生命保険といえば、よく知られているのは終身タイプの死亡保険です。毎月一定の保険料を支払い、もしものことがあれば、何百万から何千万の保険金が遺族に支払われます。しかし家族への備えとして用意できるのはこのタイプだけではありません。「保険代わりにマンションを買う」という選択肢があるのです。
アパートローンと団体信用生命保険
住宅ローンを借りるときに多くの人が加入する団体信用生命保険はアパートローンにもよく使われています。
略して団信とも呼ばれるこの保険は、ローンの借主が亡くなったり重い身体障害を患ったりした時に、ローンの返済が免除されます。残された家族には、負債のない不動産が残るわけです。
フラット35を除くほとんどの住宅ローンでは団信への加入が必須になります。「もしものことがあったら奥さんとお子さんに家を残せます」との文句につられて家を買う大黒柱の人も少なくないのではないでしょうか。アパートローンの場合は任意とされることも多く、反対に加入できないこともあります。
終身の死亡保険に加入しているのに、わざわざまた契約するのは無駄だと思う人もいるかもしれません。しかしこの団信、ただの生命保険ではありません。
実は相続対策として有効な手段となるのです。
アパート・マンションを相続した人たちのその後
もしも自分が亡くなって生命保険がおり、それまで目にすることもなかった大金が手に入ったら、あなたの家族はどうするでしょうか。堅実に貯金してくれる人はよいのですが、お金があるとつい使ってしまうという人の場合は、せっかく遺したお金が無駄遣いされてしまう可能性があります。今は想像できなくても、人間は大金を手にするとつい欲が出てしまうものです。もっと増やそうと、慣れない株式投資をして失ってしまうかもしれません。
それよりも、毎月安定した収入が入ってくるアパートやマンションを相続したほうが堅実な生き方をするのではないでしょうか。マンション所有者の中には、アパートローンで団信に加入したので通常の生命保険を解約したという人もいます。
ただし突然アパートやマンションを相続しても、困惑する人もいます。大家として何をしていいのかわからず、分割することも難しいため急いで売りに出して格安で売却されることもあります。
普段からマンション経営のノウハウや、どのような物件を持っていて何をしているのかを家族にわかるようにしておき、困ったときに頼れる専門家や仲間などを用意しておくなど、家族への心配りをしておいた方が安心です。
税金面でもメリットが出る可能性あり
生命保険よりも団信の方が相続税の節税となることがあります。通常の生命保険はみなし相続財産とされ、契約者(保険料負担者)と被保険者が同一の場合、相続税の対象となりますが、死亡保険金のうち法定相続人の数×500万円分が非課税とされます。例えば保険金が5,000万円のとき、相続人が配偶者のみであれば、5,000万円-500万円=4,500万円が課税対象となります。この場合の相続人は実際に相続した人の数ではなく、民法で規定された法定相続人のことです。
団信の場合は不動産という形で相続されるので、土地と建物の評価によって相続税の対象となる金額が決まります。相続税評価額は時価よりも低く、およそ8割程度に評価され、相続税額を抑えられる可能性があります。時価5,000万円の課税価格は4,000万円くらいというわけです。
ただし単純な比較はできません。ローンに金利を上乗せする形で支払う団信と毎月一定額を払う終身保険はコストのあり方が違いますし、そもそも団信に加入していなければ、残りのローンは相続財産から差し引かれます。個別性が高く、プロでも簡単には計算できません。可能性として「メリットが出ることもある」という程度にとらえておいてください。
ただ自分が儲かることだけがマンション経営ではない
マンション経営はもともと農家や大地主などが相続税対策に始めるというパターンが主流でした。今は「サラリーマン大家」「家賃収入で自由な生活」といったフレーズに惹かれ、新規参入する人も多くいます。しかし、家族に何かを残すためという目的で始めるというのもよいのではないでしょうか。(提供:相続MEMO)
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