投資信託は少額の資金で、株や債券、商品(コモディティ)、不動産などさまざまな金融商品に分散投資できる比較的リスクの低い金融商品だ。しかし、投資信託の運用に失敗して大きな損失をだしてしまう投資家も少なくない。投資信託で失敗してしまう原因と、対処法を見ていこう。

投資信託で失敗している人の割合は46%

投資信託,失敗
(画像=fizkes/Shutterstock.com)

金融庁は、銀行で投資信託を購入している顧客の46%が損失をだしていると発表した(2018年3月時点)。

2月に急落したとはいえ、日経平均株価は2万円台で、アベノミクスが始まった2012年末からは5年間で2倍以上になっている。それでも投資信託保有者の半数近くは損失を抱えていることになる。

投資信託で失敗している人の3つの特徴とは?

約半数に及ぶ人が投資信託で失敗しているはなぜだろうか。主に3つの原因があると考えられる。

原因1――分配金を重視しすぎている

低金利の時代、定期的に分配金がもらえる投資信託は人気が高い。現在は過剰な分配金は控えるようになっているが、特に人気があるのが毎月分配型だ。リタイア世代が年金の代わりに受け取ったり、若い世代でも毎月小遣いのようにもらえたりする点が人気を集めている理由だろう。

しかし、投資信託の分配金は預貯金の利子とは違うことを忘れてはならない。預貯金の利子は必ず支払われるが、投資信託の分配金は下がることもあれば、ゼロになることもあり得る。さらに、預貯金の利子は元本が保証された上で支払われるが、投資信託の分配金は元本の取り崩しが含まれることもある。分配金は投資信託が運用している資産からだすため、分配金をだすと基準価額が下落する。

運用がうまくいかなくても分配金をだしている投資信託は、元本を切り崩しているということになり、自分が投資したお金が戻ってきているのに過ぎないからである。中長期での運用成績を期待するのであれば、分配金を受け取らない方が有利とも考えられる。複利効果が期待できるからだ。以下は100万円を年率5%で10年間運用した場合をシミュレーションした図だ。

※単利:元本だけに利子がつくこと(分配金を受け取る)
※複利:元本と前についた利子を合わせた金額に対して利子がつくこと(分配金を受け取らない)

複利と単利の差は、5年間では26,282円に過ぎないものの、10年では128,895円もの差になる。単利の計算は足し算だが、複利の計算は掛け算なので、投資期間が長ければ長くなるほど大きな差がでるのがわかる。

短期で受け取れる分配金の水準に惑わされず、投資の目的を明確にしたうえで投資信託を選ぶべきだ。

原因2 ――コストをあまり意識していない

投資で資金を増やす時にできるだけコストを抑えることは重要なポイントだ。投資信託には3つのコストがあることを理解しておこう。

まず、一つ目のコストが「販売手数料」である。投資信託を買う時に、証券会社や銀行などの販売会社に払うものだ。通常、0~3%程度かかる。日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など指数に連動するインデックス型はノーロード(手数料がゼロ)が多いが、指数を上回る成績を目指すアクティブ型は販売手数料が高い。

実は、販売会社の「おすすめ投資信託」というのは、販売手数料が高いことが多い。販売会社の収益は「販売手数料」がメインだからである。1,000万円の投資信託を購入した場合、ノーロードファンドならゼロだが、3%の手数料なら30万円の手数料が販売会社に入る。

2つめのコストは「信託報酬」。これは、投資信託を管理・運用してもらうための経費として、毎日投資家が支払うコストだ。通常、年0.5~2.0%程度かかるが、これもインデックス型の方が安い傾向にある。保有している間、支払い続けなければならないので、長期保有になるほど信託報酬が高い投資信託の方が高コストになるので要注意だ。

3つめのコストは「信託財産留保額」。投資信託を解約する際に投資家が支払う費用だ。一般的には0.3%と少額で、差し引かれない投資信託も多いので、あまり意識する必要はない。

投資信託のコストは、短期では「販売手数料」、長期では「信託報酬」を重視する必要がある。コスト重視で考えた場合、インデックスファンドを選ぶのがベターとも言える。購入手数料がゼロ(ノーロード)の場合がほとんどで、一般的に信託報酬もアクティブファンドより安いためだ。

インデックスファンドのコストが安いのは、銘柄選定の手間がかからないからだ。指数に連動することを目指すので、組み入れ銘柄に悩む必要はない。指数を上回る運用成果を目指すアクティブファンドでは、運用のプロであるファンドマネージャーやアナリストの関与度が高く、手間と時間がかかるので、その分コストが割高になってしまうのである。

原因3――新規設定の投資信託ばかりを購入している

2017年の一般的な公募株式投資信託の数は約5,400本。このうち52%が5年以内に新しく設定された投資信託だ。

そういった新しい投資信託を買う資金を作るために、これまで保有して利益がでている投資信託を売却することもある。そういった旬のテーマは継続することもあるが、短命に終わることも多い。

本来、投資信託は長期で保有するのが前提だが、短期で乗り換えを繰り返していると、販売手数料など無駄なコストがかかり運用成績は悪化してしまうのである。投資信託を購入する際は、乗り換えではなく新資金で、そしてファンドの実力を見極めるために少なくとも3~5年程度運用実績のある投資信託を選ぶのがよいだろう。

投資信託の販売会社を選ぶ上で確認しておくべき情報とは

2018年から投資信託を購入した顧客の損益がどうなっているのかを発表する「成果指標(KPI)」をすべての金融機関が公表することになった。毎年3月末に、設定から5年以上の投資信託の以下の項目を公表する。

1.運用損益別の顧客の割合
2.投資信託預かり残高上位20銘柄のコスト・リターンとリスク・リターン

2018年3月末の運用損益別の顧客の割合は以下のようになっている。

独立系投信・ネット証券のプラス比率が高い結果となった。独立系の運用会社は長期の「つみたて投資」を行っている投資家の割合が高く、好成績を得た一因になっているのだろう。実際に投資信託を選ぶ際は、このような情報や上記3つの点に注意して上手な資産運用を心がけてもらいたい。

文・MONEY TIMES編集部/MONEY TIMES

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