相続税申告書を税務署へ提出する際に必要な添付書類が何か分からないという人も多いと思います。実際に相続税申告書を税務署に提出する際に必要な書類はたくさんあります。そして必要な書類を提出しなければ特例が使えなくなってしまい損をしてしまう等のリスクもあります。この記事では税務署へ相続税申告書を提出する際に必要な添付書類について解説していますので参考にしてください。
1. 相続税申告時に税務署への提出が必要な書類
相続税申告書を税務署に提出する際に必要な添付書類は遺産の内容によって異なります。また添付が必須の資料もあれば特例を使う人だけが提出する書類もあります。この章では遺産の種類や適用する特例によってケース分けをして提出が必要な添付書類を解説しています。
1-1【全員共通必須】相続人の確定や遺産の分け方についての添付書類
(1) 【全員共通必須】被相続人の全ての相続人を特定する戸籍謄本(相続開始日から10日を経過した日以後に取得したもの) 相続税申告書を税務署に提出する際に全ての人が提出を義務付けられている書類です。具体的には被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要となります。
まずは亡くなった最終の本籍地で除籍謄本及び(改製)原戸籍謄本を取得して、本籍地の移動が過去にあれば以前の本籍地に遡って原戸籍謄本を取得していくことで出生まで遡ることが可能です。なお(改製)原戸籍謄本とは戸籍の変動記録を残すものですので、その人の本籍地での戸籍の変遷を知ることができます。
これは相続税を計算する際に法定相続人の人数が相続税額に影響するため、相続人の人数を確定させるために相続税申告を行う全ての人が提出しなければならないのです。
1-2 各種財産(不動産や金融資産等)についての添付書類
各種財産についての添付書類は提出が義務付けられているわけではありませんが、税務署が提出をお願いしているものがいくつかあります。実際にどこまでの資料を提出するのかというのは将来の税務調査にも関係してきます。
税務署は提出された相続税申告書をチェックしますが、その際に証拠資料がしっかり添付されていれば調査官の心象がよくなり税務調査を回避することも可能となります。しかし資料をありのままに全て出し過ぎると過去の預金移動を探られたりして相続人に不利になることもあります。
このため各種財産の資料をどこまで提出するのかという点については財産内容によってケースバイケースで判断する必要があり、そんな時に相続税に強い税理士のアドバイスが重要となります。ここでは一般例として税務署が提出をお願いしている資料を紹介します。
(1) 不動産がある人
- 固定資産税評価証明書
- 登記簿謄本
- 公図、測量図
- 賃貸借契約書
(2) 有価証券がある人
- 証券会社の残高証明書
(3)預貯金がある人
- 金融機関の預金残高証明書
- 通帳のコピー
(4)生命保険がある人
- 保険金の支払通知書
(5)その他該当する人
- 過去3期分の税務決算書一式(非上場株式を所有している人)
- ゴルフ会員権証書
- 過年度に税務署に提出した贈与税申告書
(6)債務や葬儀費用がある人
- 借金の残高証明書
- 相続開始後に支払った医療費等の領収書
- 葬儀費用の領収書等
1-3小規模宅地等の特例を適用する際の添付書類
(共通して必要な書類) 次のいずれかが必要です。
(1)配偶者が取得する場合
- 必要な添付書類はありません。
(2) 同居親族が取得する場合
- 取得する相続人の住民票
(3)3年以上借家住まいの相続人が取得する場合(家なき子)
- 戸籍の附票
- 借家住まいであることを証明する書類(賃貸借契約書等)
参考:自宅の土地が8割減額!小規模宅地の特例(居住用)徹底解説
1-4配偶者の税額軽減を適用する際の添付書類
・ 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(被相続人が亡くなってから10日を経過した日以後のもの)・遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し・遺産分割協議書の写しを添付するときは、相続人全員の印鑑証明書も添付
このように配偶者の税額軽減を適用する際の添付書類はそもそも相続税申告書を提出する際に共通して提出する書類であるため、別途特別な必要書類はありません。
参考:1.6億まで相続税が無税!配偶者控除を受けるための3つの要件と手続き
1-5非上場株式等についての相続税の納税猶予を適用する際の添付書類
