要旨
- 4月下旬に米トランプ政権はイラン産原油禁輸の制裁に関して一部国・地域に認めていた適用除外の撤廃を発表、今月2日以降は同国産原油の全輸入が米制裁の対象となった。大きな変化を迎えた原油市場だが、この先どのような展開になるのだろうか。
- 今後の注目点として、原油供給面では、(1)米制裁を受けるイラン・ベネズエラの供給減少度合い、(2)大規模な武力衝突が発生しているリビアの供給減リスク、(3)(イラン・ベネズエラの供給減の埋め合わせとしての)OPECプラスによる増産の有無が注目される。需要面では、引き続き米中貿易摩擦の行方が最大の注目点になる。米政権は先日、対中関税の引き上げを表明した。もし、これが現実のものとなれば、世界経済の押し下げを通じて原油需要を減少させることになる。
- 原油価格の見通し(年内)を考えると、メインシナリオとしては、1バレル55ドルから60ドル台後半をレンジとするボックス圏での推移が予想される。今後、イランとベネズエラの原油供給は減少するものの、OPECと米国の増産で概ね穴埋めされることが見込まれる。米国の圧力を受けるサウジをはじめとするOPECはある程度増産せざるを得ないだろう。また、足元の原油価格は米シェールの採算レートを十分上回っているとみられ 、米国の原油生産量も緩やかに増加することが見込まれる。米政権発の貿易摩擦に関しては、激化すると米国自身に跳ね返ってくるだけに、いずれブレーキを踏まざるを得ない。結果として、需給バランスが大きく傾くことは避けられ、原油価格もボックス圏に留まると予想。ただし、各国の思惑が複雑に絡み合うだけに、上振れ・下振れリスクも高い。
- 原油価格がボックス圏での推移となれば、金融市場への影響も限られる。ただし、大きく動いた場合は金融市場全体の混乱の元になりかねない。原油価格が大きく上昇しても、逆に下落しても、日本株安・円高圧力に繋がる可能性が高い。