本記事は、節約オタクふゆこ氏の著書『お金はこれで増やせます 失敗したくない人のための投資の教科書』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

お金はこれで増やせます 失敗したくない人のための投資の教科書
(画像=MdSona/stock.adobe.com)

十分な資産を手にする日に向けて「使うマインド」を育てていく

FIREを達成してもFIREできない理由

インデックス投資などの合理的な投資をコツコツ長期目線で続けていけば、20年先には大きな資産を手にしている可能性が高いといえます。そこで考えておきたいのが、「資産を築いたあとの心の持ち方」です。

長年にわたり資産形成に時間を費やし、3,000万円、5,000万円といった資産を築くことができた人のなかには、「インデックス投資で増やした資産を使いたいのに、なかなか使うことができない」という悩みを抱える人が少なくないそうです

これは、仕組みの問題ではなくメンタルの問題です。
20年、30年と「貯める・増やす」ことに全力を注いできた結果、いざ「取り崩す」段階になると、強い抵抗感が生まれてしまうのです。

FIRE(経済的自立と早期リタイア)を目指して資産形成をしてきた人のなかには、目標額を達成しても、実際にはFIREしないケースが多く見られます。「これまで積み上げてきた資産を減らしたくない」という心理的な執着が働くからです。
せっかく築いた資産を取り崩すことに不安を感じ、「現状を変えるより、不満があってもいまのまま働いているほうがいい」と考えてしまうのです。
また、「会社を辞めてみたものの、やることがなくなり再び働き始めた」という事例もよく聞きます。その背景には、単に「やりがいを失った」だけでなく、資産が減っていくことへの不安があるのでしょう。

それを裏づけるかのように、実際にFIREを実現している人の多くは、インデックス投資だけでなく高配当株投資も併用しています。
高配当株投資を通じて、「投資益を使う」という感覚に慣れてきた人や、インデックス分の資産を取り崩さなくても、「配当金だけである程度は生活できてしまう」という人が、FIREを実現しているようです。

ただし、「FIREできない」こと自体は、必ずしも悪いことではありません。
そもそも、本気でFIREを目指す人はごく一部ですし、FIREが幸福の絶対条件でもありません。むしろ、FIREを達成しても「思ったほど楽しくなかった」と感じたり、「働くことの意味」を見出し直したりする人も多いのです。
とはいえ、この「お金を使えない」心理が、老後資金づくりにも波及してしまうとすれば、それは多くの人にとって無視できない問題かもしれません。

わたしは本書を執筆している時点で32歳ですが、仮に65歳まで積み立て投資を続け、十分な資産を築いたにもかかわらず、結局は「節約すれば年金でも暮らせるし……」と質素な生活を選ぶとしたら││なんのために資産形成をしてきたのか、わからなくなってしまいます。
わたしに限らず、NISAで老後資金を形成した人のなかにも、「資産はあるのに、やっぱり使えない……」と悩む人がたくさん出てくるでしょう。

出口戦略としての「取り崩すトレーニング」

では、「資産はあるのに使えない」という状態を防ぐにはどうすればいいのでしょうか? そこで考えるべきは、お金の「出口戦略」です。

ここでいう出口戦略には、以下のふたつがあります。
① 「資産の取り崩し方」という実践的な戦略
② 「使うマインドを整える」という心理的な戦略

まず、①は「いつ、どのように資産を取り崩すか」を考えることです。
例えば、「65歳になったらインデックスファンドを一気に売却して現金化する」という計画を立てていたとします。しかし、そのタイミングで市場が下落局面にあった場合、基準価額が下がってしまい、思うように売却できないおそれがあります。これでは、せっかく積み立ててきた意味が半減してしまいます。
そこで有効なのが、タイミングを分散させる戦略です。例えば、50代で株高の局面を迎えたら、資産の一部を先に売却しておき、65歳の時点で相場が悪ければ、さらに5年でも10年でも待てるようにするなど、前もって「柔軟に動ける余地」をつくっておくことが大切なポイントです。
また、一括売却ではなく、長期的・継続的に分割して取り崩すことで相場のリスク分散を行うという手もあります。毎月定額で取り崩したり、5年ごとなど複数回に分けて取り崩したりしていくのです。

