老後のための資産形成策として注目を集めているiDeCo(イデコ)。掛け金が全額所得控除になるなど、税金面の優遇があるが、同じような節税メリットがある住宅ローン控除と併用する場合は拠出額に少し注意してほしい。

iDeCoの3つの節税メリットとは

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(画像=beeboys/Shutterstock.com)

iDeCoは「個人型確定拠出年金」の愛称で、老後の資金を準備するための年金制度だ。年金資産の受給開始年齢は原則60歳(受給開始年齢は加入期間によって異なる)からという制限はあるものの、税制面において次の3つのメリットがある。

(1)掛け金が全額所得控除となる

iDeCoは、掛け金(投資金額)の全額が所得控除の対象となる。例えば、毎月の掛け金が1万円の場合、年間での掛け金は12万円となる。仮に所得に対して所得税が10%、住民税が10%かかるとすると、年間2.4万円(12万円×20%)の税金が軽減される計算となる。

(2)運用益が非課税で再投資ができる

金融商品を運用すると、通常は運用益に対して税金(源泉分離課税20.315%)が課税されるが、iDeCoでは非課税扱いとなり、投資額と運用益がそのまま再投資される。

(3)受け取る時も控除対象となる

iDeCoは、60歳以上になり老齢給付金を受け取る際、年金か一時金のどちらかの受取方法を選択することができる。(金融機関によっては年金と一時金の併用も可能)年金として受け取る場合は公的年金控除、一時金の場合は退職所得控除の対象となり、一定の税額軽減が期待できる。

詳しくは後述するが、iDeCoを住宅ローン控除と併用する場合、(1)の掛金が全額所得控除となる点に注意する必要がある。

住宅ローン控除で所得税額から控除しきれない場合は住民税から控除

住宅ローン控除の正式名称は「住宅借入金等特別控除」という。個人が住宅ローンを利用してマイホームの建築や取得などを行い自らが住んだ場合、一定の要件を満たすと住宅ローンの年末残高を基として計算した金額が所得税額から控除される制度だ。

控除期間や控除税額はマイホームに住んだ年により異なるが、通常の住宅に2014年1月1日から2021年12月31日までに住んだ場合、控除期間は10年、住宅ローンの年末残高×1%(上限40万円/年)が控除される仕組みだ。

また、認定長期優良住宅や認定低炭素住宅に2014年1月1日から2021年12月31日までに住んだ場合、控除期間10年、住宅ローンの年末残高×1%が控除されるところまでは上記と同じ条件だが、控除の上限額が50万円になる特例がある。

なお、所得税より住宅ローン控除額の方が大きく控除しきれない場合には、住民税から余った額が控除されることになる。

所得控除と税額控除は控除の仕組みに違いがある

所得控除と税額控除は一見すると同じような税制優遇制度だが、控除の仕組みに違いがある。例えば、サラリーマンの場合は以下のように支払う所得税が決まる。

(1) 給与の収入金額-給与所得控除額=給与所得
(2) 給与所得-所得控除(※1)=課税所得
(3) 課税所得×税率=所得税額
(4) 所得税額-税額控除(※2)=最終的に支払う所得税

所得控除(※1)には社会保険料控除や配偶者控除、生命保険料控除などがあるが、iDeCoは所得控除の小規模企業共済等掛金控除という枠組みの中で掛け金が全額控除される。

一方、住宅ローン控除は税額控除(※2)という形で、年末の住宅ローン残高に応じて税金から直接控除される。

「iDeCo拠出後の所得税+住民税」>「住宅ローン控除額」で税制面のメリットをフル活用

iDeCoと住宅ローン控除を併用した場合は影響があるのだろうか。仮に住宅ローン控除前の所得税が20万円、住宅ローン控除額が25万円としてシミュレーションする。

iDeCoをはじめる前は、まずは所得税の20万円は全額控除され、余った残りの住宅ローン控除額5万円が住民税から差し引かれる。

次にiDeCoを月に2万円拠出した場合だ。年間の拠出額は24万円となり、仮に税率を10%として計算すると、所得税額は2.4万円の軽減となる。よって住宅ローン控除前の所得税額は17.6万円となり、上記と同様に住宅ローン控除で全額が控除される。余った残りの住宅ローン控除額7.4万円が住民税から差し引かれる計算となる。

つまり、iDeCoと住宅ローン控除を併用しても、「iDeCo拠出後の所得税+住民税」が「住宅ローン控除額」より大きければ、税制面のメリットをフル活用することが可能だ。

反対に「iDeCo拠出後の所得税+住民税」より「住宅ローン控除額」の方が大きい場合は、住宅ローン控除が余ってしまう計算になる。例えば、住宅ローンを組んだばかりで残高が多い場合には、住宅ローン控除額も大きくなるので、所得税と住民税の金額によってはこのようなことが起きる可能性がある。

住宅ローン控除が余っても損をするわけではない

結論としては、iDeCoと住宅ローン控除を併用すると、場合によっては住宅ローン控除が十分に活かしきれないケースが出てくる可能性もある。

しかし、住宅ローン控除が余ってしまったとしても、損をしたり、税金が高くなったりするといったことはない。あくまでも住宅ローン控除の恩恵を最大限発揮できなくなってしまうだけだ。また、前述した通りiDeCoには掛け金の全額所得控除以外にもメリットがある点は覚えておきたい。

iDeCoは活用したいが、住宅ローン控除が余ってしまうのがもったいないと感じる方は、自身の所得税と住民税を把握し、住宅ローン控除が最大限活用できる範囲内でiDeCoの拠出額を調整するとよいだろう。

自身の税金については、源泉徴収票をもらった際や、確定申告をする際に必ず確認しておく習慣を付けておこう。

文・春美 悠(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

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