2018年のIPO(新規株式公開)の市場環境は良好であった。Renaissance Capital社のレポートによると、18年のIPO件数は190社と前年比20%増であり、2014年ぶりの高水準となった。
このうち約81%の企業は仮条件の範囲内、及び上回る初値がついた。過去10年間の最高記録である。しかし昨年度の株式市場全体での低迷によって、上場後の伸びは鈍かった。2018年上場企業全体のトータルリターンはマイナス2.3%と、過去5年間の平均リターン20%を大きく下回っている。
実際問題として、経済減速や市場環境が過去に類を見ない停滞局面に直面した場合、若手企業はそれらに耐えられるのかどうかということに関して疑問視されるため、株価の伸びは鈍化していたのだろう。
以下は最も注目を集めていたIPOの事例である。以下の企業はIPO以来投資家の期待に応えることが出来ていない。
1. ブルー・エプロン
ミールキット(食品宅配)事業を手掛けるブルー・エプロン(Blue Apron Holdings) (NYSE:{{1013645|APRN}})は2017年6月に上場して以降、苦境に立たされている。ミールキット業界ではTK(Terra's Kitchen)などのプレーヤーとの競争関係が激しく、ブルー・エプロンは会員者数の確保に苦戦を強いられており、同社株は上場時から88%も下落している。
直近は1ドルを下回る株価で取引されていたが、昨日29日の終値は1.5ドルであり、現在の時価総額は2億7900万ドルとなっている。12月下旬時点での株価は65セントまで落ち込んでいた。
同社は直近の四半期決算における好決算の見通しを発表したことで、1月15日の株価は12月当時と比較すると45%高となっていた。また同社は、2019年第1四半期及び通期の業績が改善される見通しも発表している。
販売数の鈍化を下支えするため、同社は他企業と数多くのパートナーシップを組んできた。同社は先月、ウェイト・ウォッチャー(WW) (NASDAQ:WTW)と協業し、健康食の提供を行っている。また同社は、ウォルマート(Walmart) (NYSE:WMT)傘下のJet.comとも協業し、ニューヨークでの宅配に乗り出した。
しかしブルー・エプロンは木曜日の決算カンファレンスにおいて、店舗販売を通じた新たな事業展開を発表するのではないかと噂されている。同社の第4四半期決算は1月31日の取引開始前に控えている。コンセンサス予想では、EPS(一株当たり利益)がマイナス0.17ドル、売上高は1億3986万円とされている。
スナップ(Snap)
IPOが失敗例の一つとしてスナップがしばしば挙げられてきた。
かつてフェイスブック(Facebook) (NASDAQ:FB)に買収ターゲットとされたスナップは、現在過去最低水準の6.40ドルあたりで取引されている。2017年上場当時につけられた17ドルから62%安、IPO後にマークした高値30ドルからは78%安となっている。
フェイスブック傘下のインスタグラムは、スナップチャットのストーリー機能(投稿内容が一定時間で消える機能)を取り込むなど、両社の競争が激しくなったことでスナップ株は低迷することとなった。
2018年はインスタグラムが十代の若者の間で最も人気なSNSとなり、スナップチャットユーザー離れが進んだ。
スナップのグローバルパートナーシップ戦略のヘッドであるエリザベス氏は、2年後に退職することを最近発表した。同氏の退職の前には、イムラン・カーンCSO(最高戦略責任者)や、ドリュー・ボレロCFO(最高財務責任者)、ジェフ・ルーカス営業責任者が退職している。
しかし、複数のアナリストは同社のアンドロイド向けアプリにおいて、アップル(Apple) (NASDAQ:AAPL)製品の利用者が少ない国での新規ユーザー獲得に期待感を寄せている。
スナップの第4四半期決算発表は、日本時間2月6日午前6時10分を予定している。
スポティファイ(Spotify)
音楽配信サービスを行う、スポティファイの株価は年初より17%高まで値を上げている。しかし上場当時の株価165.90ドルと比較すると、現在の株価は20%安となっている。
昨年夏に200ドル近くまで上昇した後、12月24日には過去最安値の103.29ドルまで下落した。現在は133ドルの水準まで回復している。
同社が2018年4月に上場した際には、初値が公開価格を下回ることはなかった。株式が一般公開される前に、同社株への機関投資家からの売りが殺到することはなく、ニューヨーク証券取引所での上場時には適切な初値が付けられることとなった。
懸念要素としては、同社のマーケットシェアをアップルミュージックに奪われているということや、海外市場の展開がスムーズにいっていないということである。
スポティファイの第4四半期決算発表は、日本時間2月6日午後8時30分を予定している。
テンセント・ミュージック・エンターテイメント
通信、ゲーム事業を行う中国大手のテンセント・ホールディングス(Tencent Holdings)から分社化されたテンセント・ミュージック・エンターテイメントは先月12月に米国市場で上場を果たしたが、投資家からの需要の低さが見られた。
12月11日の初値では仮条件価格レンジの最低水準である、一株当たり13ドルの値が付いた。その後、12月24日には11.88ドルに下落したが、現在は上場時の価格を上回る15.08ドルで取引されている。
同社の第4四半期決算発表は1月27日に控えている。
前回の第3四半期決算におけるEPS(一株当たり利益)は、前年比100%増の9セントとなり、7期連続の3桁台成長を見せた。一方の売上高は、65%増の7億2390万ドルであった。
市場では、同社が今四半期も引き続き、2桁~3桁台の収益成長を見せるのではないかとの期待が膨らんでいる。
市場では売上高と純利益の他に、ユーザー数の伸びにも注目している。同社の最新の報告によると、月間アクティブユーザー数は8億人を超えているとのこと。(提供:Investing.comより)
著者:ジェシー コーエン