19年1月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て、通関ベース)は前年同月比1.9%減(前月:同2.4%減)とマイナス幅が縮小した(図表1)。輸出の伸び率は昨年前半まで堅調に推移したが、年後半からは海外経済の減速やITサイクルのピークアウト、米中貿易戦争、原油価格下落などを受けて低下傾向で推移し、直近2ヵ月は小幅のマイナス成長となっている。

ASEANの貿易統計
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ASEAN5カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、1月は2月に続いて東アジア向け(同7.6%減)と東南アジア向け(同4.7%減)、EU向け(同3.5%減)がそれぞれ低迷した(図表2)。北米向け(同3.3%増)は東南アジアが中国に代わる生産地として機能することで増加傾向を維持しているものの、拡大ペースが鈍化するなど貿易の停滞リスクは高まりつつある。

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タイの19年1月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比5.6%減(前月:同1.7%減)と低下した。輸出の基調は昨年概ね堅調に推移してきたが、米中貿易摩擦や世界経済の減速など先行きの不透明感が強まるなかで電子機器を中心に主要工業製品が昨年末に大きく減少し、2ヵ月連続のマイナスとなった。また輸入額も前年同月比14.0%増(前月:同8.1%減)と上昇した結果、貿易収支は40.3億ドルの赤字となり、前月から51.0億ドル悪化した(図表3)。

輸出を品目別に見ると、全体の約8割を占める主要工業製品は同5.9%減(前月:同0.8%減)と低下した(図表4)。工業製品の内訳を見ると、主力の電子機器(同7.1%減)や家電製品(同5.8%減)、機械・装置(同2.5%減)が低迷したほか、石油化学製品(同6.4%減)と自動車・部品(同3.4%減)がマイナスとなった。また鉱業・燃料は同12.0%減(前月:同2.0%増)と、石油製品を中心に大きく低下した。農産物・加工品は同2.9%減(前月:同6.6%減)と低迷した。国際市況が下落している天然ゴム(同15.1%減)をはじめ、ゴム製品(同6.8%減)やコメ(同1.0%減)などが低調だった。

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ベトナムの19年1月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比8.9%増(前月:同0.4%減)と上昇し、2ヵ月ぶりのプラスとなった。輸出の伸び率は昨年概ね堅調に拡大した後、年末頃から主力の電話・部品を中心に鈍化しているが、アパレル関連が牽引役となって増加傾向は維持している。また輸入額も前年同月比5.4%増(前月:同1.6%増)と再び上昇した結果、貿易収支は9.0億ドルの赤字となり、前月から17.2億ドル改善した(図表5)。

輸出を品目別に見ると、まず輸出全体の約2割を占める電話・部品が同16.3%減(前月:同26.2%減)と低迷したほか、コンピュータ・電子部品が同0.2%減(前月:同4.1%増)とマイナスとなった(図表6)。アパレル関連では、織物・衣類が同32.6%増(前月:同12.0%増)、履物が同24.7%増(前月:同7.5%増)となり、それぞれ好調だった。農産品は、カシューナッツ(同14.9%減)と野菜(同7.2%減)、コーヒー(同22.7%減)が低迷、コメ(同18.2%減)もマイナスに転じるなど総じて減少した。

輸出を資本別に見ると、地場企業が同6.7%減(前月:同17.8%増)と大きく低下した一方、全体の7割を占める外資系企業が同4.7%増(前月:同5.0%増)と底堅く推移した。

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マレーシアの19年1月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比1.0%減(前月:同2.8%増)と低下した。輸出の基調は昨年から主力の電気・電子製品と鉱物性燃料を中心に増加傾向を維持してきたが、伸び率はベース効果の剥落やパーム油の出荷減少が続いて鈍化傾向にあり、1月は2016年10月以来のマイナスとなった。なお、米中貿易戦争による貿易転換効果が見込まれる電気・電子製品と化学製品はそれぞれ増加傾向を維持した。一方、輸入額が前年同月比3.0%減(前月:同1.2%減)と低下した結果、貿易収支は28.0億ドルの黒字と、前月から2.4億ドル黒字が拡大した(図表7)。

