よく被相続人の生前に、財産を子や孫の名義に変更しているケースが見受けられます。しかし単に名義だけを変更した預金は全て容赦なく、税務調査で指摘されますので注意しましょう。

相続,生前贈与
(画像=PIXTA)

過去の国税不服審判書の税務関係の訴訟の裁決でも、生前贈与が相続財産に含まれると認定されたケースが多く紹介されています。今日はその公表裁決事例要旨から一部を抜粋します。

以下のケースからも分かるように、税務署は財産の出所の実態を詳細に突き詰めてきます。多額の生前贈与は、税務調査が入ると間違いなく指摘されると考えておきましょう。生前贈与は相続対策にはならないのです。

①他人名義となっている定期貯金の真実の所有者は被相続人であると認定した事例

裁決事例集 No.41 - 271頁

請求人は、本件定期貯金は被相続人の孫のものであり、その資金源は孫の母が毎月1~2万円の積立貯金をしてその満期時の昭和58年4月11日に本件定期貯金を設定したものである旨主張するが、本件定期貯金は同日以前からあった定期貯金が継続されているもので、また、主張する積立金額では孫の年齢からして、到底本件定期貯金の基となった定期貯金の額に達しないので、その主張は失当といわざるを得ない。

[1]被相続人名義の他の定期貯金と本件定期貯金の届出住所、届出印鑑及び申込書の筆跡が同一であること、[2]本件定期貯金の利息と被相続人名義の定期貯金の利息とを合わせて別段預金とした上で現金にしているが、これに使用された印鑑がすべて同一であること、[3]被相続人には、本件定期貯金の基となった定期貯金と被相続人名義の定期貯金を設定した頃、土地譲渡代金が入金していたこと等からすると、本件定期貯金の資金源は譲渡代金と認められ、被相続人が非課税貯蓄に着目して孫の名義を使用して、本件定期貯金を設定したものと推認することができ、原処分は相当である。

②被相続人の妻名義及び子名義の預貯金及び有価証券がその管理状況及び原資等から相続財産であると認定した事例

▼ 裁決事例集 No.74 - 255頁

請求人らは、本件預貯金等のうち、妻名義のものは、妻が被相続人との婚姻前から保有していた預貯金及び妻固有の収入並びに生活費を節約して貯めたヘソクリを原資として形成されたものである、子名義のものは、子が両親との同居期間中に子固有の収入から生活費として家計に入れていた金員等を原資として形成されたものである、また、一部のものについては被相続人から生前に贈与を受けたものである旨主張する。

しかしながら、本件預貯金等のうち妻及び子名義の郵便貯金の一部については、「郵便貯金メモ」等により被相続人が管理しており、被相続人がその処分権を有していたと認められること、本件預貯金等のうち以外の預貯金等についても原資は被相続人が出捐したものであり、その管理も被相続人により行われていたと認められること、妻の固有収入は本件預貯金等以外の預金に化体しており、本件預貯金等の原資たり得ないこと、子が固有収入を生活費として家計に入れていた事実を認めるに足る客観的証拠はないこと、生前に贈与を受けたと請求人らが主張する預貯金等について妻は贈与を受けたことはない旨答述している上、贈与されたと主張する預貯金等の管理運用は被相続人が行っており、贈与の事実は認められないこと等から判断すると本件預貯金等は相続財産であると認めるのが相当であり、請求人らの主張は採用できない。

なお、妻名義の普通預金1口については、原資が不明である上、口座開設時の印鑑届の筆跡も妻であり相続財産とは認められないから、原処分はその一部を取り消すべきである

(提供:チェスターNEWS