図1

今週の総括

★米国の市場心理回復による米株高、円安を背景に、輸出株主導の回復も最後は息切れ

図2
図3

今週の日経平均は、回復基調となり21,000円を超えたが、15日に反落、再び21,000円台を割り込み引けた。

週明けは、前週末の大幅安の反動に加え、ドル円レートが1ドル110円台の円安となったことで急回復した。円安となった背景は、3/1に交渉期限を迎える米中通商協議の進展期待と、政府機関の再閉鎖の回避見通し、さらには欧州景気減速懸念が強まったことで、米国市場への資金シフト=米ドル高となったこと。円安の恩恵を受けやすい輸出関連業種を中心に上昇する一方、先週まで堅調だった内需関連株は出遅れた。

輸出ハイテク株は日経平均構成割合の高い銘柄が多く、その影響もあり日経平均がTOPIXを上回って上昇、既に19年ぶりの高値圏にあるNT倍率は13.2~13.3倍の推移となった。東証グロース/バリュー指数の比較では、17年、18年とグロース優位が続き、年明け以降は週ごとに一進一退だったが今週はグロース優位。

来週以降の見通し

★米中通商交渉の進展次第で再びこう着も

日経平均想定レンジ 19,500~21,500円

図4
図5

来週の日経平均は、米中通商協議の動向次第で、再びジリ貧となるリスクが残されているとみる。

同協議は3/1に交渉期限を迎え、合意できなれば、米国が中国に対して追加関税を課することになっている。 全面合意となる可能性はまだ低いものの、部分合意や交渉期限延長などの可能性は十分にある。しかし、ここまで1年近く対立が続き、お互いにある程度の経済的打撃が顕在化しても、両国ともに譲歩する姿勢は見せてこなかった。おそらく経済以外の面も含めた対立という側面もある。お互いに経済大国であり、現時点では、財政的にも経済的にも、そして国内政治的にも追い詰められている訳でもないだろう。急いで譲歩してまで合意しなければいけないという段階にはなく、合意に向かう可能性はまだ高くないと見た方がよい。部分的合意や交渉延長となった場合、市場心理が一時的にプラス方向に行くことはあっても、高官発言などのちょっとしたニュースで再び不安心理が台頭するリスクは常に残されているだろう。まだ安心はできない。

相場は引き続き米国発のニュースに一喜一憂しながら、結果としてボックス圏というこれまでの展開に逆戻りする可能性があるとみている。米国発の材料以外では、市場の転機となる可能性の1つとして、4月末~5月の次の決算発表に注目している。

コラム:徒然なるままに

最近、電車の発車前の駅員のアナウンスで、より直接的な表現を聞くことが増えたような気がする。具体的な例を挙げると、
「もう少し荷物をお引き下さい。このままではドアを閉められません」
「白線を超えて歩いている方、白線の内側にお入り下さい。電車が発車できません」
以前ならば、一般的な注意事項に留まっていたものが、「あれ、今の自分?」と気付かせる内容になっていることが、たまにあるような気がする。

これは、鉄道会社側が考えた上で工夫している対策の1つなのではないだろうか。
国土交通省が17年末から1年ごとに公表を開始した「鉄道路線の遅延『見える化』」によると、30分以上の大規模な遅延の場合、故障や作業ミスなどの鉄道会社側の原因は20%前後、自然災害系は6~8%、自殺、線路立入・妨害、動物などの鉄道会社以外の原因が70%前後(このうち自殺が43~49%)だそうだ。

一方、10分未満の遅延の場合、故障や災害などの原因は3~6%しかなく、急病人や落し物などの鉄道会社・災害以外が94~97%。しかも、乗降時間超過とドア再開閉という主に利用者のマナーが原因の遅延が60~63%と圧倒的に多い。

荷物の挟み込みや駆け込み乗車によるドア再開閉は、誰が見てもマナー違反だが、発車サイン音が鳴り終わっても「まだドア閉まらないし」と乗ろうとしてる人も電車遅延の原因。しかも全体の約半分がそれ。これが数字で示されている点が興味深い。

ある電車が何かの理由で遅れて前後の電車と間隔が開くと、待ち時間が長くなった特定の電車に乗客が集中し、その電車がさらに遅延を悪化させる。これを防止するために、乗降時間超過等で遅れが発生すると、前後の電車も時間間隔調整で止めることが増えた。心ない駆け込み乗車1名で、前後の多くの電車の数千人~数万人が遅延させられてる次第。こういう「事実」はもっとニュースで報道されてもいいと思うし、駅や車内のポスターで周知してもいいと思う。

田村晋一,松井証券
松井証券ストラテジスト 田村 晋一(たむら しんいち)
京都大学経済学部を卒業後、太陽神戸三井銀行(現三井住友銀行)に入行。米国MBA 留学、外資系大手コンサルティング会社勤務等を経て、UBS 証券、ドイツ証券、バークレイズ証券にて銀行セクター担当アナリストとして豊富な経験を積み重ねる。

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