特集『金融 大サバイバル――銀行が、銀行員が生き残るために』の最終回は、浪川攻氏の著書『銀行員は生き残れるか――40万人を待ち受ける運命』(悟空出版)の第1章の一部をお届けする。筆者は(執筆時点から)5年後、2023年の日本の姿をここに描き出している。「メガバンク 5年後の日本」と題したこの章はしかし、決してメガバンクの将来だけを描いたものではない。また、あくまでシミュレーションではあるが、筆者の予想に反して、既にそれを実現している金融機関もあるという。近未来の金融機関の姿、日本の「お金」がどう変わるのかをイメ―ジするためにも、著者、出版社の承諾を得て一部を紹介する。

目次

  1. 日本の現金払いが大人気になる!?
  2. 復権する銀行の有人窓口
  3. 重用されるベテラン職員
  4. 大きく変わった営業店の風景

日本の現金払いが大人気になる!?

特集「金融 大サバイバル」
(画像=特集「金融 大サバイバル」)

2023年末――。東京五輪・パラリンピックが大成功のうちに終わって、3年が経過していた。世界的なスポーツイベントがもたらした高揚感はとうに薄れていたが、相変わらず、海外の日本人気は衰えを見せず、多くの外国人観光客が日本全国各地の観光スポットにあふれていた。

訪日旅行客のうち、アジア系の人たちの購買意欲は引き続き旺盛であり、個人消費の趨 すう勢 せいはインバウンド需要を抜きでは語れないほどになっている。これは政府をはじめ、有力シンクタンクが想定したシナリオ通りの状況だった。だが、ただひとつ、大方の予想を覆す事態も起きていた。それは誰も予想できなかったことである。