遺産の全部または一部を売却し、その代金を各相続人の相続分に応じて配分する方法を換価分割といいます。遺産のほとんどが不動産である等、個々の財産の価値に差がある場合には、現物分割ではうまく割り振ることができません。このようなときに有効な方法となります。

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(画像=(写真=Andrey_Popov/Shutterstock.com))

代償分割とは、特定の相続人が多く遺産を取得し、多く取得した分に見合った金銭を他の相続人に支払う遺産分割の方法です。遺産が店舗や作業場兼自宅であるような場合に特定の相続人に事業用資産を集中させるために利用します。

具体的にご説明します。

例えば時価6000万円の不動産をA、B、Cの3人で相続する場合(法定相続分は1/3づつとする)

・代償分割によれば、Aが不動産を取得し、B、Cに対して2,000万円づつの金銭を支払います。
・換価分割によれば不動産を売却後、A、B、Cが2,000万円づつの金銭を受け取ることとなります。

さてここで税金の問題ですが、

1 不動産を売却する予定がない場合 → 代償分割が有利
2 不動産を売却する予定がある場合 → 換価分割が有利

ということになります。

1 不動産を売却する予定がない場合には、代償分割が有利です。

通常、不動産の相続における評価額が時価(売却する場合の金額)より低いため、代償分割の方が相続税が少なくなります。

代償分割を行った場合の課税価格は、代償財産交付を受けたとき(=代償された側)は、「(相続または遺贈により取得した現物の財産の価額)+(交付を受けた代償財産の価額)」となり、代償財産交付をしたとき(=代償した側)は、「(相続または遺贈により取得した現物の財産の価額)-(交付をした代償財産の価額)」となります。

しかし代償財産価額(=代償債務)の評価は、原則は実際の支払い金額での評価ですが、代償分割の対象となった資産の時価と相続評価額との比例で評価することも可能です。

どちらか有利な方を選ぶことが可能ですので、ケースによっては後者の方法を選択することで、相続の税負担額が軽減される場合があります。

2 不動産を売却する予定がある場合には、換価分割が有利です。

これは相続税額の取得費加算を相続人全員で利用できるためです。代償分割後に売却した場合には、取得した者が負担した税額分しか相続税額の取得費加算の適用を受けることができません。

しかし、換価分割によれば、相続人全員で売却したことになるため、取得費に加算できる税額を無駄にすることはありません。

ただし、申告期限から3年以内に売却することが要件となっていますので注意が必要です。

(提供:チェスターNEWS