英国の「合意なき離脱」が否決されたことから、投資家は安心しただろう。過去2日間で、テリーザ・メイ英首相がとりまとめたブレグジット協定案と「合意なき離脱」が否決された。しかし、メイ首相は議会の意思を尊重して敗北を受け入れるのではなく、ブレグジット協定案が可決しない限りは「合意なき離脱」となることを述べている。今後、メイ首相はリスボン条約50条の延期を要請しなくてはならない。メイ首相は2ヵ月の延期を要請すると報じられている。

13日、ポンド/米ドルは2%以上上昇、ユーロ/ポンドは1年以上で最低の水準まで下落した。中央銀行や投資家は数か月間「合意なき離脱」を懸念してきた。しかし、合意なき離脱は否決され、英国経済が深刻で急速な不景気に見舞われることはなくなった。その代わり、英国がEUを去り他国との好条件な通商協定を締結するまでは、緩やかな景気減退となると考えられる。当分はポンドは、英国が深刻な不景気に見舞われることがなくなった安心感を反映するとみられる。

しかし、ポンドにとってのもう一つのハードルは、リスボン条約50条の延期期間である。欧州委員会が1年以上の延期に寛容であることは過去の発言から分かるが、これまで延期を拒否してきたメイ首相はより短い期間を選ぶ可能性がある。いつになるかは分からないが、延期の要請は確実であり、EUがそれを認めることもほぼ確実といってよいだろう。「合意なき離脱」を完全に排除するにはブレグジット協定案が可決されなくてはならないが、少なくとも3月29日の期限には間に合わないだろう。

議会の承認を得るためには何年もかかるので2か月の延期となる可能性は低いが、メイ首相がそのように要請するのであれば、断る理由のないEUは承認するだろう。その場合ポンド/米ドルは1.35まで上昇するだろう。全てのマーケットはブレグジットの議会投票の恩恵を授かる。ポンドの上昇にともなうハイベータ通貨の値動きを受けて、米国株式市場は急騰した。ユーロ/米ドルは1.13を超え、米ドル/カナダドルは1.33を下回った。米ドル/スイスフランも大きく値動きしている。「合意なき離脱」はユーロ圏に悪い影響を及ぼすので、13日の投票の後外国為替市場ではショートカバーの動きがみられた。ユーロ圏のファンダメンタルズはよくないが、今月初頭の工業生産の改善やリスク選好の向上、ドイツ国債利回りの底入れがユーロのさらなる上昇を促している。最低でも、 ユーロ/米ドルは1.1365/1.14となることが考えられる。

米ドルは、13日の軟調なインフレ統計の後、下落する可能性がある。消費者物価指数や生産者物価指数は先月よりも上昇しているものの、原油価格の高騰によるポジティブな影響は限定的であった。14日の新規失業保険申請件数や新築住宅販売戸数はドルへ大きな影響を与えるとみられていない。その代わり、米ドル/日本円では、14日夜の日本銀行の政策決定会合が焦点となるだろう。金融政策の変更は予想されていないが、景気は減退し、インフレ圧力は弱まっている。日銀は経済の見通しは下方修正され、円は下落するだろう。(提供:Investing.comより)

著者: キャシー リアン