投信全体からの資金流出が鈍化

投信動向
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2019年3月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く)の推計資金流出入をみると、外国株式、外国債券、外国REITから引き続き資金流出があった【図表1】。ただ、外国株式こそ2月と同規模の1,000億円程度の資金流出があったが、外国債券と外国REITについては2月の1,100億円、500億円から650億円、270億円へと資金流出が縮小した。また、国内株式は100億円を満たなかったものの、資金流入に転じた。加えてバランス型、国内REIT、国内債券は2月から引き続き資金流入があり、3資産とも流入金額が2月と比べて増加した。特に国内REITについては300億円を超える資金流入があり、2017年3月以来の大規模な資金流入となった。

投信全体でみると、外国株式の資金流出が引き続き大きかったこともあり3月は700億円の資金流出であったが、2月の2,700億円から大幅に鈍化した。2月に低迷していた投信販売が3月はやや明るい兆しがみられたといえよう。

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国内REITの毎月分配型が復調

3月に人気を集めたファンドをみると、上位10ファンド中、6ファンドが毎月分配型(色太字)であった【図表2】。そのうち2ファンド(緑太字)は国内REITであった。3月は国内REIT全体にまとまった資金が久々に入っていたが、個別でみても国内REIT、特に国内REITの毎月分配型ファンドが復調してきたこが示唆された。

3月は多くの国内REITファンドの収益率が3%を超えるなど、国内REITファンドは総じて好調であった。世界景気の減速懸念が意識される中、国内REITは景気の影響を比較的受けにくいこと、国内外の長期金利が低下したこと、公示地価の上昇などが好感され、国内REIT価格が上昇した。そのような中で国内REITに注目する投資家が多かったようだ。

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外国REITが見直される動きも

外国REITは、3月も純資産残高が大きい毎月分配型ファンドを中心に資金流出が続いていた。外国REITも2月から引き続きパフォーマンスが好調なファンドが多かっただけに、投資家の一部が利益確定売りに動いたのかもしれない。

ただ、3月は2月と比べて外国REITからの資金流出は鈍化し、個別でみると100億円以上集めた外国REITの毎月分配型ファンド(青太字)もあった。つまり、単純に売却一辺倒でなかったといえるだろう。実際にこれまで外国REITの重しになっていた米利上げが3月に年内見送られる公算が大きくなっただけに、外国REITを見直す投資家もいたと思われる。

インカム系資産に資金がややシフト

また、外国REITと同様に外国債券も資金流出が2月と比べて3月は鈍化した。ハイ・イールド債券ファンドなどからは引き続き資金流出が続いていたが、先進国債券やヘッジ付先進国債券のSMA専用ファンドには資金流入があった。さらに、3月は国内債券に200億円超の資金流入があり、久々にまとまった資金が入っていた。

内外REITや内外債券の資金動向から、足元の景気や金利の情勢をにらんで2月と比べて3月は資金をインカム系の資産にややシフトする動きがみられた。

株式ファンドは敬遠、整理する動き

その一方で内外株式は引き続き販売が低迷している。国内株式は3月に資金流入に転じていたが、国内株式の引き合いは引き続き弱かったと思われる。実際に資金流入していたのはSMA専用ファンドとタイミング投資にも用いられるインデックス・ファンドであり、アクティブ・ファンドからは資金が流出していた【図表3】。

国内株式のアクティブ・ファンドの資金動向をみると、国内株式が急上昇した2018年9月を除くと同年11月まではアクティブ・ファンドへ資金流入が続いていた。それが、株価が急落した12月以降は資金流入が止まっていることが分かる。さらに2月から大型株のアクティブ・ファンドが資金流出に転じ、3月は中小型株のアクティブ・ファンドも資金流出に転じ、アクティブ・ファンド全体から300億円(SMA、DC専用は除外)に迫る資金流出があった。

さらに、インデックス・ファンドには150億円(SMA、DC専用は除外)の資金流入があったものの、インデックス・ファンドの日次の資金動向からも3月は積極的に国内株式に投資する姿勢はみられなかった。日経平均株価が21,000円前後まで下落した翌営業日の26日、29日に150億円、80億円の資金流入と資金流入が集中していたためである。つまり、この2日を除くとインデックス・ファンドも資金流出であった。実際に日経平均株価が21,500円を超えた翌営業日などでは、金額こそ小さかったが資金流出傾向も顕著であった。

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テーマ株ファンド、新興国株ファンドは引き続き売却

1,000億円を超える資金流出があった外国株式では、2月から引き続き3月も2018年前半以前に人気だったハイテク系のテーマ株ファンドからの資金流出が大きかった。特に1カ月間で100億円以上の資金流出があったテーマ株ファンドが2月は2ファンドだったが3月は5ファンドに増加しており、資金流出が加速した。

また、テーマ株ファンドに加えて新興国株式ファンドからの資金流出も続いた【図表4】。3月は(【図表4】紺棒のその他単一地域に含まれる)ベトナム株式ファンドが資金を集めたものの、地域分散型ファンド(青棒)やインド株式ファンド(黄棒)からの大規模な資金流出が続いている。一方、3月は米中通商協議に対する進展期待や中国の景気刺激策に対する期待があり、堅調なパフォーマンスの新興国株式ファンドが多かった。インドでは現政権に対する期待感が高まったためインド株式ファンドは特に高パフォーマンスであった【図表5】。新興国株ファンドについては足元の上昇が売却を促進させた面があるかもしれない。

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3月は景気減速を意識か

株式ファンドの販売が低迷している背景には、年初から世界的に株価が持ち直したため投資家が利益確定売りに動きやすい状況であることに加えて、景気の動向も影響していると考えている。つまり、景気減速を意識する投資家が多いため、株式ファンドを敬遠する、もしくは保有している株式ファンドを整理する動きがみられたと思われる。3月に最も人気を集めたのが「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」と景気との連動性が低いと思われる高配当の公益株式ファンドであったこととも整合的である【図表2】。

総じてみると、3月は投信全体で資金流出が2月から鈍化し、投信販売にやや復調の兆しが見えたが、景気動向を意識して株式からインカム系資産へと投資先を選別する動きもあったようだ。

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前山裕亮(まえやまゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員

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