本記事は、節約オタクふゆこ氏の著書『お金はこれで増やせます 失敗したくない人のための投資の教科書』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。
株式投資で得られる幸せは「自分自身の価値観」に委ねられる
株式投資は予習できるが人生は予習できない
突然ですが、わたしは人生の決定において「ひらめき」を大事にしています。ふと「これだ!」と感じてYouTubeを始めたり、なにかにインスピレーションを受けて絵を描いたりと、自分のなかから湧き出る「着想」や「独創性」を大切にしているのです。
しかし、「資産形成」に関しては、自分の直感に頼ることはありません。むしろ、自分のアイデアを過信せず、「多くの人をリサーチして得られた再現性の高い方法」や「実証された学術理論」といった先人の叡智を、貪欲に取り入れるようにしています。自分の感性を最大限に活かすために、土台となる資産運用はYouTubeや書籍で徹底的に予習し、納得できる再現性の高い方法論を採用する。これが、わたしのスタイルです。
ここで忘れてはいけないのは、「株式投資の方法論は予習・実践が可能だが、『株式投資を始めて変わっていく自分の人生』は予習できない」ということです。本などで得られる他人の人生観や経験は参考にはなりますが、人それぞれ環境や価値観が異なるため、完全にトレースすることは不可能です。
結局は、自分で自分のオリジナルの人生を歩み、たくさんの壁にぶつかるなかで初めて、他人の経験や本の知識がヒントとして活きるのだと思います。
節約生活による高い入金力と株式投資、自分の仕事から得られる収入で、わたしの資産は1,000万円、2,000万円、3,000万円、5,000万円…… と増えていきました。
しかし、資産が増えて「さぞかし幸せか」と問われると、正直なところ「どうなんだろう?」という心境だったのです。
そんな折に出会ったのが、米コンサルティング会社CEOのビル・パーキンス氏による著書『DIE WITH ZERO人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ダイヤモンド社)という本です。2020年に刊行され、世界的なベストセラーとなった本で、これまでにわたしが読んできた「お金の貯め方・つくり方」ではなく、「お金の使い切り方」に焦点をあてた教科書のような内容です。
資産をある程度形成し、その資産との向き合い方に悩むフェーズに入ったからこそ、この本にある言葉が強く心に響きました。
ここからは、わたしが経験した「お金と幸せの関係」についての疑問や悩みと、『DIE WITH ZERO』との出会いによって得た学びや心境の変化についてお伝えします。
資産があっても幸せには直結しない
「お金がたくさんあれば、きっと幸せになれるはずだ」
資産家の家に生まれて子どもの頃からお金に困ったことがないような人でもなければ、誰もが思い描くことではないでしょうか。
一方で、世の中の価値観は多様化していますから、「お金だけでは幸せになれない」という考え方も存在します。それでも、お金が不足していることであきらめていることや、やりたいことを実現できない現実があるのも事実です。結局のところ、「お金があればできること」を意識せずに生きることは難しいでしょう。
実際、わたしもそうでした。会社員時代は、給料の少なさや奨学金返済の重さにストレスを感じ、将来への不安を抱えていました。「お金の悩みから解放されたい」という思いが、節約生活と株式投資を始めるきっかけになったのです。
出身は関東郊外のごく普通の家庭で、大学院の授業料は奨学金を利用。ふたりにひとりは奨学金を使うといわれる時代ですから、平均的な家庭環境でした。
そんなお金の悩みを抱えた若者だったわたしが、節約と投資、そしてYouTuberとしての活動を積み重ね、運よく6,000万円という資産を築くことができました。
一般的には「これだけ資産があれば幸せになれるだろう」と思われる状況です。
「最高に幸せ!」「人生の成功を掴めた!」と有頂天になってもおかしくないかもしれませんが、実際の心境は違いました。
「確かに、お金だけでは幸せになれないのかもしれない……」
資産を手にしても、期待通りの幸福感には直結しないことを実感したのです。
資産を得て浮き彫りになった「自分の人間性への不安」
わたしは20代の頃、徹底した節約生活によって1,000万円の資産を築きました。
その後も節約を意識しつつ、株式投資を着実に続けてきました。
ここまで節約と投資に没頭できた原動力は、「お金への執着」です。スマホに家計簿アプリを入れ、節約するたびに資産が増えていくのを眺めることが、かつてのモチベーションだったのです。
