※この記事は1月17日に投稿されたものです。

多くの原油投資家はサウジアラビア、ロシア、米国の3大産油国に注目しているが、他の産油国のことも忘れてはいけない。メキシコ、イラン、ベネズエラからの原油供給がなくなれば、市場と原油価格に影響が及ぶであろう。

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(画像=Investing.com)

以下が最新情報である。

1.メキシコ

メキシコのガソリン不足によって、今週の米ガソリン在庫量は大幅な増加が見られた。メキシコでは、需要に合うだけのガソリンを生産できていない。代わりに、米国からガソリンを輸入している。実際、同国は最大の米国ガソリン輸入国である。

現在の問題は、多発しているガソリンの盗難を止めるために、同国が複数の主要パイプラインを停止していることである。同国政府によると、昨年30億ドル相当の石油製品がパイプラインから流用され、製油所から盗まれたという。これらのパイプラインは米国から輸入された石油製品を輸送しており、このパイプラインの停止によって積んであるガソリンを降ろせなくなったため、同国の港から船が動けなくなっている。EIAが水曜日に発表した週次データから、今回の問題によって米国がガソリン在庫量を増やしていることがわかる。

これが続けば、米国の製油所に影響を与える可能性があり、米国原油在庫量にも波及するかもしれない。

2.イラン

米国による制裁がイランの原油輸出に大きな影響を与えている。米国のイラン特使によると、制裁によって同国の原油輸出量は日量100万バレル以下に縮小したという。TankerTrackers.comによると、同国の実際の輸出量はそれより少し多く、12月の平均では日量110万バレルであった。TankerTrackers.comは同国の12月の原油産出量は日量約273万8000バレルであったと計算している。これは制裁が初めて実行された11月の水準から3.6%減の水準となっている。米国政府がイランの輸出量を日量100万バレル以下に持ち込みたい場合は、トランプ政権はさらにイランへの圧力を強めなければいけないとみられる。そのため、少なくとも4月までは更に大きな混乱は起こらないと思われる。

3.ベネズエラ

米国のイランに対する制裁がどれほど効果的であったかを考えると、投資家はベネズエラに注意を払っておくべきであろう。最新の報道によると、トランプ政権が同国の石油産業に対して制裁を行うことを検討中であるという。S&Pグローバル・プラッツの報道によると、同国の12月の産出量は日量117万バレルであった。同国は現在、米国に対して現状(117万バレル)の半分弱の原油を輸出している。そのため制裁が行われると、ベネズエラ原油を購入している米国製油所(ベネズエラによって経営されているものも含めて)に悪影響が及ぶことになる。ベネズエラは主に重質原油を産出しているため、同国に対する制裁は市場の混合原油の流通にも影響してくるであろう。

また、同国はロシアと中国に対して多額の負債がある。原油販売によって得た利益の大部分は、この2国に対する負債の利払いに使われている。もし米国がこの収入源を絶ってしまったら、ロシアと中国はベネズエラが国外に保有する原油資産を担保にするかもしれない。米国にとってこれは、シットゴーがロスネフチ(OTC:OJSCY)に対する負債の担保として使われていることから、重要な意味を持つ可能性がある。

シットゴーはベネズエラ国営石油会社(PdVSA)の傘下にある製油企業であり、テキサス州コーパスクリスティなど、米国各地に製油所を保有している。米政府は、国家安全保障の観点から、対米外国投資委員会 (CFIUS)を通じてシットゴーを買収し、ロシアの国営石油会社であるロスネフチを締め出そうとする可能性がある。

この問題は1年近く国会議員からの注目を受けていた。昨年2月、スイスでエネルギー・コモディティ取引を行うメルキュリア・エネルギー・グループ率いる投資家団が、米外国資産管理局(OFAC)に対して、PdVSAが抱えるロスネフチへの債務の買い取り許可を求めた。何らかの解決がなされたのかについてや、シットゴーの所有権変更に対してどのようにCFIUSやOFACが対応したのかは、分かっていない。(提供:Investing.comより)

著者:エレン ワルド