ティール組織は、マッキンゼーで10年以上にわたり組織変革プロジェクトに携わったのち、エグゼクティブ・アドバイザーとして独立したフレデリック・ラルー氏の著書『ティール組織—―マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』によって紹介された考え方です。

世界中でティール組織といわれる企業が成果をあげている

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(画像=Brian A Jackson/Shutterstock.com)

ティール組織の考え方は、上下関係や売上目標、予算がないなど、従来の経営にとらわれない新しい経営論として注目されています。これは、ラルー氏が頭の中で考えた理想論ではなく、著者が実際に新しい組織モデルを実践する組織を訪れたり、インタビューを行ったりして分析を行い整理した考え方です。

海外では20年ぐらい前から、米国のエネルギー関連営利企業AES、オランダのヘルスケア関連非営利組織ビュートゾルフ、フランスの金属メーカーFAVIなど、新しい組織モデルの企業が同時多発的に世界中で現れ始め圧倒的な成果をあげています。

日本においても、『ティール組織』の中で紹介されているポイントサイトを運営するオズビジョンをはじめ、ティールに近いコンセプトを採用する組織が同時多発的に生まれ始めているようです。

ティール組織の新しいマネジメント手法を採用している企業や団体は、それぞれが独力で実験を行い、試行錯誤の末に驚くほど似たような組織構造と慣行にたどり着いています。ティール組織の考え方の基本は、人類の歴史における組織の進化です。ラルー氏は、ティール組織が人類の次の発達段階に適合するようなモデルと捉えているのです。

色で表された組織

ラルー氏は、ティール組織の考え方を分析し整理する上で、組織は歴史とともに進化すると考え、組織形態を5つの色で表しています。

衝動型(レッド)

衝動型組織では、強力な上下関係の構造で、対人関係に力を行使し続けることが人と人とを結びつける要素になっています。衝動型組織のトップが地位を維持するためには、圧倒的な力を誇示して、ほかの構成員を無理やり従わせなければなりません。ただし、衝動型組織には正式な階層や役職がないため、組織規模に一定の限界が生じます。

順応型(アンバー=琥珀色)

順応型組織とは、正式な階層や役職、組織図によって権力の安定がもたらされるピラミッド構造の組織で、上意下達式の命令系統が正式に採用されています。中長期で計画を立てることができ、規模を拡大できる安定した組織構造を作ることができます。

現代の順応型組織でも、一定以上のポジションには特定の学位や勤務時間が求められることがあります。終身雇用制を採用し、多くの従業員の社会生活は仕事や職場を中心に営まれています。

順応型組織は、過去の経験に基づいて将来の計画を立てられる安定した環境に適していますが、状況が変わり、これまでのやり方がうまく機能しなくなっても変化の必要性を認めたがらず、競争に馴染めないという傾向があります

達成型(オレンジ)

達成型組織は、基本的にはピラミッド構造を残しながらも、プロジェクトグループや内部コンサルタントなどを採用して、厳格な部門や階層構造の境界に風穴をあけ、コミュニケーションのスピードを上げ、イノベーションを促す仕組みをもった組織です。

経営トップが全体の方向性を決め、目標管理を行い、重要な節目を定めて望ましい結果への達成を目指します。達成型組織のリーダーシップは目標重視型で、人間関係よりも業務遂行を優先し、公平無私な合理性に価値を置いて感情に流されないため、意味や目的を疑問視することに馴染めない傾向があります。

多元型(グリーン)

達成型組織は成果の有無が絶対的な基準ですが、多元型組織は多様性を重視して、働く社員を尊重します。意思決定はボトムアップのプロセスを模索し、最終的にはメンバーの総意に基づく決断を目指します。

多元型組織には、多様なアイデアが出てもなかなか物事が決まらないという問題点があります。多元型は、順応型組織や達成型組織などの構造を壊すのには強力な力を発揮しますが、実践的な対案を作り出すのは得意ではありません。

進化型(ティール=青緑)

進化型組織は指揮命令系統がなく、組織の一人ひとりが意思決定し、雇用形態を超えた信頼で結び付く組織です。進化型組織は、ほかの組織にある階層や役職ではなく同僚との関係性の中で動くシステムで、同僚・組織・社会との一体感をもてるような風土や慣行があります。進化型は、組織全体の存在意義や将来への可能性を常に考え続けて成長する姿勢を持った組織です。

ティール組織の考え方は企業の新しいかたち

現代企業が抱えている膨大な諸問題を克服するためには、ティール組織のような今よりも目的意識の高い新しいタイプの組織が必要になるでしょう。既存概念の殻を打ち破って新しいことに挑戦するティール組織の考え方は、新しい企業のかたちにおける一つのヒントになるかもしれません。(提供:あしたの人事online


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