(本記事は、横山光昭氏の著書『となりの家のざんねんなお金の話』=あさ出版、2019年4月28日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
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「保険の無料相談」に踊らされ乗り換え貧乏
保険を3年おきに6回も乗り換える?
最近、街角やショッピングセンターなどで、「保険の見直し」といった看板を掲げている店をよく見かけます。
しかも、相談料無料をうたっている店がほとんどです。
いわゆる「保険ショップ」と呼ばれる店舗なのですが、無料で加入している保険が適切か診断してくれるだけでなく、あなたにぴったりな保険のアドバイスまでしてくれるなんて、思わず「なんて素晴らしいサービスなんだ」と思ってしまいますよね。
しかし、そんな甘い話が世の中にあるでしょうか。「見直し」「無料」などという言葉に踊らされて利用し、後悔している人が後を絶たないようです。
中村さん(37歳/女性)の場合……
「もう、誰に相談していいのかわかりません」
家計相談に訪れ、打ちひしがれた表情でそんなふうに語るのは、会社員の中村さん。「少しでもいい保険に入りたい」と思って保険ショップを訪れては、3年おきのペースで、これまで6回にわたって保険を乗り換えてきたといいます。
保険ショップの店員は、家族状況や家計状況に基づいて、支払いが可能かどうかについてシミュレーションしてくれたり、希望を聞きながら必要な保障を教えてくれたりと、懇切丁寧に相談に乗ってくれたようです。
そのうえで、自分に最適だという保険を勧めてくれ、中村さんは「安心でお得な保険に加入できた」と満足感を得ていました。
ところがその後、本や雑誌などで保険の記事を目にする度に「もっと自分に適したものがあるのではないか」と悩み、その悩みを解消するためにショップに行っては勧められた保険を契約する……。
そんなことを繰り返してきたようなのです。そうして中村さんは、何度も保険を乗り換えた結果、なんと200万円近く損をしていたのです。
タダより恐いものはない
実は、保険という商品は、途中解約してしまうと大きな損失が生じます。なかでも、「貯蓄型」の保険は損失が大きくなります。
なかにはドルをはじめとする外貨建ての商品もあり、為替変動も加わって数十万円、いや数百万円といった損失になるケースもあるのです。
中村さんの場合がまさにそうでした。
「貯蓄代わりになる」と勧められた「貯蓄型」の保険を解約。これがドル建てだったため損失は大きく、何度も繰り返し乗り換えたこともあって最終的には200万円近くも損をしてしまいました。
ここまでの損失は極端だとしても、保険の乗り換えを繰り返して損失が膨らんだケースは少なくありません。
どうしてそんなことになるかといえば、「無料」という言葉に踊らされ、保険ショップを過度に信用してしまっているからなのです。
確かに相談に関しては「無料」です。
しかし、タダほど恐いものはありません。保険ショップは無料の相談をきっかけとして、その会社が売りたい商品を紹介し、売りつけてくる、そう考えてもらったほうがいいでしょう。
少し冷静になって考えてみてください。「無料」でサービスを提供するようなビジネスが成り立つでしょうか。無料の裏に〝もうけ〟があるからこそ、あえて入り口を無料にしているわけです。
そういう意味では、アドバイスを信じて何度も保険を変えてくれる人は、ショップにとってまさに〝鴨が葱を背負ってくる〟存在。
だって、ショップには乗り換える度に手数料が入ってくるのですから、これほどおいしい話はないと思いませんか?
私からいわせれば、親身になって相談に乗るフリをしながら保険を勧めるなんて、詐欺に近いものだと思っています。
アドバイスをうのみにしないためにすべきこと
一方で、有料だからといってもその中身は玉石混淆で、しっかりと見極めなければ、これまた騙される可能性があります。
では、騙されないようにするためにはどうすべきなのか。アドバイスを受けるのはいいのですが、それを「うのみにしないこと」に尽きます。
アドバイスを受けた後に、改めて情報を集めたり、専門家にセカンドオピニオンを求めたりして、自分の基準や価値観に基づいてよし悪しを判断することです。
そのためには、今の自分にとって本当に必要なものは何なのか、しっかりと考えておく必要があるでしょう。
「無料」を前面に打ちだして顧客を引きつけるビジネスは、保険に限った話ではありません。くれぐれもお気をつけください。
【ココがざんねん】
タダの気軽さと親身な対応にコロッと騙される人がなんと多いことか!
保険の見直しは、自分にとって何が最適かを吟味する「時間と機会」を作って挑みましょう。
「保険で貯蓄」のつもりがまったく貯まらず!
