ITが普及していない時代における賃貸住宅探しといえば、仲介会社をコツコツと回って希望に合いそうな物件を紹介してもらい、何件も物件を見学したうえで契約先を決めたものです。しかし、最近の賃貸住宅契約者はインターネットで情報を収集しており、仲介会社の役割も大きく変化しています。

物件をインターネットで探す人が増えている

IT,不動産会社
(画像=belozu/Shutterstock.com)

賃貸住宅に入居している人たちは、その物件の情報収集をどこで行っているのでしょうか。2019年3月に国土交通省が発表した『平成30年度住宅市場動向調査』によると、2018年度の物件に関する情報収集方法は「不動産業者で」が49.7%のトップでした。次いで、「インターネットで」が39.4%、「知人等の紹介で」は13.0%と、以下に大きく水を空けています。2014年の調査でもこの順位は同じでした。

しかし、「不動産業者で」は52.4%で、「インターネットで」は29.9%でした。両者には22.5ポイントの差があったのが、10.4ポイントに縮小しています。年々両者の差は小さくなっていて、パソコンだけではなく、スマホでの情報提供が主流になりつつあることを考えれば、近いうちに関係が逆転することになるのではないでしょうか。

不動産会社訪問件数は10年間で2.7社から1.6社に

実際、賃貸住宅を探し、契約するために不動産会社の店舗を訪問する人が急速に減少しています。リクルート住まいカンパニーの『2017年度賃貸契約者動向調査(首都圏)』によると、2017年度に首都圏で賃貸住宅の契約を行った人が訪れた不動産会社は平均1.6社でした。10年前の2007年は2.7社でしたから、訪問社数が1社以上も減っていることが分かるでしょう。

これはライフステージによっても大きく異なります。2017年度の比較的若い世代が中心のひとり暮らし世帯では平均1.4社で、なかでも学生だけでみると1.3社です。反対に2人暮らし世帯では2社、3人以上のファミリー世帯では1.6社となっています。ファミリーや夫婦のみ世帯では2社近くを訪問していますが、若い単身者だと1社の訪問だけで決めてしまう人が少なくないと推測できるでしょう。

物件見学数も4.8物件から2.9物件に減少

不動産会社に紹介してもらって見学する物件数も減少しています。上述したリクルート住まいカンパニーの調査では、2017年度の平均は2.9物件でした。2007年度は4.6物件でしたから見学数は2物件近く減っています。最近では、不動産会社を訪問しなくても物件を見学できるようになっています。IoT技術の発展によって、スマホで不動産会社に登録、スマホ上で物件を探し、気になる物件があれればスマホで見学日時を指定して、自由に見学できる仕組みが広がりつつあります。

指定の日時に現地に出向き、賃貸マンションのエントランスでスマホをかざすとドアが開き、見学したい住戸の玄関ドアもやはりスマホで解錠できるようになっている物件もあります。

インターネット活用度が物件選びの指標にも

IoTを利用した内覧の仕組みがあれば、平日の遅い時間や土日や祝日などにも自由に物件の見学ができるようになります。顧客側からすれば、いつでも自由に見学できるうえ、営業担当者を気にすることなく気軽に見学することが可能です。また、不動産会社側も営業担当者を張り付けておく必要がなく、労働時間の短縮に貢献し、経費の削減にもつながります。

しかも、賃貸住宅に関してはネット上で重要事項説明が可能になっていて、不動産会社を訪問しなくても契約できる「IT重説」の仕組みが2017年10月から運用されています。特に、若い世代ではこうした仕組みを活用して効率的に住まい探しを行うケースが増加傾向です。そのため、「インターネット上の情報を充実させ、効率的な仕組みを作り上げているかどうか」で賃貸物件のテナント確保に影響が出てくるといえるでしょう。

不動産投資用物件を探すうえでは、その会社のインターネットへの取り組み姿勢の確認も重要なポイントになってきそうです。(提供:YANUSY

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