(本記事は、酒井レオ氏の著書『全米No.1バンカーが教える 世界最新メソッドでお金に強い子どもに育てる方法』=アスコム、2019年3月16日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
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「なぜ?」という問いを親子でぶつけあう
「なぜ、学校へ行くの?」
「なぜ、学校帰りに寄り道をしてはいけないの?」
「なぜ、男の子は赤いランドセルじゃいけないの?」
大人にとっては当たり前のことも、子どもは理不尽に感じたり、純粋に疑問として「なぜ?」と思うことがたくさんあります。
加えて、子どもは好奇心旺盛な生き物。「なぜ」という問いには、とことん付き合ってあげましょう。
えっ、忙しいときに限って、「なぜなぜ」としつこくてうんざりですって?待ってください。このくらいは序の口です。
ユダヤの教育は、「なぜ」がベースです。自分たちの大切な教典や副読本「タルムード(Talmud)」に書かれていることすら、これは本当か?と疑ってかかるのがユダヤ人です。そして、ひとたび「なぜ」と浮かんだ疑問は、決してそのままにはしません。自分なりに考えて、家族や知人にも議論を求めます。
ユダヤ人は小さな頃から「なぜ」のあふれる環境に身を置いているので、疑問について思考を深めるのは普通のこと。その結果、誰もが自分なりの考えを持っているため、議論も白熱することになります。わざわざ学校でディベートを学ぶ必要などありません。
教育熱心なご家庭では、学校教育にもアメリカ式のディベートを取り入れるべきだと考えるかもしれませんが、ユダヤの家庭に習えば、それは家族の中でも十分行えます。なんでもかんでも学校任せにせず、自分たちでできることはどんどん実践していきましょう。
受け身になって子どもの「なぜ」を待つのではなく、親から「なぜ」のタネを蒔くことも必要です。
「なぜ、学校の通学路は決まっているんだろうね」
「消費税が上がるっていうけど、本当に必要だと思う?」
「どうして日本には起業家が少ないんだろう」
日常のふとした疑問から社会的なことまで、子どもにはまだわからないだろうなんていう決めつけはなしで、子どもの興味がない分野の話題も含めて、たくさん考える機会を与えましょう。
テレビから流れてくるニュースを見たまま聞いたまま受け入れていたのでは、世の中の真実を知ることはできませんし、新たな発想も浮かびません。携帯電話の進化だって、「なぜ、海外では通話できないの?」というところから始まり、今ではインターネット環境のあるところならば世界中どこにいても無料通話ができるところまできました。どんな発明もビジネスも、スタートには「なぜ」という疑問が必ずあります。
小さな頃から、なんでも「なぜ?」の視点を持たせることが、社会を見る目を養いますし、ビジネスチャンスも生むのです。
夕飯時にはビジネスに欠かせないスモールトークのレッスンをする
お金を生み出す力のあるビジネスエリートには、周囲を惹きつける〝愛される力〟が備わっています。言ってみれば、「あの人と話してみたい」と思わせる人間的な魅力です。
そう考えると、いつもネガティブな話題ばかりで、ぐじぐじと文句が多いようでは、多くの人に敬遠されてしまいます。やはり、話題の豊富な人、博識で自分の意見を持っている人、そして、明るくポジティブな人に、人は魅力を感じます。
日本人のビジネスパーソンと接していて、いちばん欠けていると思うのが、知性を感じさせる会話です。本題に入る前の会話をスモールトークと言いますが、日本人はなぜ天気の話があんなに好きなのでしょう? 「ニューヨークは寒いですね」「今日は青空で気持ちがいいですね」。「そうですね」と相槌を打って次の話題を待っていても、そこから会話が広がることがほとんどありません。
「今年は例年になく寒いから、〇〇の売り上げがすごいようですね」などと会話が続けばスモールトークは盛り上がりますが、僕の経験上では、日本人ビジネスパーソンに次の話の展開は期待できないのです。
世界では、今なら「ビットコインはどう思う?」などのスモールトークがスタンダード。世界のトレンドについて、自然と会話が広がります。
ここで思うのは、やはり、日本人は社会への関心が低いのではないか、ということです。経済的にも発展し、周囲を海で囲まれた島国で、いわば守られた環境にあるので、社会的な危機感を持ちにくいのかもしれません。けれど、今後、日本で働く外国人も増えていくでしょうし、グローバル化した社会に適応していくためには、もっと世界を広く見る視点と会話が欠かせません。
直近の朝食や夕食の時間を振り返り、親子でどんな会話をしたか思い出してみてください。学校で起きた出来事に耳を傾ける時間ももちろん必要ですが、社会に興味を向けるような会話がひとつでもあったでしょうか?
