【ケーススタディ3】
■ 事例
甲社株式は創業者で代表取締役を務めるAが議決権の70%を保有しています。残りの30%は甲と親族関係にないBが所有しています。
Aには推定相続人として配偶者のCと長男のDがいます。Aは将来的にはBに甲社の事業を引き継がせたいと考えています。
どうすればいいでしょうか?
■ 対策
後継予定者に株式が集中されないまま現経営者が死亡した場合には、現経営者の所有株式が事業に関係のない複数の相続人に分散してしまい、会社経営に混乱を来たすことになります。
このような事態を回避するためには、事前に後継予定者に株式を移動させておくことが望ましいです。この場合、甲社に相続人等に対する株式の売渡請求の制度を導入することが考えられます。
この制度は、相続等の一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対し、定款に定めることによって、会社が強制的に当該株式を取得することができる制度です。
本設例では、この制度導入後にAが死亡した場合には、C及びDは一般承継により株主になっているため、当該売渡請求に係る決議について議決権を行使することができません。
そしてBが株主総会において株式売渡請求に賛同するとCとDはAから相続した株式を甲社に売り渡さざるを得ず、結果としてBがオーナー株主となることができます。
ただし甲社が自社株式の売渡請求権を行使して株式を取得する場合には、会社法上、分配可能利益を超えて取得することはできないため、甲社に分配可能額に余裕がない場合には、生命保険を活用することで、自社株の取得財源を確保しておく必要があります。
なおC及びDについては、申告書の提出期限の翌日以降3年を経過する日までの間に、その相続税に係る課税価格の計算の基礎に算入されたA社株式を譲渡した場合にはみなし配当課税は行われず、譲渡所得として課税されます。
また当該譲渡所得の計算に当たっては、相続税額のうち一定の金額を当該譲渡資産の取得費に加算することができます。
(提供:チェスターNEWS)