相続人よりも重くなるということは基本的にはありません。
ただし、相続代表者しかできないこともありますので、適切な方を代表者に決めることもポイントになります。ここでは相続代表者の役割と責任をすべて見ていきます。
1.相続代表者はだれでもなれる
相続代表者にはだれでもなることができます。 相続代表者とは、複数の相続人がいる場合に相続人を代表していろいろな手続きをする人のことです。
たとえば固定資産税を支払う場合や税務所で相続税を支払う場合、銀行で遺産の預金を解約して出金する場合などに必要になります。
相続代表者になるためには、特に資格などは不要です。親や兄弟姉妹の中でも、誰が優先されるわけでもないので、誰でもなることができるのです。 ただし必ずしも相続代表者を決める義務はありませんので、相続人同士が協力しながら相続手続きを進めていくケースでは相続代表者を決めないことも多々あります。しかし相続手続きを円滑に進めるうえでは、相続人が複数人いる場合には相続代表者を決めておくとスムーズでしょう。
1-1. 相続人の中から適任者を選ぼう
相続代表者になるのは、昔は長男が多かったですが今の時代は誰が相続人代表者となるかは相続人同士の話し合いで決めるケースが多いようです。例えば仕事が忙しくない方や体調に問題がない人等が相続代表者となって相続手続きを率先して行っていきます。
特に相続代表者になったからといって相続分が多くもらえる訳でもなく、手続きを円滑に進めることができるのに適任者は誰かという視点で決めるとよいでしょう。
相続人代表者は固定資産納税通知書受け取りや相続税申告、金融機関での手続きなどいくつかの場面で問題になりますが、すべてにおいて同じ人が代表者にならないといけないわけではありません。それぞれについて別々の人を代表者に選定することも可能です。
相続人代表者を選ぶときには、信用できる人を選ぶことが大切です。
相続人代表者がお金の払い戻しを受けて適当に管理していたために、そのまま自分の財産と混ざってしまうなどのことがあってはいけません。また相続人代表者宛に固定資産税の納税通知書が送られてきたり税務署からの連絡が来ても、他の相続人に対して連絡を入れずに放置されては相続人全員が不利益を被ってしまいます。
またあまりに高齢の人を相続人代表者にすると、負担が重くなりすぎたりスムーズに手続きが進みにくくなるケースもあります。 このようなことからすると、相続人代表者としては、責任感が強く、判断力がしっかりしている人を選ぶのも良い方法です。 金融機関での手続きでは、実際にその金融機関に行かなければならないので、金融機関に近い人が相続人代表者になると便利です。
1-2.代表相続人になっても財産の取得分は増えません
代表相続人になっても、その人の財産の取得分が増えることはありません。
代表相続人とは言っても、事実上相続人を代表して手続きをする人という意味にすぎないので、遺産の取り分には影響を与えないからです。 たとえば、固定資産税の納付書を相続人の代表として受け取ったからといって、その人の遺産の取り分が増えないということは、一般的にも当然だと理解しやすいでしょう。
2.相続代表者(相続人代表者)を決める場面別の役割・責任・やるべきこと
相続代表者(相続人代表者)がすることは以下の3つです。
・被相続人名義の固定資産税納税通知書を代表して受け取ること・相続税申告手続き上の代表相続人となる・相続財産名義変更手続きにおいて代表連絡窓口となる
それぞれについて、以下で詳しく見てみましょう。
2-1.【市区町村役場】被相続人名義の固定資産税納税通知書を代表して受け取る者
遺産の内容に不動産がある場合には、その不動産の固定資産税の納付の必要が出てきます。この場合、不動産の所有者宛に固定資産税の納税通知書が送られてくるので、それを利用して納付するのが普通です。
しかし、納税通知書はその年の1月1日時点の不動産の登記名義人に対して送られてきます。 年度途中に所有者が死亡した場合には、納税通知書が被相続人宛てに送られてくることになります。 もう既に死亡している人に納税通知書を送られても、家が不在であれば誰も受け取ることができず固定資産税が未納のまま放置されてしまう可能性もあります。
そこで、相続人の中で代表して納税通知書を受け取る人を定めるのです。これが納税通知書を受け取る場合の相続人代表者です。 固定資産税納税通知書を受け取るための相続人代表者を定めるためには、市町村に対して相続人代表者指定届を提出します。
ただ、これを提出して相続人代表者となったからといって、その人が不動産を相続することにはなりませんし、相続人代表者が全額固定資産税を支払わなければならないということでもありません。 あくまで納税通知書を受け取るだけの立場です。
2-2.【税務署】相続税申告手続き上の代表相続人
相続代表者選定は、相続税の申告手続き上でも必要になるケースがあります。 相続税申告の際には、通常は相続人全員が一緒に共同で相続税申告書を提出します。相続税申告書の作成は素人では難しいため、専門家である税理士に依頼することが大半です。
このように相続税申告書の提出は相続人全員で行うことが通常ですが、税理士事務所との連絡窓口や資料収集については誰が窓口となる代表者がいた方が手続き上スムーズです。そこで相続税申告書を提出するにあたり税理士事務所との連絡窓口を兼ねた相続人代表者を決めておくとよいでしょう。
2-3.【金融機関】相続財産名義変更手続きにおいて代表連絡窓口となる者
相続人代表者は、遺産の中に預貯金などの金融資産がある場面にも必要になります。 遺産の中に預貯金や有価証券などの金融資産がある場合、原則的には相続人全員が金融機関に行って払い戻し手続きや名義変更手続きなどを行わないといけません。
しかしこのようなことは非常に煩雑なので、払い戻し手続きなどを行うための相続人代表者を定めるのです。 金融機関側から相続代表者選任届(相続代表者届)を提出するように言われることもあります。 相続人代表者になった場合には、その人が1人で金融機関に行って、遺産の内容である預貯金の払い戻し手続きなどを行います。 他の相続人はわざわざ金融機関に出向く必要はなく、相続人代表者に対して実印で押印した相続届と印鑑登録証明書、委任状などの必要書類を提出すれば足ります。
この場合も、相続人代表者はあくまで相続人を代表して預貯金を受け取るだけです。払い戻した預貯金が相続人代表者のものになるわけではないので、具体的な分け方については相続人同士で話し合って分ける必要があります。 相続人代表者が金融機関で預貯金の払い戻しや名義書換を行うための具体的な手続き方法や必要書類は各金融機関によって異なります。
まとめ
今回は、相続の場面で問題になる相続人代表者について解説しました。相続人代表者は、法律上の地位ではない事実上の立場ですが、相続に関する手続きを相続人を代表して行います。固定資産税納税通知書を受け取ったり、相続税申告手続きで税理士事務所との窓口の役割を果たしたり、金融機関で預貯金の払い戻しをすることもあります。
相続人代表者には、責任感が強くしっかりした人を選ぶのが良いです。 今回の記事を参考にして、相続手続きをスムーズにすすめましょう。(提供:税理士が教える相続税の知識)