年収700万円なのに貯蓄できず手を出した保険
もう少し詳しく「貯蓄型」の保険について見ていきましょう。貯蓄型の保険を利用している人に加入理由を聞いてみると、例えば、「保険を使えば、万が一にも備えられますし、蓄えにもなります」
「生命保険料控除が使えるので、税金が安くなりますよ」
などと保険の販売員に勧誘されたり、「満期まで積み立てると100%以上になりますよ」「外貨建てでは積立利率は3%最低保証しますよ」
といった魅力的な言葉をかけられたりして、加入しているようです。
こうしたセールストークは、自分でお金を貯めることが苦手な人の心に刺さります。なぜなら「万が一の時に備えられるのに加えて、貯蓄までできるなんて」と思ってしまうからです。
しかし、なぜ貯蓄をするのにわざわざ保険を使う必要があるのでしょうか。そして、保険で十分な貯蓄ができるのでしょうか。
山村さん(35歳/男性)の場合……
「貯蓄がほとんどできないんです」
独身会社員の山村さんは、年収が700万円を超えているのに、そう悩んでいました。
そんな折、生命保険の販売員から「保険なら自動的に貯められますからお勧めですよ」といわれ、それなら自分にもできるかもと思って契約しました。
金額は毎月5万円。収入から生活費を除き、なんとか捻出できる金額でした。
ところがです。ある日のこと、田舎の母親から「お父さんが倒れた」という連絡が入り、「入院費などを少し助けてほしい」と頼まれてしまいます。
しかし、生活費などを除いてすべて保険につぎ込んでいますし、解約してしまうと払い込んだ保険料よりかなり少ない解約返戻金しか返ってきません。
「損は嫌だ」と思った山村さんは、「クレジットカードのキャッシングか、消費者金融から借りるほかないのか」と悩んでしまいました。
貯蓄型保険はリスクがたくさん
貯蓄型の保険で失敗した人の話を聞くと、保険の具体的な中身を知らずに契約してしまうケースが大半です。
「保険で貯まる」という販売員の言葉をうのみにし、貯蓄できているつもりになっていたのですが、解約時期によって解約返戻金が支払った額より少なくなってしまうことに加え、インフレリスクや為替リスクといった、さまざまなリスクがあることを理解していない人が多いのです。
そもそも貯蓄型の保険は、資金効率や流動性の面からいっても、あまりいいとはいえません。
にもかかわらず、山村さんのように、「貯蓄もできるし、万が一にも備えることができて一石二鳥だ」と考えて、加入する人が後を絶ちません。
そうした人は、あまり物事を深く考えず、いいと思えば飛びついてしまう〝癖〟があります。それより先にやることがあるはずなのにです。
ではどうすればいいのか。
まず、保険による貯蓄を考えるよりも前に、自分の収支状況を振り返り、むだ遣いを削って余剰金を増やすことが重要です。
それなりの余裕がある資金が手元にあれば話は別ですが、そうでなければ、まずは家計を改善すべきということです。
山村さんの場合、年収が700万円を超えているわけですから、きちんと支出をコントロールすればそれなりの余裕資金だって貯められたはず。なのに、その努力を怠っていたことが間違いなのです。
このような状況では、急な入り用の際に困ってしまったり、必要のない借金をしなければならなくなったりしてしまいます。
しかも、こうしたお金の使い方は習慣でもありますから、将来の教育資金や、老後の生活費などのことを考えると、早い段階で改めておいたほうがいいでしょう。
また、保険による保障は必要なものだけとして、貯蓄と保障は切り離して考えるということも必要です。
貯蓄は積み立て貯蓄を利用して作ってもいいですが、積み立て型の投資信託などで貯蓄を作るという手もあります。
そうすれば、山田さんのように引き出せないからといってキャッシングに走ることもなく、必要なときにお金を使いつつ貯めていくことができます。
【ココがざんねん】
「万が一のときに備えられるのに加えて、貯蓄までできるなんて」というより、「貯蓄があれば万が一のときに備えられます」と考えるべき。貯蓄があれば保険は必要ありません!
横山光昭
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の問題の抜本的解決、確実な再生をめざし、これまで15,000 人以上の家計を再生した。個別の相談・指導で家計の再生と飛躍を実現する活動は業界でも異端児的活動で、各種メディアへの執筆・講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000 円投資生活』(アスコム)や『年収200 万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は累計300 万部となる。お金の悩みが相談できる店舗を展開するmirai talk株式会社の取締役共同代表を務めるなど、個人のお金の悩みを解決したいと奔走するファイナンシャルプランナー。
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