保有している投資信託を換金する場合は「解約」を行う。投資信託は、いつでも好きな時に解約できるのだろうか。また、解約を考えるケースにはどのようなものがあるのだろうか。投資信託の解約手続きや、さまざまな解約のケースを紹介していこう。

投資信託の中には解約できないものもある

投資信託,解約
(画像=Zadorozhnyi Viktor/Shutterstock.com)

投資信託は、原則的にいつでも解約して換金できる。ただし、なかには一定期間解約できない投資信託もある。この期間を「クローズド期間」という。

クローズド期間は投資信託説明書(目論見書)に記載されているため、投資信託の購入前に確認しておきたい。クローズド期間が設けられる理由は、投資信託は短期間で多くの解約があると資産運用に支障が出る場合があるからだ。

なかには、全期間がクローズド期間の投資信託もある。この投資信託は、購入してから償還されるまで原則として解約できない。償還とは、投資信託の運用期間終了後、資産を精算して投資家へ返金することだ。

投資信託の解約と買取の違いとは何か?

投資信託には、「解約」に似たものとして「買取」がある。この2つの違いは何か。

解約は、投資信託の資産の一部を取り崩して換金してもらう方法であり、買取は保有している投資信託を投資信託の会社に買い取ってもらうことで換金する方法だ。

つまり、解約と買取は換金の方法が異なるが、投資家にとっては特に違いはない。投資信託を換金する場合は解約が一般的なので、ここでは投資信託を換金することを「解約」と表す。

投資信託の解約手続きと入金までの日数

投資信託を解約する際は、申し込みが必要だ。解約の申し込みが受理された日または翌営業日の基準価額で換金額が計算される。その日を約定日という。入金は、約定日から3営業日以降に行われる。

海外の株式などに投資する投資信託の場合は、入金までの日数が長くなることがあるため、投資信託説明書を確認しておきたい。

投資信託を解約する場合には様々なケースがある

投資信託の解約は、どのようなケースで行うべきなのだろうか。「基準価額の上昇」「基準価額の減少」「純資産残高が減り続けている」「資産配分の変化」「資産配分の見直し」を理由に解約するのが一般的だ。これら5つのケースを紹介しよう。

基準価額が上昇したので解約して利益確定する

投資信託の運用成績が良ければ、基準価額が上昇する。基準価額がある程度上昇したら、利益を確定するために解約するのも手だ。

利益確定の判断基準は、さまざまだ。例えば、基準価額が2倍になったら半分売ることで投資金額を回収し、残りの半分で投資を継続することもできる。

基準価額が減少したので解約して損切りする

投資信託の運用成績が悪ければ、基準価額が減少する。基準価額が減り続けている場合、その投資信託を保有し続けると損失がさらに大きくなる可能性がある。この場合、その時点での損失を受け入れて解約することで損切りする方法がある。

損切りの判断基準もさまざまだ。これ以上下がったら解約するという「損切りの値幅」を決め、それを下回ったら解約するのも一つだろう。買値から10%下落したら解約するなど、具体的な数値を予め決めておく投資家は多い。

純資産残高が減り続けているので解約する

投資信託の純資産残高が減少し続けている場合は、注意が必要だ。投資家の多くがその投資信託を解約しているか、分配金の払いすぎにより資産が減っていることが考えられる。

純資産残高が減少すると投資効率が悪くなり、運用成績が下がることがある。純資産残高が減り続けている場合は、解約を検討したほうがいいだろう。

資産配分が変化したので解約や購入によってリスクを調整する

投資信託を買うときは資産配分(アセットアロケーション)を考え、それに合う投資信託を組み合わせてポートフォリオを組み、購入するのが一般的だ。資産配分とは、日本や海外の株や債券などの資産の組み合わせのことだ。

投資信託を買ってしばらくすると、投資信託の基準価額の変動により資産配分が変わり、投資リスクが変化することがある。そのような場合、投資信託の解約や購入などで資産配分を変え、リスクを調整することができる。

例えば、資産配分として株式:債券=100:100で投資信託のポートフォリオを組んだとする。その後株式の投資信託の基準価額が上昇して、株式:債券=120:100になった。株式のほうが債券よりもリスクが高いため、当初計画した資産配分よりもリスクが高い状態になっている。その時は、当初の資産配分100:100に戻るように株式の一部を解約し、債券を追加購入すればいい。

解約や購入により投資信託の資産配分を見直す

収入の変化などにより、投資信託の資産配分を見直すことがある。例えば、昇給によりそれまでよりリスクが高い資産配分に変更したり、退職や独立によって収入が不安定になったら、リスクの小さい資産配分に変更したりする場合だ。

この場合もリスク調整と同じように、投資信託の解約と購入によって資産配分の見直しを行う。

投資信託に信託財産保留額があると解約による換金額から費用が引かれる

投資信託の中には、解約に係る費用である「信託財産保留額」が決められている商品がある。

信託財産保留額とは投資信託を途中で解約する際にかかる費用で、基準価額に対して何%という形で解約した代金から差し引かれるものだ。投資信託の解約が発生すると、投資信託の資産の一部を売却する費用がかかる。信託財産留保額は、その費用を投資家に負担してもらうためのものだ。

投資信託の解約で税金はかかるのか?

投資信託を解約した際に、利益には所得税15.315%と住民税5%の合計20.315%の税金がかかる。

例えば、100万円で購入した投資信託を解約して150万円を得たとする。利益は50万円なので、その20.315%にあたる10万1,575円を納めることになる。

なおNISAなどの非課税制度を利用すれば、投資信託の利益は非課税になる。

余計なコスト負担を避けるため、投資信託の解約は計画的に

投資信託の購入や解約には購入時手数料や信託財産保留額などの手数料がかかるため、頻繁な解約や購入はできるだけ避けたいところだ。できるだけコスト負担を軽くするため、投資信託の解約は計画的に行いたい。

文・松本雄一(ビジネス・金融アドバイザー)/MONEY TIMES

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