「FinTech(フィンテック)」という言葉が盛んにニュースで取り上げられ、金融業界にもIT、デジタル化の推進による効率化の波が押し寄せた。時を同じくしてメガバンクが大規模なリストラを発表した。だが浪川氏は「銀行のライバルはIFA。フィンテックで銀行はもっと効率化して本来の業務、やるべきことをやるべき」といい、また銀行が現場の行員に課すノルマや、転勤・異動を繰り返さす人事制度にも疑問を呈する。(取材、構成・濱田 優 ZUU online編集長/写真・森口新太郎)
※ 取材は3月28日に行われました。
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「フィデューシャリー・デューティー」も「顧客本位の業務運営」も……
――ここ数年、「AIが人間の仕事を奪う」といったことと同じように「デジタル化、フィンテックで銀行が生き残れなくなる」というような主張を耳にした気がしますが、浪川さんは「そういうことではない」と指摘されています。
たしかにデジタル化やフィンテックが進み、銀行が置かれた環境が従来とまったく異なる新しいものになり、「銀行が生きられないんじゃないか」という論調がありました。それもなくはないけれど、ポイントはそこじゃなくて、銀行がやるべきことをやってこなかったことが理由です。
昨年から気を付けないといけないと思っていることがあります。それは、混沌とした時代になると、難しい言葉だけが飛び交うということ。閉塞的な状況の中で事態を打開するにはまったく新しい概念がなくちゃいけないとなりがち。
やるべきこと、掲げるべき目標は、もっとシンプルで、原則に忠実であるべきです。聞きなれない言葉が出てきても、それにごまかされちゃいけない。だから同じことを言うにしても、誰もが分かるやさしい表現であるべきなんですよ。
その一例が「フィデューシャリー・デューティー」でしょうね。受託者責任とか、信任を受けた人が果たすべき責任・義務のことですが、これを掲げたのは金融庁で、たしかに言いたいことは分かるし、重要な意味を持つんですが、これを全国の銀行員がハラオチして分かるようになるまでにかなり時間がかかったと思うんですよ。いやまだ分かっていない銀行員もいるんじゃないでしょうか。