国内外の景気指標悪化と円高がリスク 2万1000円維持なら底堅さが意識され押し目買いを誘発
米中の貿易交渉は合意に至らず米国は中国からの輸入品2000億ドルに対する関税を引き上げた。ただ、交渉は決裂したわけではなく今後も継続するとしている一方、米国は制裁関税の対象を中国からの全輸入品に広げる第4弾の詳細を13日に公表する。日経新聞の記事によれば、米通商代表部(USTR)で9~10日に開かれた閣僚級協議で、中国の劉鶴副首相は「閣僚級での合意は難しい。トランプ大統領と習近平国家主席の首脳同士で決着してほしい」と述べたという。そうだとすれば、次の焦点は6月に大阪で開催されるG20サミットだ。米中の首脳が出席する場だ。主催国である日本がうまく橋渡し役を演じることができれば良い。
2000億ドルの関税引き上げとなったことで、米中の貿易問題は、目先いったんは市場の注目点から外れる。決算発表は、今週は金融など残っているが概ねヤマ場は過ぎた。変わって市場の目は景気動向に向かうだろう。
国内では13日に景気動向指数、14日に景気ウオッチャー調査、15日に工作機械受注の速報値と重要な景気指標の発表が相次ぐ。3月の鉱工業生産が弱かったことで3月の景気動向指数の一致CIも低下するだろう。そうなれば景気の基調判断は「悪化」に下方修正される公算が大きい。「すでに景気後退入りか」などとの声が高まり、無論、バッドニュースだが、過去の数字であること、先行きの生産が持ち直す見込みであることから過度に相場を冷やすことはないだろう。
海外では15日に米国と中国で4月の小売売上高や鉱工業生産の発表がある。米国の小売売上高は前月に大幅に伸びた反動減が予想され、中国の鉱工業生産も伸び一服が見込まれている。5月のニューヨーク連銀製造業景況指数やフィラデルフィア連銀製造業景況指数も振るわなそうだ。
一連の景気指標の悪化、金利の低下、FEDへの利下げ期待の高まりなどから円高に振れることが日本株のリスクである。
日経平均の予想レンジは2万1000~2万1500円とする。2万1000円を割らずに踏みとどまれば底堅さが意識され押し目買いを誘うだろう。
広木 隆(ひろき・たかし)マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒業。国内銀行系投資顧問。外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強み。2010年より現職。著書『9割の負け組から脱出する投資の思考法』『ストラテジストにさよならを』『勝てるROE投資術』
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