- ハト派的なFRB、通商協議の進展、好調な決算は1月の米株式市場を押し上げた
- イールドカーブのフラット化
- ドルは最高値へ向かいつつある
- 石油掘削リグ数激減に伴う原油価格の上昇
1日のダウ平均株価やS&P 500、ラッセル2000などの米国株は小幅高であった。31日のアップル株(NASDAQ:AAPL)の上昇や、30日のパウエルFRB議長の利上げには「忍耐強く」対応するとの声明が株高へ寄与した。
また、好調な非農業部門雇用者数や米中貿易協議の進展によって、投資家心理は改善した。報道によると、ドナルド・トランプ米大統領は貿易協議に対して楽観的であり、中国は既に約1~2百万トンにも及ぶ4~7月出荷用の大豆を購入しているとのこと。また、中国が大豆の購入を続けるコミットメントもあるようだ。これらの好材料はアマゾン(NASDAQ:AMZN)の予想を下回る決算を打ち消した。
2019年は良いスタートを切った
投資家心理の大きく変動し株価が乱高下した2019年の1月が終わった。12月の9.18%安に対して、1月の株式市場は、2.03%安。また、最高値を記録した9月以来では12月時点で13.97%安であるのに対し、1月は7.2%安となっている。
1日のS&P 500は0.09%高となり、特にエネルギーセクターは原油価格の上昇を受けて1.74%高であった。米原油掘削リグ稼働数の急減により、WTI原油は11月19日ぶりに55ドルを上回って取引を終えた。一般消費財セクターは、アマゾンの決算が下押しして1.46%安となった。
週次では同指数は1.57%高となっており、全てのセクターで上昇している。一般消費財セクターが0.15%高でアンダーパフォームしている一方で、エネルギーセクターは3.11%高でアウトパフォームしている。
月次では同指数は7.97%高となっており、1987年以来で最大の上昇幅である。さらに、全てのセクターで上昇しており、公益事業セクターが3.08%高でアンダーパフォームする一方、エネルギーセクターは13.15%でアウトパフォームしている。
テクニカル的には、金曜日の小幅高により、100日移動平均線でる2700の水準がレジスタンスラインとなっていることが分かる。
1日のダウ平均は0.26%高、週次では1.32%高となっている。同指数は6週続伸となっており、2017年10月以来で最長である。月次では7.64%高となっており、3年ぶりの上昇幅である。テクニカル的には、同指数は100日移動平均線と200日移動平均線を上回ったが、上髭を付けて10月3日以来の下降トレンドラインを下回って取引を終えている。
1日のナスダック総合指数は0.25%安で、唯一下落した株価指数となった。アマゾンの第4四半期決算により同株が5.63%安となったことが下押ししている。同社の第4四半期の売上高と利益は市場予想を上回ったが、第1四半期の見通しは市場予想を下回った。
週次では、同指数は1.38%高で6週続伸となっており、2017年10月以来で最長となっている。月次では9.74%となっており、2011年以来で最大の上昇幅である。テクニカル的には、最高値を記録した8月29日以来の下降トレンドラインを上抜けした後、1月18日以来の持ち合い相場を上抜けした。しかし、100日移動平均線を上回った後、2営業日連続で再び下回っている。
貿易協議が進展しているにも関わらず、ラッセル2000は0.34%高で他の株価指数をアウトパフォームしている。貿易問題の解決により、大型株が上昇する反面、同指数などの小型株は下落するはずであるが、同指数は過去数ヶ月に渡ってアウトパフォームしている。
週次では同指数は1.22%高で6週続伸。月次では10.82%となっており、2016年以来で最大の上げ幅となっている。テクニカル的には、最高値を記録した9月以来の下降トレンドラインを上抜けした後、1月18日以降の持ち合い相場を上抜けした。他の株価指数と異なり、長い上髭を形成していないが、地合が反転するには100、200日移動平均線を超えなくてはならない。
1日の午前、好調な米雇用統計が発表され、米2年国債などの短期国債利回りは上昇した。数日前、FRBが利上げの停止やバランスシートの正常化に関して言及し、すでに米長期国債利回りは急落していたので、今回の動きはイールドカーブのフラット化へ拍車をかけた。
その後、好調な米製造業景況感が発表され、米国債は売りが殺到した。米10年国債利回りは、好調な雇用統計が発表された後でさえ、1ヶ月間で最も下落した1週間となった。
30日のFOMC後のプレスカンファレンスに続いてドルは下落した。しかし、31日、ドルはヘッドアンドショルダートップのネックラインと200日移動平均線によるサポートラインに支えられており、また昨年2月以来の上昇トレンドラインによってこのラインの重要性は高まっている。
ベーカーヒューズ発表の先週の米石油・天然ガス掘削リグ稼働数は急減した。ベーカーヒューズの発表によると、石油掘削リグ稼働数が15基減の847基、天然ガス掘削リグ数が1基増の198基で計14基減とのこと。また、昨年の同時期と比べると、石油・天然ガス掘削リグ稼動総数は99基増で、そのうち原油掘削リグ稼働数は82基増となっている。
テクニカル的には、1月のWTI原油価格は2.73%高で、11月以来のヘッドアンドショルダーボトムのネックラインを上回っている。
S&P500は1987年以来で最高の1月
S&P500は1987年以来で最高の1月となった。要因としては、予想以上に好調な企業決算、米中通商協議の進展、政府閉鎖の影響をそれほど受けていない堅調な労働市場などが挙げられる。
また、賃金は少し上昇し、過度にインフレすることなく消費者支出は改善しており、FRBもハト派色が強まっている。最も市場へ影響を与える要因は政策金利であり、株式市場は中期的な上昇トレンドへ向かっていると考えられるが、投資家は注意すべきである。
市場はFRBに対して早まった行動をとっており、「柔軟性」や「忍耐強く」というワードを方針転換のサインであると考えているが、それは違う。ジェローム・パウエルFRB議長は、FRBが完全に経済統計次第であることを繰り返し述べている。しかし、政府機関閉鎖の影響で多くの経済統計が公表されていないので、FRBが適切に評価できるはずがない。
言い換えると、適切な評価は行われていないのだ。むしろ、パウエル議長は前回のプレスコンファレンスの内容を繰り返して、経済を活気づけているだけである。仮にパウエル議長がFRBは適切に経済を評価できていないと繰り返し述べていたならば、市場はそれを政策転換と解釈したのだろうか。(提供:Investing.comより)
著者:ピンカス コーエン