そして、最も難しいのが、②の「使うマインドを整える」戦略です。長期間にわたって「貯める」「増やす」ことだけに集中してきた投資家ほど、資産を「減らす」行為に強い心理的抵抗を覚えるからです。
この抵抗を乗り越えるためにも、ある年齢になったら少額ずつ売却していくなどして、消費に充てる「取り崩しトレーニング」をしていきましょう。
しかし、忘れてはならないのが人生の長さです。いまや「人生100年時代」といわれるほど寿命が延びました。仮に90歳まで生きるとすれば、65歳からの老後は25年間にも及びます。たとえ十分な資産を築いたと思っても、想定以上に長生きをすれば、資金が足りなくなる可能性も否定できません。
この長寿リスクに対応するためにも、資産全体を老後の一定期間で使い切る計画ではなく、老後資金の一部を持続的に株式投資で運用し続ける視点も必要です。そのようにして、心理的な安心感と資金の持続性を両立させましょう。

「出口戦略」としての資産取り崩し「4%ルール」

①と②の戦略をベースに出口をイメージしていくわけですが、資産の出口戦略の有名な理論に、「4%ルール」があります。
これは、米国のS&P500をベースとした理論なのですが、株式で保有する資産の期待リターンが7%あるのであれば、そこから年間のインフレ率を仮に3%として差し引くと、年間4%までの取り崩しなら資産を減らすことなく投資益を享受できるという考え方です。
例えば、資産が3,000万円あるのであれば、4%は年間120万円です。公的年金の受給があったうえで、年120万円の取り崩しが加われば生活することはできそうです。漠然と「65歳の時点で3,000万円を手に入れる」ではなく、その3,000万円を使ってどう生活するのかを、具体的にイメージしておくことが大切なのです。

この「4%ルール」は、過去の米国の市場データに基づいており、約30年間にわたって資産が尽きる確率が低いことが検証されています。しかし、このルールを日本の状況にあてはめる際には少し注意が必要かもしれません。
日本のこれからのインフレ率や年金制度の違い・市場のパフォーマンスの違い・投資先と生活に使う通貨の違い(為替の変動)を考慮し、「4%を少し下回る(例えば3.5%など)」で取り崩しを始めるなど、保守的に運用する視点も持つべきです。この調整が、先に述べた長寿リスクへの現実的な対応策ともなり得るでしょう。

ほかにも、「4%ルール」とは異なるものですが、資産形成の途中から少額ずつ取り崩すという手法も紹介しておきます。
例えば、楽天証券やSBI証券には、「定期売却サービス」があります。これは、積み立てているファンドから、定期的に一定割合または定額で売却して取り崩すというものです。高配当株投資で配当金をもらう仕組みをつくらなくても、インデックスファンドの投資益を一部分配する仕組みをつくろうと思えばつくれるということです。
資産形成に大きな影響のない範囲で毎月5,000円を出金するだけでも、「資産を使う」感覚を育てることができるのではないでしょうか。
この「定期売却サービス」を心理的トレーニングとして活用することは非常に有効だと思います。毎月決まった金額が口座に入金される実体験は、老後のキャッシュフローを予測することにつながり、「資産が減っていく不安」を「安定した所得(インカム)」という感覚に変える手助けになるからです。

そうした手法は様々にあるのですが、結局「やる」か「やらない」かは自分次第です。わたしの実体験からいえることは、「投資益を使うことへの不安は知識や計算では消えない。実際に投資益を使ってみて初めて『使っても大丈夫だ』と思える」ということです。
2023年時点でわたしの配当収益は年間10万円、資産額はインデックス投資分も含めて2,000万円を超えていました。それでも、その配当金を使うことに大きな抵抗感を感じていたのです。「これは慢心では? 配当金を好きに使ってしまったら、もう資産額が増えなくなってしまうのではないか? 全額再投資したほうがいいだろうか……」という不安です。
でも、思い切って旅行などの体験や、友人・家族へのプレゼントなど、「いいお金の使い方」で配当金を使うようにしたのです。
いまは配当金を使い切ることに抵抗はなくなりましたし、それでも資産額は増え続けています。

お金はこれで増やせます 失敗したくない人のための投資の教科書
節約オタクふゆこ(せつやくおたくふゆこ)
1993年2月14日生まれ、自らを「節約オタク」と称する節約・投資系YouTuber。理系の大学院修了後に開発職として電子系メーカーに就職したものの、将来のお金に対する不安を拭えなかったことがきっかけでお金について学ぶ。その後、奨学金477万円を返済しながら1カ月10万円で生活し、年間300万円を貯金、20代で資産1,000万円を達成。現在は脱サラしてフリーランス。2021年から運営しているYouTubeチャンネル「節約オタクふゆこ」は日常的な節約法のほか、投資についての動画も初心者・中級者向けに配信して人気を集め、チャンネル登録者数は65万人を超える(2026年1月時点)。著書に『貯金はこれでつくれます 本当にお金が増える46のコツ』(アスコム)がある。各種メディアへの出演や、セミナーへの登壇など講演活動も積極的に行っている。

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