自宅や土地など、不動産を相続したら名義変更を行う必要があります。ただ、今のところは罰則もなく、義務化されていないため、行わない人も多数いるようです。しかし、実際やらないと後で困ることになるかもしれません。

相続登記は不動産に名前を書いておくこと

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(写真=NaruFoto/Shutterstock.com)

相続登記は亡くなった人が持っていた不動産を、相続した人の名義に変えることです。そのためには、法務局に行ってしかるべき手続きをしなければなりません。売買や贈与による名義変更と違い、亡くなった人の戸籍謄本や遺産分割協議書など添付する書類が多くて煩雑なため、放置されているケースが多々見られます。

費用がかかることや、相続人が自ら望んだ相続ではない場合も、その一因となります。相続財産の調査が十分ではなく、相続が発生していることに誰も気づかないことすらあるでしょう。もともと登記は所有権などの権利を第三者へ主張するためにあります。つまり、不動産に名前を書いておくわけです。ほったらかしにしておくと、会ったこともない第三者が遠い親戚を名乗って「土地をよこせ」といってくる可能性はゼロではありません。

このような無用のトラブルは登記をしておくことで防ぐことができます。名義も変えず、客観的な証拠もないと、裁判で負ける可能性すらあるため相続登記は重要です。

放置は人のためにならない

このような事件に巻き込まれることは、さまざまな偶然が重ならない限りめったにあることではありませんので、もう少し現実的な話を考えてみましょう。もし相続登記をせず、ずっと放置しておいたらどうなるでしょうか。本来は自分名義にしなくてはいけない相続登記を残したまま自分が亡くなってしまったら、不動産の相続権は配偶者や子どもなどの相続人に受け継がれます。

さらに、配偶者や子どもが亡くなり、相続されるということを繰り返していくと、どんどん相続手続きは複雑になってしまうでしょう。相続人が増えたり、あまり面識がない人が相続人となったりして、遺産分割協議をしようにも話がまとまらない可能性すら出てくるのです。

こうなると、いざ相続登記をしようとしても、簡単に手続きを済ませることはできません。最初の被相続人にさかのぼって資料を集め、申請書類を作る必要があります。次世代に迷惑をかけたくなければ、自分が財産を受け継いだときにしっかり相続登記を完了させておくべきです。また、相続登記の放置は社会問題にもなっています。

登記名義人が死亡していると、その土地は所有者不明土地ということになります。国土交通省の調査によると、2016年度の所有者が不明の土地は、九州全土(約368万ヘクタール)を上回る約410万ヘクタールでした。 膨大な面積の土地の所有者が分かっておらず、道路の整備や開発に支障が出ています。相続登記を放置することは本人にとってリスクとなるだけでなく、子孫や世の中全体にも迷惑がかかる行為なのです。

対策として法整備が進みつつある

所有者不明土地が社会問題となっている以上、政府も本腰を入れて動いています。 2018年には「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が成立しました。同法によって、国や自治体は土地開発などの事業に所有者不明土地を活用しやすくなります。個人レベルでは、相続登記を放置していると認められた場合、登記するように裁判所が勧告できるようになりました。

義務化されたわけではありませんが、ほっておくと通知がくるわけです。受け取った人はあまり気分のいいものではないでしょう。ほとんど価値がないような土地を相続してもメリットがないように感じるかもしれません。しかし、不動産の利用の仕方は自分次第です。再開発などの話があれば売却して一財産を築けるかもしれません。

もし建物が建っていれば、国土交通省の空き家再生等推進事業の補助金を受けて改修し、収益物件に生まれ変わらせる可能性もあるでしょう。

相続することを前向きにとらえよう

相続登記は、土地や建物が自分の財産であることを証明するための手続きです。放置しておけば、手続きはどんどん複雑になっていきますし、無用なトラブルに巻き込まれる可能性もがあるでしょう。また、自分が亡くなった後に次世代や社会に迷惑をかけることになりかねません。しかし、自分の名義にすれば、やり方次第で得をすることもあります。相続財産を前向きにとらえ、不動産の場合は名義変更を行いましょう。(提供:相続MEMO

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