「周囲の方々は具体的にどんな生前贈与をしているか」「どれくらいの割合の人が実際に相続対策をしているのか」などのデータを知ることで、今後の相続対策を考えてみませんか。今までとは違った視点から相続対策と向き合っていきましょう。
資産が多い層ほど相続対策をしている割合は高くなる
相続対策には期間を要することが多い傾向のため、なるべく早く着手することが求められます。実際に、どれくらいの人が意識したり、着手していたりするのかについて確認していきましょう。本稿では、信託銀行が加盟する金融団体「一般社団法人 信託協会」が行った調査(※)に基づき、リアルな相続対策を浮き彫りにしていきます。
この調査の回答者数は3,400名以上です。属性は「既婚者で50歳以上、子供あり、1,000万円以上の金融資産がある方」に絞って行われました。回答者の年齢は50~70歳代と、相続を真剣に考えている層に絞った調査といえます。
※出典:一般社団法人 信託協会「相続・贈与・投資に関する意識調査(2015年7月)」
まず、相続対策には法律への対応が必須ですが、皆さんはどれくらいアンテナを張っているでしょうか。2015年に相続税率や基礎控除額などが改正となりましたが、そのことを知っていた人は全体のうち84%でした。これは、一定の資産を持つ方々の相続税への関心の高さを示す結果です。一方で、相続対策に着手している人の割合はわずか16.2%にとどまっています。対策をしている人の内訳を見ると、資産が多い層ほど対策に着手していることがわかります。
世帯貯蓄・世帯投資残高別の相続対策をしている人の割合
・1,000万~2,000万円未満:9.2%
・2,000万~3,000万円未満:12.1%
・3,000万~5,000万円未満:16.1%
・資産5,000万円以上:30.9%
相続対策で行われているのは、贈与・保険活用・不動産購入
相続対策に着手している方々は、どんなことをしているのでしょうか?最も多い回答は「定期的・計画的な生前贈与」で69.2%を占めます。やはり、相続税が発生してからの対策には限界があります。そのことを熟知している結果といえるでしょう。他の相続対策としては以下のような項目が挙げられています。
・生命保険の活用:41.3%
・遺言書の作成:25.2%
・納税資金の確保:23.3%
・不動産の購入:14.9%
相続トラブルを防ぐのに有効な遺言書作成が、4人に1人にとどまっているのは気になる点です。また、相続評価額の圧縮に有効といわれる不動産購入は 、約7人に1人の割合で採用されています。
みんなが選択している生前贈与の具体的な中身とは?
前項では、最も多い相続対策として「計画的な生前贈与」が挙げられました。さらに、この生前贈与の中身を深掘りしてみましょう。同調査で「生前贈与を行ったことがある」と答えた方の贈与資金の用途を見てみると、次のような結果となっています。
・家・車等の高額品の購入支援:44.4%
・入学・受験・その他の教育資金:24.6%
・生活費等の支援:20.6%
・出産や結婚資金:19.7%
マイホームの購入資金時の直系尊属からの援助は、非課税となる額が大きいため積極的に活用したい贈与対策です。その中身は、消費税率10%適用時で下記のように非課税限度額が設定されています。
・契約の締結日: 2019年 4月1日から2020年3月31日 最大3,000万円
・契約の締結日: 2020年 4月1日から2021年3月31日 最大1,500万円
・契約の締結日: 2021年 4月1日から2021年12月31日 最大1,200万円
※省エネ等基準、耐震等級、高齢者等配慮対策等級に適合する住宅用家屋の場合
また、車の購入資金の援助は原則、年110万円までの暦年贈与の利用になるでしょう。
生前贈与の対策のうち、教育資金の生前贈与については、祖父母が子・孫ごとに1,500万円まで非課税で援助できる制度です。(学校以外に払う金銭の限度額は500万円まで)ただし、2019年4月からは要件が厳しくなり、贈与を受ける方の年間所得が1,000万円以下の場合のみ非課税になるので要注意です。
先ほど申し上げた通り、保有している資産が多くなるほど相続対策をしている割合は高くなります。一方で、資産5,000万円以上の層でも約7割の方は相続対策をしていません。手間をなるべくかけずに……ということを重視するのであれば、着手しやすいのは、毎年最大110万円を積み上げる暦年贈与でしょう。ただし、後の税務調査時に「贈る側」と「受け取る側」双方の合意があった証拠となる贈与契約書の作成は必須です。くわしく知りたいはこちらの記事をご参照ください。
相続対策は早くはじめるほど節税効果が高まります。今のうちから計画的に相続対策を考えていきましょう。(提供:Wealth Lounge)
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