2018年のREIT(不動産投資信託)を振り返ると、世界各国・地域の中でも日本(いわゆるJ-REIT)の堅調さが目立った。長期金利が低水準で推移する中で好調さを見せた2018年のJ-REIT市場を振り返り、2019年の見通しについても見ていこう。

J-REITの堅調、世界的にも目立つ

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(写真=Sasin Paraksa/Shutterstock.com)

2018年の世界REIT市場は、米国の長期金利がやや引き上げられたことと、世界的に株式相場が調整に入ったことで下落した。三井住友アセットマネジメントのデータによると、円ベースの下落率は、2018年12月26日時点でマイナス6.7%となった。市場別に見ると、米国市場がマイナス6.4%、アジア太平洋地域がマイナス3.7%、欧州市場はマイナス22.1%。

イタリアの政治リスクや、英国のEU(欧州連合)離脱「ブレクジット」などの政治リスクが嫌気された欧州市場での落ち込みが目立つ。一方、J-REITは10.1%上昇と堅調に推移した。相対的に配当利回りが高くなったことで、活況を呈する不動産市況が好感されたようだ。

12月に調整売りが入るも、年明けには再び底堅く

ただ、2018年12月のJ-REIT市場は波乱含みの展開になった。12月中旬までは都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)での不動産市場の拡大や長期金利の低下を背景に堅調に推移していたものの、FOMC(米連邦公開市場委員会)が利上げ継続の方針を示すと、投資家心理が悪化。株式市場が大きく下落するのに連れて、J-REITも調整売りが入った。

年が明けて、2019年1月に入ると投資家心理も改善。国内の長期金利上昇懸念も薄いことから、J-REITは再び上昇基調に転じるとみられる。ただ、米中貿易摩擦の行き詰まりや英国の「ブレクジット」をめぐり、英国政府とEU議会のあいだで取り交わされた合意が英国議会の承認を得られなかった。そのため、2019年3月末の交渉期限を迎えるなどの悪材料が出た場合には、J-REITも再び下値を模索する可能性も考えられる。

都心オフィスの活況、地方都市にも波及

こうした外部要因に左右される可能性はあるものの、J-REITそのもののファンダメンタルズは引き続き強固とみられる。第一にあるのは、都心5区や大阪といった大都市圏でのオフィス市況の活況だ。東京のオフィス仲介会社の発表によると、2018年12月時点の都心5区でのオフィスビルの平均空室率は1.88%。バブル期の1991年12月以来、27年ぶりの低水準だ。

2018年12月は大型成約こそ少なかったものの、解約も少なかったため、全体的にオフィス空室率は低下した。12月時点の平均賃料は2万887円で、前年同月比8.94%増となった。オフィス賃料は60カ月連続で上昇している。ニッセイアセットマネジメントは、都心のオフィス需要が増加している理由として、業績の好調な企業が以下のような動きを見せていることを挙げている。

・本社移転、都心へのオフィス移転
・社員食堂やレクレーション施設など、社員間のコミュニケーション活性化を狙ったオフィス用途の多様化

年初は大型ビルの竣工で大量供給が引き起こす「2018年問題」が懸念されていたが、ふたを開けてみれば、2018年竣工の大型オフィスはほぼ満室で稼働開始。大量供給によるだぶつきを懸念していたオフィスオーナーも、賃料交渉で強気に転じているとみられる。都心のオフィス市場の活況は、地方都市にも波及している。

2025年の大阪五輪開催した大阪や、ビジネスの中心地として熱視線を浴びる福岡などでも好調が続く。特に福岡は、オフィス賃料の伸びが加速し、2018年11月は前年同月比で5.31%増とリーマン・ショック前の水準を超えた。

2021年までの中期的な見通しは安定的

大和投資信託の2019年予測では、いったん都心でのオフィス供給は減少し、2020年には再び173万平方メートルの新規供給が見込まれている。2018年以降の5年間の平均供給量は約100万平方メートルと、過去20年の平均供給量を下回る見通しだ。また、2021~2022年の供給量は2020年までの大量供給の反動減が見込まれている。

オフィス需要の活発化と供給が限定的になることで、2021年までの中期的な見通しではオフィス市場は引き続き堅調さを維持するとみられる。J-REITの保有物件の半数以上は、こうしたオフィスビルだ。オフィスビルの需要引き締まりはそのまま、J-REITの好業績期待にもつながっている。(提供:百計ONLINE

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