親子で一緒に食卓に向かう時間は、顔を見ながらじっくり会話のできるとっておきの時間です。ここで、身につけた教養がいずれスモールトークで役立つのです。
スポーツの世界大会などが行われていれば、「なぜ、この国はこのスポーツが強いんだろう?」と話題を提供することで、ある国についての社会的背景などを知るきっかけができます。「ドイツは経済的には日本よりも下だけど、スポーツは強いね」などと親が会話を少しリードして、話の展開や考える方向性を示してあげてもいいでしょう。
オリンピックの時期なら、「日本は金メダル5個!」なんてニュースが騒いでいるところに、「なんで、日本は5個しかとれなかったんだろうね」と、わざと逆のことを言ってみると、子どもはテレビから流れるニュースをそのまま受け入れるのではなく、異なる物の見方があることを自然と学んでいくはずです。
勘違いしないでいただきたいのですが、突飛な発想を持てとか、人とは違う意見を持て、という話ではありません。もちろん、自分の意見によって相手を言い負かせることを目的としているわけでもありません。必要なのは、ディベート力ではなく、ディスカッション力です。そこをはき違えないでください。
一家団欒にはモノポリーか人生ゲーム
週末、酒井家の一家団欒に欠かせなかったのが、ボードゲームです。特に熱中したのは、世界中に愛好家を持つ「モノポリー」です。「モノポリー」は、1935年にアメリカで発売されてから、世界100ヶ国40言語で発売されていて、約2億5000万セットも売り上げている王道のボードゲームです。不動産物件の売買をメインに、プレイヤー同士でお金の交渉をしたり、大人も子どもも関係なく、対等な立場で駆け引きできる面白さがあります。
日常生活では何をやっても歯が立たない父と同じ土俵に立ち、せめてゲームの世界では勝ちたいと思って自分なりの戦略を練り、運に味方されたり見放されたりしながら勝負を挑むのは、とてもスリリングでワクワクしました。
それに加え、我が家では母お手製の換金表があって、「モノポリー」で稼いだお金を現実のお金に換金して親バンクに貯めておくことができたり、家を建てるなどゲームの内容に沿ったタスクをクリアできれば、ご褒美リストにあるジュースなどを親バンクの預金の中から買うことができるといった、プラスアルファの要素でも楽しませてもらっていました。
もしかしたら、こういうお楽しみがあったから、僕はお小遣いがなくても不満を持つこともなく過ごせたのかもしれません。
両親からしたら、「モノポリー」はお金教育の一環という意味合いもあったのだろうと今は思います。けれど、僕たち兄弟が飽きずに取り組める仕組みを考え、やらされている感を抱かせなかったのは、自分の親ながらすごいなと感心せざるを得ません。
そして何よりも、平日は仕事で忙しい両親が、週末になると一緒にボードゲームを囲み、その場を離れずずっと一緒にいてくれることもうれしかった。
日本では、「モノポリー」よりも「人生ゲーム」が人気のようです。こちらは運の要素が多分にあるようですが、就いた職業によってお給料が違うこと、お金がなければ負債が増えていくことなど、ルーレットを回しながら楽しくお金に触れることができそうです。
いずれにしても、家族みんなが対等に戦えるのがボードゲームのいいところです。デジタル化が加速している現代だからこそ、昔ながらのボードゲームは新鮮で、いつの時代でも子どもは夢中になって遊ぶはずです。
また、ボードゲームをやると、その人の性格がそのまま表れるのも楽しい要素のひとつです。一攫千金を狙いに行くタイプ、堅実を貫くタイプ、戦略家、楽天家、激昂型……。子どもの性格を理解する上でも役立ちますし、本人としても、自分はこういう人間だということを少しでも早いうちから知っておくことは、決して損にはなりません。
たかがボードゲーム、されどボードゲーム。今度の週末にでも、ぜひ、楽しんでください!
酒井レオ
ニューヨーク生まれ、ニューヨーク育ちのバイリンガル日系アメリカ人。
日本とアメリカ両方の文化に影響を受けて育ち、ワシントン大学卒業後、JPモルガンを経て、コマース銀行(現TD銀行)に入社。その後、バンク・オブ・アメリカに転職し、2007年、史上最年少にして「全米No.1」の営業成績を達成。30代前半の若さにしてヴァイスプレジデントに就任する。
同年、アメリカンドリームに挑戦する人たちを応援したいとの思いから、NPO法人Pursue Your Dream Foundation(PYD)を設立し、銀行業界からグローバルビジネス教育の世界へ転身する。金融、IT、メーカーなどあらゆる業界を対象に、社長・役員のためのエグゼクティブコーチングから、マネージメント研修、新人研修まで幅広く指導を行っている。
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