貿易収支(季節調整値)は6ヵ月連続の赤字
財務省が1月23日に公表した貿易統計によると、18年12月の貿易収支は▲553億円と3ヵ月連続の赤字となり、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:▲297億円、当社予想は1,487億円)通りの結果となった。輸出が前年比▲3.8%(11月:同0.1%)と3ヵ月ぶりの減少となる一方、輸入の伸びが前月から大きく鈍化したものの前年比1.9%(11月:同12.5%)と増加を維持したため、貿易収支は前年に比べ▲4,115億円の悪化となった。
輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲5.8%(11月:同▲1.9%)、輸出価格が前年比2.1%(11月:同2.1%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲2.2%(11月:同4.2%)、輸入価格が前年比4.2%(11月:同7.9%)であった。
季節調整済の貿易収支は▲1,836億円と6ヵ月連続の赤字となったが、赤字幅は11月の▲4,807億円から縮小した。輸出入ともに前月比で減少したが、輸入の減少幅(前月比▲5.3%)が輸出の減少幅(前月比▲1.3%)を上回ったことが貿易赤字の縮小につながった。
12月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=71.9ドル(当研究所による試算値)と、11月の81.9ドルから大きく低下したが、足もとの原油価格(ドバイ)は60ドル程度まで下落している。通関ベースの原油価格は市場価格の動きが遅れて反映されるため、19年1月には60ドル台前半まで低下することが見込まれる。18年夏場以降の貿易赤字拡大は既往の原油高の影響が大きかったが、当面は原油価格の下落が貿易収支の改善要因となりそうだ。その一方で、輸出は低調な推移が続くことが予想されるため、貿易収支の改善は限定的にとどまる可能性が高い。
アジア向けを中心に輸出は低調
12月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比3.9(11月:同1.9%)、EU向けが前年比5.7%(11月:同6.3%)、アジア向けが前年比▲10.3%(11月:同▲4.5%)となった。
10-12月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比3.8%(7-9月期:同▲4.4%)、EU向けが前期比5.3%(7-9月:同▲2.4%)、アジア向けが前期比▲1.5%(7-9月期:同▲1.2%)、全体では前期比1.1%(7-9月:同▲3.9%)となった。
米国、EU向けは高めの伸びとなったが、アジア向けが4四半期連続で低下したため、全体では2四半期ぶりの上昇となったものの、7-9月期の落ち込みを取り戻すまでには至らなかった。アジア向けのうち景気減速が鮮明となっている中国向けが前期比▲2.6%(7-9月期:同▲2.7%)と大きく落ち込み、全体の足を引っ張る形となった。
7-9月期が自然災害に伴う供給制約の影響で大きく落ち込んだことを踏まえると、10-12月期の戻りは弱く、輸出は基調として弱い動きになっていると判断される。品目別にみると、世界的なIT需要の減退を背景にIT関連輸出の落ち込みが目立っている。日本の輸出数量に対して先行性のあるOECD景気先行指数(OECD+非加盟主要6カ国)は18年入り後低下傾向が続き足もとでも下げ止まっていない。
すでに欧州、新興国経済の減速は明確となっていたが、好調が続いていた米国経済もここにきて拡大ペースが鈍化している。外部環境が厳しさを増す中、輸出が失速するリスクは一段と高まっている。
一方、10-12月期の輸入数量指数(当研究所による季節調整値)は、前期比5.3%(7-9月期:同▲0.9%)と2四半期ぶりに上昇し、輸出の伸びを大きく上回った。
10-12月期の外需寄与度は▲0.3%程度のマイナスに
12月までの貿易統計と11月までの国際収支統計の結果を踏まえて、18年10-12月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比1%台の増加、輸入が前期比3%程度の増加となった。この結果、10-12月期の外需寄与度は前期比▲0.3%(7-9月期:同▲0.1%)と3四半期連続のマイナスとなることが予想される。
当研究所では鉱工業生産、建築着工統計等の結果を受けて、1/31のweeklyエコノミストレターで10-12月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、外需が成長率を押し下げる一方、民間消費、設備投資を中心に内需が増加に転じることから、2四半期ぶりのプラス成長となるが、プラス幅は7-9月期の落ち込み(前期比年率▲2.5%)を大きく下回ると予想している。
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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任
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