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(被相続人が亡くなってから10日を経過した日以後のもの)・遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し・遺産分割協議書の写しを添付するときは、相続人全員の印鑑証明書も添付・中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則第7条第4項の経済産業大臣の認定書の写し及び同条第3項の申請書の写し・会社の定款の写し・担保関係書類
非上場株式等についての相続税の納税猶予を受けるためには多くの書類が必要であり、また適用要件も複雑ですので税理士に相談して適用の可否を判断するようにしましょう。
1-6債務や葬式費用についての添付書類
・葬式費用の領収書・お布施や心づけで領収書がないものはメモ書きでも控除可・借金の残高証明書・医療費等の領収書
葬式費用はお通夜と葬儀にかかった費用であれば、香典返しを除いてほぼ全てのものが控除対象となります。ただしお通夜と葬儀当日のものがメインとなり、49日法要等の法要に要したものは控除対象となりません。また仏壇仏具や墓石関係の費用も相続税の控除対象とならないため注意が必要です。
債務関係は故人が亡くなった後に支払ったもので故人が本来支払うはずだったものが控除対象となります。分かりやすい例としては医療費が挙げられます。故人が生きていれば本来は自分で払うはずだった医療費を相続開始後に支払った場合には相続税の控除対象となります。
反対に相続手続きに関する費用(相続登記や税理士報酬等)は故人ではなく、相続人が支払うべき費用ですので相続税の控除対象とはなりません。
【第一章まとめ】 この章では相続税申告書を税務署に提出する際に必要な主な書類の解説をしてきましたが、ここで紹介したもの以外にも必要となる書類もありますので税理士に依頼せずに自分で申告をする場合には税務署に相談するとよいでしょう。反対に相続税申告書の作成を税理士に依頼する場合には通常、税理士が税務署へ提出する必要書類を助言してくれますので安心です。
2. 相続税申告時の添付書類についてのよくあるQ&A
前章では相続税申告時の必要な主な添付書類を解説しましたが、この章ではその他の添付書類についてのよくあるQ&Aについて解説をしていきます。
Q.税務署へ提出する書類は全て原本提出が必要ですか?
A. 基本的にはコピーで問題ありません。税務署に提出する添付書類で原本提出が必要なものは、例えば特例適用時に提出する相続人の印鑑証明書等となります。その他の書類は原則コピーの提出で大丈夫です。
Q.預金通帳のコピー等、税務署に見せたくない書類は提出しなくてもいいですか?
A. 預金通帳等の遺産額を証明するためのエビデンスは提出が必須ではありません。ただし第一章でも紹介しましたように税務署が提出をお願いしている書類です。
例えばA銀行の普通預金が1000万円あると申告書に記載して提出する場合に、そのA銀行の預金通帳のコピーが添付されていなければ税務署は本当に1000万円かどうかを知ることができません。そうなると相続人から通帳を見せてもらうために税務調査にきます。
税務調査にきてしまうと預金通帳のみならずその他のことも根掘り葉掘り聞かれてしまいますので本末転倒です。このため結局は税務署に見せなくてはならないことを考えますと最初から税務署に提出しておいた方が税務署の心象もよくなります。
参考:「全容を大公開!相続税の税務調査パーフェクトガイド【これで安心!聞かれやすい18の質問と対処法】」
Q.添付書類の提出を忘れることで後日ペナルティが発生するようなリスクはありますか?
相続税申告書に必要な添付書類を忘れたことで後日ペナルティが発生するリスクがあります。最悪の場合には要件を満たしているにも関わらず、必要書類を提出していないことで特例が適用できなくなってしまうおそれもあります。
ただし実務上は相続税申告書が期限内(10か月以内)に提出されていれば必要書類の漏れがあった場合、税務署から提出を一度督促されてすぐに対応すればただちにペナルティになるといったことは少ないと思われます。
しかし当初の申告からしっかりと必要書類を提出しておくことで余計なリスクを負うことはありませんので、必要書類の添付忘れには気を付けましょう。
3.まとめ
この章では相続税申告書を税務署に提出する際に必要な添付書類の解説をしてきましたので、理解が深まったと思います。ご自身で用意できるものがほとんどですが、不安に感じた場合は、相続税申告書に添付する書類は多岐にわたりますので添付漏れにならないためにも専門家である税理士に相談すると安心ですね。(提供:税理士が教える相続税の知識)