そのモチベーションを自分で煽りながら、節約行動を完全にルーティン化。家賃を含む月の生活費を10万円にまで切り詰め、年間貯蓄300万円を達成しました。
会社を退職した現在も、大きな無駄遣いはせず、資産形成を継続しています。
しかし、それまでの節約と投資の生活のなかで、薄々抱えていた「自分の人間性への不安」が、徐々にごまかし切れなくなってきました。月10万円の生活は、一見「ストイック」ともいえますが、冷静に考えればやはり異常な面もあります。
例えば、わたしと同じ節約系YouTuberで、その分野における先輩でもあり、番組や講演で共演させていただく機会もある、くらまさんという方がいます。くらまさんは、わたしよりストイックな節約を長く続けているのですが、自分自身をよく「変態」と称されています。その「変態」という表現の真意は、「常識を逸脱している」という自覚かもしれません。
わたしの場合は、自分を「節約オタク」とやや柔らかく表現してきました。しかし、実際に節約生活を続けるうちに自分の人間性への不安が募っていったのです。節約をゲーム感覚で楽しめているうちはいいのですが、次第に人生の目的が「節約」そのものになり、自分の感情や欲望に蓋をして生きている感覚が強くなりました。そして、「わたし、こんな人生でいいのかな?」という迷いが生じていったのです。
例えば身近なところでは、外食やちょっとした買い物でも、「これは節約の妨げになる」「この出費は投資元本を減らす」といった損得勘定ばかりが先行してしまい、純粋に楽しむことができなくなりました。
お金を増やすことに意識が向き過ぎた結果、本来楽しむべき「体験」や「時間」といった非金銭的な価値が、無意識のうちに切り捨てられていたのです。
ようやく気づき始めた人生の本質
そうした漠然とした悩みのなかで出会ったのが、『DIE WITH ZERO』です。
その本の一節に、「金ではなく、健康と時間を重視すること。それが人生の満足度を上げるコツなのである」という言葉があります。
一見あたりまえのことですが、当時、お金を貯めることを優先し、生活の質を軽視していたわたしには、その言葉が強く刺さりました。
特に心に響いたのは、多くの人が抱える人生の後悔に関する一節です。
「最大の後悔は『勇気を出して、もっと自分に忠実に生きればよかった』であった。他人が望む人生ではなく、自分の心の赴くままに夢を追い求めればよかった」
これもまた、言葉だけを見れば単純ですが、自分が心でモヤモヤ抱えていた悩みにぴったり合致していたため、「やっぱりそうだよな」と背中を押される思いがしました。
節約や投資はあくまで手段であり、目的はその向こうにある人生の豊かさや幸福です。「幸せになりたい」と思って始めた節約や投資が、仮に60歳、70歳になって数億円の資産を築くことにつながっても、人生経験や喜びが少なく、好奇心も乏しい人間になってしまっては、真の幸せとはいえません。
この本を読んだことで、「後悔する将来像」が明確になりました。
いまは、「お金への執着」を手放し、「人生経験や喜びへの欲望」にシフトしていこうとしている最中です。ずっと行きたかった国への海外旅行をしたり、犬を飼ってみたり、「自分が本当にやりたかったことにはお金を使う」という“意識の解放”を進めています。
これに伴い、かつての極端な節約生活も少し見直しました。「真夏でもエアコンを使わず、少しだけ涼しいベッドの下で寝転ぶ」「3日連続で豆腐生活」…… のような、無理のある節約をやめることで、生活の質を上げ、心から楽しめる日常を取り戻しています。
「お金への執着の落とし穴」は、誰だってハマる可能性があります。
わたしのような節約マニアだけでなく、最近話題の「NISA貧乏」も同じような問題ではないでしょうか。将来のためにNISAで積み立て投資をしているが、そのせいで生活費が削られ、日常の満足度が下がっている状態を指す言葉です。将来の幸せのために始めた積み立て投資のせいで、いまの生活を犠牲にしてしまっては本末転倒です。
株式投資はうまくいけば大きな資産を得られますが、知らず知らずのうちに熱中し過ぎてしまうことがあります。ギャンブルのようなハイリスク・ハイリターンな投資をすればなおさらでしょう。お金をつぎ込んでしまうだけでなく、日中も相場ばかり見てしまい、仕事に支障をきたすという話もよく聞きます。
人間には欲があるため、単に「過熱してはダメ」と自分に言い聞かせるだけではなく、時折立ち止まり、自分の人間性や幸福が株式投資に振り回されていないかを考えてみることが大切だと思います。
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