輸出を品目別に見ると、全体の約4割を占める機械・輸送用機器は同2.1%増(前月:同11.2%増)と、主力の電気・電子製品(同3.9%増)を中心に鈍化した(図表8)。また鉱物性燃料は同4.6%減(前月:同5.5%減)と低迷した。天然ガス(同32.1%増)が増加したものの、石油製品(同32.7%減)と原油(同5.0%減)がそれぞれ減少した。このほか、化学製品(同3.1%増)が増加を続ける一方で、動植物性油脂(同22.4%減)が引き続き大幅マイナスとなった。

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インドネシアの19年1月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比4.7%減(前月:同3.6%減)と低下した。輸出は主力のパーム油とゴム製品が落ち込むなかでも自動車・同部品を支えに堅調に拡大してきたが、昨年後半からは鉱産物や機械類が振るわず、3ヵ月連続のマイナスとなった。また輸入額が前年同月比1.8%減(前月:同1.7%増)と減少した結果、貿易収支は11.6億ドルの赤字となり、前月から1.3億ドル赤字が拡大した(図表9)。

輸出を品目別に見ると、全体の9割を占める非石油ガスが同4.5%減(前月:同5.8%減)と低迷したほか、石油ガスも同6.7%減(前月:同16.7%増)と急減した(図表10)。非石油ガスの内訳をみると、まず輸出全体の7割を占める製造品が同3.9%減(前月:同1.7%減)と低迷した。製造品のうち、鉄・鉄鋼(同31.2%増)や自動車・同部品(同14.4%増)が増加した一方、電気機械(同10.3%減)や機械類(同8.9%減)、動植物性油脂(同9.6%減)、ゴム製品(同11.1%減)が減少した。鉱業品も同6.2%減(前月:同20.6%減)と、石炭価格の下落を受けて低迷したが、農産品については同10.1%増(前月:同7.5%増)と3カ月連続で上昇した。

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シンガポールの19年1月の輸出額(石油と再輸出除く、ドル建て、通関ベース)は前年同月比12.4%減(前月:同10.1%減)と低下した。輸出の伸び率は医薬品こそ増加傾向を維持しているものの、主力の電子製品に続いて石油化学製品が低迷し、2カ月連続の二桁減となった。なお、総輸出額は前年同月比1.5%減(前月:同4.2%減)、総輸入額は同5.2%増(前月:同4.3%増)となり、それぞれ上昇した。結果として、貿易収支は22.3億ドルの黒字となり、前月から15.5億ドル黒字が拡大した(図表11)。

輸出(石油と再輸出除く)を品目別に見ると、まず全体の約3割を占める電子製品は同18.0%減(前月:同12.8%減)と更に低下し、2ヵ月連続のマイナスとなった(図表12)。電子製品の内訳を見ると、主力のIC(同9.2%減)が急減したほか、PC(同36.0%減)とPC部品(同16.3%減)、ダイオード・トランジスタ(同29.6%減)が低迷した。一方、電子製品と並び全体の約3割を占める化学は同3.1%減(前月:同12.0%減)とマイナス幅が縮小した。化学製品の内訳を見ると、石油化学製品が同14.1%減(前月:同5.2%減)と一段と低下したものの、医薬品が同12.5%増(前月:同28.0%増)とプラスに転じた。

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フィリピンの19年1月の輸出額(ドル建て、通関ベース)は前年同月比1.7%減と、前月(同12.3%減)からマイナス幅が縮小した。輸出の伸び率は主力の電子製品を中心に昨年後半から増加傾向が続いたものの、直近は3ヵ月連続でマイナス圏で推移している。また輸入額は前年同月比5.8%増(前月:同9.4%減)と上昇した。結果として、貿易収支は37.6億ドルの赤字となり、前月から横ばいとなった(図表13)。

輸出シェア上位10品目を見ると、まず輸出全体の5割強を占める電子製品は同1.7%増(前月:同15.2%減)と上昇した(図表14)。電子製品の内訳を見ると、主力の半導体デバイス(同0.9%増)が4ヵ月ぶりのプラスに転じたほか、電子データ処理機(同3.8%増)も緩やかに拡大した。その他9品目は総じて減少した品目が多かった。バナナ(同127.8%増)と精錬銅(同61.2%増)、イグニッション・ワイヤーセット(同54.5%増)、化学(同5.4%増)が増加する一方、電子機器・同部品(同37.9%減)と金属部品(同35.8%増)、金(同33.3%増)、機械・輸送用機器(同24.2%減)、その他製造品(同15.3%減)が減少した。

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斉藤誠(さいとう まこと)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 准主任研究員

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