サウジアラビアの前例のない大幅な原油の減産は、サウジにとって諸刃の剣のように思われる。減産によって原油価格が上がることは良いが、今まで保っていた北米やアジアでのシェアを奪われることになるだろう。

特にサウジアラビアにとって脅威なのは、エクソンモービル(Exxon Mobil)(NYSE:XOM) やシェブロン(Chevron)(NYSE:CVX)などの「スーパーメジャー」と呼ばれる米石油大手企業は、今後数年でのシェールオイル生産能力を上げ、アジアへの輸出と原油価格に影響を与えうるということだ。

スーパーメジャーが、これまでのOPECの立場に

エネルギーヘッジファンドであるアゲイン・キャピタル社のファンドマネージャーのJohn Kilduff氏は、「サウジアラビアの(原油市場での)役割は不安定になる」と同時に「米スーパーメジャーが、OPECのような立場になる良い機会である」と述べる。

最近ではエクソンモービルとシェブロンが、パーミアン盆地での生産を日量100万バレル増加させる計画を発表し、注目が集まった。エクソンモービルは、パーミアン盆地では、原油価格が安い時でも2桁のリターンを見込めるという。例えば、1バレル35ドルである時、パーミアンでは、平均利益率は10%が見込めるという。

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(画像=Investing.com)

もしこの計算が正しければ、去年の暴落でWTI原油が約43ドルとなった時でも、エクソンモービルはパーミアン盆地から利益をあげられる計算になる。一方で、この時期のサウジアラビアの国営石油会社であるサウジ・アラムコや中東の石油企業はこの原油価格の下落に苦しんでいた。

多量のシェールオイルを算出しても利益にできる

11日のブルームバーグの報道で、このエクソン・モービルの主張は正しいことが分かる。石油大企業は2014年の原油大暴落を教訓に、長期に渡り低水準な原油価格でも生き残れる術を学んでいる。石油大企業は、コストを安定させるために互いに技術共有をし、現在では1バレル100ドルの原油価格水準のように利益を上げることに成功しているという。そして現在では、遠い国で原油開発を行うのではなく、米シェール主要産出地域での開発に注力しているという。

原油や天然ガスの大手8社は、昨年の投資・支出は1180億ドルであり、これは2013年の2150億ドルより約45%低い計算になる。この減少はコスト効率の改善がされているという要因も考えられる。

ブルームバーグの報道でも、支出が少ないことは、原油開発や利益に対して弱気であるというわけではないと指摘されている。

ニューヨークのEnergy Management InstituteのDominick Chirichella氏は、先週末に米国の石油掘削リグ稼働数 が2014年10月の水準から約48%減少している一方で、米国の石油産出量は36%増加していると述べた。米国エネルギー協会(EIA)によると、原油生産量は日量平均1220万バレルとなっており、2020年末には1300万バレルに達すると予想している。

2025年までに、米国の原油生産量は約日量2400万バレルになるという。これはサウジアラビアとロシアの生産量をあわせた量より多い計算だ。

生産量増加の要因の一部としては、掘削効率の上昇によるものがある。掘削効率はシェールオイル産業において今後の要点となり、今まで記録的な水準の生産に結びつくことは語られてこなかったものである。

また、大手石油企業が買収によって巨大化し、業界を独占する可能性ということも今まであまり語られてこなかったことである。

Kilduff氏は以下のように語る。

「シェールオイルにおいて最も興味深い側面は、各石油企業は原油市場を動かすために協調体制になりつつあることだ。もし、石油大企業が買収をすれば、シェールオイルを支配し、米国の原油価格を操作することさえできるだろう」

サウジアラビアは、シェアを奪われる驚異に直面する

米国原油はアジアのマーケットシェアを奪いつつあり、サウジの驚異となっっている。サウジはOPECプラスの25の加盟国による減産をリードし、今年約25%の上昇を促している。

サウジにとって直近の驚異となるのは、 S&Pグローバル・プラッツが2月上旬に、米国産原油のアジアへの輸出は3月から4月にかけて増加すると報じたことである。この時期は運賃が下がり、米国の輸出は他のアジアや中東の産油国に比べて優位性があるからである。

米国産原油の輸出は最近、日量360万バレルという記録的な水準に達している。サウジは米国のアジアへの輸出を止めることはできそうもなく、また北米での需要も成長している。

米国の原油輸出の増加

もちろん、米国の原油輸出が拡大し続けるためには、運輸面でのボトルネックを取り払うだけに十分なパイプラインが必要である。これらはパーミアン盆地やバッケン盆地で数年来シェールオイルの生産で障害になってきた。

しかし、この障害はクリアできるような見通しがある。パーミアン盆地でのパイプライン能力は、2021年までに3倍になり日量900万バレルになると想定されている。

Kilduffは次のように結論付けている。

「シェールオイルをコントロールするのはスーパーメジャーであり、アジアの軽質原油価格を決めることが考えられる。スーパーメジャーの別の名は、OPECとなることだろう」

(提供:Investing.comより)

著者:バラーニ・クリシュナン