iDeCo(イデコ)に加入しているビジネスパーソンがふるさと納税をするときは、iDeCoに加入していない場合よりもふるさと納税の上限額が少なくなる。2つの制度の概要を整理し、注意すべき点を探っていこう。
iDeco(イデコ)は掛け金が全額所得控除に
iDeCo(イデコ)は老後の資金を準備するための節税メリットがある年金制度で、長期で資産形成を図ることができる。税制面で、以下のメリットがあるので押さえておきたい。
(1)掛金が全額所得控除となる
掛金(投資金額)の全額が所得控除の対象となる。詳しくは後述するが、所得控除とは扶養控除や配偶者控除のように、税金計算の基準となる所得から、一定の条件を満たすことで控除される金額のことだ。
例えば、毎月の掛金が2万円の場合、年間で24万円になる。仮に所得に対して所得税が10%かかる場合、年間2.4万円(24万円×10%)の所得税が軽減される計算だ。また、所得税だけでなく住民税も軽減されるため、メリットは大きい。
(2)運用益が非課税で再投資ができる
金融商品を運用すると、通常は運用益に対して20.315%の税金(源泉分離課税)がかかるが、iDeCo(イデコ)では非課税扱いとなり、投資額と運用益がそのまま再投資される。
(3)受け取る時も控除対象となる
60歳以上となり老齢給付金を受け取る際、年金として受け取る場合は公的年金控除、一時金の場合は退職所得控除の対象となるため、受け取り時においても節税メリットがある。
3つの節税メリットがあるiDeCo(イデコ)だが、ふるさと納税と併用する場合は、(1)の掛金が全額所得控除となる点に注意する必要がある。
ふるさと納税の納税額は所得税と住民税から控除される
ふるさと納税は、自分の選んだ自治体に寄附(ふるさと納税)を行うと、寄附額のうち2,000円を越える部分について、所得税と住民税から原則として全額(一定上限あり)が控除される制度だ。
例えば、4万円のふるさと納税を行うと、2,000円を超える最大3万8,000円分(4万円-2,000円)が所得税と住民税から控除される仕組みだ。
ただし、控除される寄附金額には、収入や家族構成等に応じて上限があるので注意したい。
iDeco(イデコ)とふるさと納税は控除の仕組みが違う
iDeCo(イデコ)とふるさと納税は、ともに税額が軽減できる制度ではあるが、控除の仕組みには違いがある。所得税の額は、サラリーマンを例にすると以下のように決まる。
⑴給与の収入金額-給与所得控除額=給与所得
⑵給与所得-所得控除(※1)=課税所得
⑶課税所得×税率=所得税額
⑷所得税額-税額控除(※2)=最終的に支払う所得税
iDeCo(イデコ)は上述の計算式の所得控除(※1)の「小規模企業共済等掛金控除」という枠組みの中で掛金が全額控除されるのに対し、ふるさと納税は税額控除(※2)という形で、税金から直接控除される仕組みとなっている。
税金の計算では、まずは収入に応じて決められた給与所得控除が差し引かれ、次にiDeCo(イデコ)などの所得控除、最後にふるさと納税などの税額控除が差し引かれる。
iDeCo(イデコ)を利用するとふるさと納税できる上限額は減るが……
上述の税金計算の仕組みから、iDeCo(イデコ)を利用することによって、ふるさと納税ができる上限額が減ってしまう。
ではiDeCo(イデコ)に加入していない場合と加入した場合、自己負担2,000円でふるさと納税ができる限度額にどの程度の差があるのかシミュレーションする。
ここでは簡易的にシミュレーションするため、会社員(年収700万円)、家族は専業主婦の妻と子ども(15歳以下)、社会保険料は年収の10%、その他の所得控除や税額控除はないものとする。(※ふるさとチョイスの「ふるさと納税」還付・控除限度額計算シュミレーションで算出)
この条件では、iDeCo(イデコ)に加入していない場合のふるさと納税限度額は10万8,783円、加入した場合(月額2万円/年額24万円)の限度額は10万1,885円で、差額は6,898円となった。
iDeCo(イデコ)を利用することで、ふるさと納税の限度額は減ってしまうものの、数千円程度の差(収入や家族構成などで異なる)が出る程度だ。
iDeCo(イデコ)とふるさと納税を併用する際はふるさと納税の限度額に注意
iDeCo(イデコ)に加入した場合、拠出した金額が所得から控除されるため、ふるさと納税で寄付する金額を検討する必要が出てくる。
ふるさと納税の控除限度額については、ふるさと納税専用のサイトなどでシミュレーションができるので、たとえ数千円でも損をしたくない人は、あらかじめ上限金額を確認しておくといいだろう。
文・春美 悠(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES
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